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【Interview】ジョン・セオドアが語るクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ加入で変化した”ドラム観”

  • Photo:Kazumichi Kokei(Live)
  • Translation:Tommy Morley
  • Interview:Shinichi Takeuchi/Text:Rhythm & Drums Magazine

マジックっていうのは
マイクでは拾えないところに潜んでいて
古いツェッペリンのレコードのようなもの

●新作では5本のマイクだけでドラムを録音されたそうですね。

ジョン 1つも漏らさず録っておきたいと考えて、当初は自分達が持っているマイクをすべて使っていたんだ。でもみんなで一緒にプレイし始めたら、曲が持つキャラクターを反映したものだったり、俺達がライヴでプレイしているようなサウンドにしたいと早い段階で考えるようになった。さっきも話した通り俺達はブルータルなサウンドを求め、数本のマイクだけを使うことにしたんだ。

その瞬間に耳にしたことにインスパイアされると、どれだけ優れたマイクを何本使ってどんなテクニックで録っているかなんてどうでもよくなるんだ。効果音みたいなものを録音するために何本かさらにマイクを使ったこともあったけど、全体的に5本のマイクだけでドラムを録音して、かなりナチュラルなサウンドに仕上げているんだ。クリックを使わずに数本のマイクだけで全部テープに録音しているから、かなりオールド・スクールだと言えるだろうね。

コンピューターを使ったレコーディングの話に戻るけど、選択肢がたくさんあるからといって必ずしもそれが優れているとは限らないんだ。ドラムのすべてに上下からマイクを立てたところで、サウンドに潜むマジックみたいなものがなくなってしまうことだってある。正確でパーフェクトなものになるかもしれない一方で、とても退屈なものになってしまうこともあって、少しズーム・アウトさせてピンボケさせた途端にすべてをギュッとまとめ上げてくれたりする。俺はちょっとずつプレイして切り貼りするみたいなやり方が好きじゃなくて、1つのものとして通してプレイしているんだ。

俺は長年ステージ上でイヤモニを使ってきたけど、すべてをクロース・マイクで拾った状態で聴くのが嫌になってしまったんだ。それでイヤモニから従来のフロア・モニターに戻し、完全にアナログなスタイルに戻ったんだ。そうするとまた“マジック”が感じられるようになったんだけど、ここでいう“マジック”は、ニュアンスとは違うってことをぜひ言わせてもらいたい。マジックっていうのはマイクでは拾えないところに潜んでいて、例えるなら古いツェッペリンのレコードのようなものだ。バス・ドラムが常に聴こえているわけじゃないけど、しっかりとそこに存在していることが感じられるはずだ。

これは俺の今までやってきたやり方だったり、過ごしてきた音楽的体験に起因するのかもしれないけど、今回のアルバムを作って、それをライヴをプレイする上で少しズーム・アウトして横道に逸れてみたんだ。ニュアンスや自分達が作り出す化学反応やヴァイブを追い求めたんだ。

俺は信念こそが完璧なものよりも重要だと思っていて、ドラム・マガジンに載るようなドラマーはみんな、俺の倍以上の速さでプレイだってできる凄まじいドラマーばかりで、俺には理解できないような手と足のコンビネーションだって繰り広げることができるだろう。でも俺はその瞬間に立ち会ってダイナミックにプレイし、ユニークでニュアンスのあるものを叩く方法を探すことができる。それが俺自身とバンドを表現していくわけで、そもそも音楽ってそういうものだろう? 俺にとってドラミングは誰が最も速く叩けるかなんていうコンテストじゃないし、印象に残る何かを与えたりニュアンスを生み出すためのものなんだ。

日本らしさを誇らしく思い
自身のドラミングに取り入れて欲しい
それが君を特別にさせてくれるはず

●「バンドが求めていることを提供することが重要だ」と以前のインタビューで語っているのを拝見しました。クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジではどのようなことがあなたに求められているのでしょうか?
ジョン
 それはグッドな質問だ! まずはヘヴィであることが求められていて、それでいて砂漠に捨て去られ、回路がショートしてしまったロボットのようなサウンドが必要なんだ。他にもバラードやスペイシーなものもプレイできるデリケートさも重要だ。そして何よりもまず、ディーヴォやロボットみたいなソリッドな感じも必要だね。

でもこうやって長年やってきて今になって思うのは、そういったことを逐一考えなくてよくなったってこと。今の自分に必要なのは自分らしくいて、何かリアルなものを伝えることなんだ。自分の周りにあるサウンドを取り入れ、曲に自分なりの解釈を与えるんだ。かつては自分が何を与えられるかを考えていたけど、もうそういうことは考えなくなった。今はもう本物らしさだけが求められていると思うね。細かくいってしまえばスタミナ、ソリッドさ、正確さってことになるのだろうね。

そしてあまり多くの人達が気づいていないのが、このバンドはダンス・ミュージックをプレイするバンドということで、キャブ・キャロウェイみたいなナイトクラブの音楽なんだ。俺達の音楽は無意識に聴いていると荒野で流れていそうなロックだけど、注意深く聴くとかなりプログレッシヴなものなんだ。特にドラムはアレンジや切り替えがかなり複雑で、単なるデカイだけのものとスマートで緻密に作った音楽の紙一重のところにいる。言うなればただラウドなのとダイナミックであるのは意味が違うだろう? これってかなり日本と似ているような気がするんだ。

この国は歩けばかなりモダンで映画『ブレード・ランナー』のような近未来的な社会だけど、古代の時代から存在していて、山や大地があって雪に閉ざされた地域もあれば海や魚にも恵まれている。さまざまなスタイルが共存している興味深い国だ。俺達が日本にやってきて音楽をプレイできているのは恐らくそういったところに共通しているものがあるからなんだろう。

テクニカルで近未来的だけど、クラシックなものに根づいている。古いテープ・マシンやマイクといったオールド・スクールな道具を使いながらも未来のアートを作っていて、日本にやってきて君達の顔を見るとホームにやってきたような気分にさえなるんだ。

●最後に日本のドラマーにメッセージをお願いします。
ジョン
 まずは君達に最大の敬意を表したい。日本のドラマーは最高のクリエイティヴさと正確さを持ってプレイしてきた。この国で触れるものの多くに芸術表現のレベルの高さを感じるのは、その正確さと明瞭さによるものだと思う。アプローチの中にたくさんの愛も感じられるよ。

芸術をそこまで高いレベルに持っていってくれたことに感謝したいし、日本の文化の中には日本にしかないものがある。何か1つのことをやるにしても全身全霊をかけてトライしていて、それを深く理解してそのエッセンスを体得して高めていくという一連の美しいサイクルがある。だからその日本らしさを誇らしく思い、自身のドラミングの中に取り入れてみて欲しいんだ。それがいつしか君自身を特別なものにさせてくれるはずだからさ。

Queens of the Stone Age→HP