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Interview – 松浦匡希[Official髭男dism]
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Kazuki Watanabe
メンバーがカッコいいと思った曲を共有してくれる
それがジャンル問わずなので、そこでインプットしているのかもしれない
昨年リリースしたアルバム『Traveler』が大ヒットを記録し、年末にはNHK紅白歌合戦への出演を果たすなど、“国民的バンド”への階段を駆け上がったOfficial髭男dism。その勢いは2020年も加速し続け、2月に発売された「I LOVE…」もスマッシュ・ヒットし、MVは8500万を超える再生回数を記録。COVID-19の影響でアリーナ・ツアーは延期となってしまったが、精力的に制作活動を続け、本日8月5日に4曲入りの『HELLO EP』をリリースした。この絶好のタイミングで、バンドの屋台骨を担うドラムの松浦匡希のインタビューが実現。現在のドラムに対する考え方を語ってもらった。
レコーディングによって
自分の演奏の幅も開拓して
もらえるのはうれしい
●こういうタイミングなので、お聞きしてみたかったのですが、STAY HOME期間はドラムに触っていましたか?
松浦 練習できる場所を借りて、生ドラムを叩けるようにはしましたね。コロナの影響で自宅待機になって1ヵ月くらい経った頃から、こんなに長い間ドラムが叩けないのはちょっとヤバいなと思うようになって(笑)。今住んでいるところは、電ドラもそんなに叩けないので、生ドラムが叩ける作業場を借りることにしました。最近になって、ようやくバンド・メンバー揃って音を出せるようになったんですけど、ドラムが叩ける場所を借りておいて良かったなと思いましたね。ちょっとは鈍っていましたけど、そこまでという感じではなかったので。家にスタジオを持っている方もいらっしゃいますけど、めちゃ羨ましいです(笑)。
●松浦さんはずっとドラムを触っていたいタイプですか?
松浦 どちらかというとそうですね。ある程度触っていないと感覚がわからなくなっちゃうので、少なくとも週に数回は触っておきたいなと思いますね。
●普段はどういう練習をされているんですか?
松浦 クリックに合わせて叩くこともありますけど、既存曲のステムをもらってドラムだけを抜いて合わせたり……コロナの間は、今回の新曲の練習もやってましたね。
●新作の『HELLO EP』は4曲入りのEPですが、バラエティに富んでいて、あらためてバンドの持つ音楽性の広さを感じました。
松浦 確かにそうですよね。ジャンルに捉われないでやっているとは思います。
●普段からいろんな音楽を意識して聴くようにしているんですか?
松浦 意識はしていないんですけど、メンバーがカッコいいと思った曲を共有してくれるんですよ。それがジャンル問わずなので、そこでインプットしているのかもしれないです。
●”インプットする”という感覚なんですね。
松浦 そうですね。
●今回の収録曲はどれもテンポ感が絶妙だと思ったのですが、テンポはいろいろ試すんですか?
松浦 BPMはレコーディングの最初に試しますね。1下げ/1上げみたいなことはよくやります。
●「HELLO」はBPM=127だったのですが、1上げ/下げして決めたんだろうなと思いました。
松浦 絶妙なBPMですよね(笑)。「HELLO」は行き過ぎない感じで、タフなリズムが欲しいっていう話になって、メンバーと話し合ってこういうBPMになったと思います。
●「HELLO」はリズムがシャッフルなので、BPMが1違うだけでも、グルーヴに影響が出ますよね?
松浦 そうなんですよ(笑)。デモはヴォーカルの(藤原)聡が打ち込みで作ってくるんですけど、(打ち込みのリズムは)ビタビタじゃないですか? それで覚えて、レコーディング当日にテンポが変わると、最初はハシるか、めちゃ後ろになるんですよね(笑)。「HELLO」はシャッフルだったので余計に大変でした。
●デモの段階でリズムはシャッフルだったんですね?
松浦 そうですね。デモ自体は上京前……山陰にいる頃に「良い曲ができたんだよ」って聴かせてくれたもので、最初はもうちょっとおとなしめだったんですよ。それもあって「今やるのはもったいないよね?」っていう話になっていた曲なんです。バンド的に力がついて、演奏力が上がったらやろうって。でもドラム的には難しかったですね。ロック調でこういう規模感のサウンドは今までやったことがなかったので、楽器録りの中で、一番時間を使っちゃいましたけど、でも楽しかったです。
●松浦さんが思うドラム的なポイントはどこでしょうか?
松浦 ポイントは……Bメロとかのフィルとギターのかけ合いみたいなところですかね。“ツクツジャーッ ジャーッ”っていうのに対して“ツクツダーンッ ツクツダーンッ”みたいな、ああいうところの漢気感みたいなところに注目してほしいです(笑)。自分がそんなに通ってきてないドラミングではあるんですけど、レコーディングによって自分の演奏の幅も開拓してもらえるのはすごくうれしいです。
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