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UKロックの代表格=カサビアンのイアン・マシューズが最新作、ルーツ、そしてBritish Drum Co.について語り尽くす!【Interview】
- Interview:Satoshi Kishida
- Translation:Atsushi Shimizu(ELECTORI CO.LTD.)
- Special Thanks:ELECTORI CO.LTD./British Drum Co
コールド・プレス工法がポイント
木が持つサウンドを失うことなく
シェルを生成するので
本来鳴るべきサウンドがしっかり鳴る
細かい造形が美しいところもBDCの特徴の1つ
●あなたは、ブリティッシュ・ドラム・カンパニー(BDC)の創設時からのメンバーということですが、プロ・ドラマーがメーカーの経営に携わるのはめずらしいことだと思います。あらためて経営に参加するようになった経緯を教えてください。
イアン 2014年に開催された“Scottish Drum Fair”で、BDCの代表者、キース(キーオ)に会ったんだ。同じホテルに泊まっていたんだよ。彼はそのときはまだプレミアで働いていて、バーで朝の6時まで飲み明かして、友達になったんだよね。それから彼がプレミアを離れてBDCを設立したときに連絡が来て、要請を受けてキースと一緒に働くことにしたんだ。とにかく初めてドラム会社と一緒に仕事できることに、非常にワクワクしたことを覚えているね。
●この会社であなたが担う仕事や役割はどういったところでしょうか?
イアン 最初は5名でスタートとして、一緒にデザインやロゴなんかを考えたんだ。その間にニコ・マクブレインもアーティストとして入ってきた。僕はブリストルに住んでいて、マンチェスターとはだいぶ距離もあるので、毎日仕事をするわけにはいかなくなったんだけどまだ、stock share(株式)は持ってる。僕自身はBig SoftyとMerlinの開発に大きく関わったよ。Big Softyは僕が名前をつけたので、ぜひチェックして欲しいね。
●イギリスの伝統的なドラム・メーカーとしてプレミアがあり、また、あなたは以前、DWのドラムを使っていましたね。そうした先行の優れたメーカーと比較して、BDCが独自性を発揮するポイントは、どういった点だと思いますか?
イアン コールド・プレス・モールディング工法が一番の差別化ポイントかな。木が持つ本来のサウンドを失うことなくシェルを生成していくので、本来鳴るべきサウンドがしっかり鳴る。また職人の技術も相当レベルが高い。細かい造形が美しいところもBDCの特徴の1つだね。
昔のプレミアもハンド・メイドで高域がすごくヌケるサウンドだったと思うけど、BDCのシェルはそれ以上にしっかりと振動して、音ヌケが良いと思うね。
●現在、あなたが使っているドラム・セットについて、詳しく教えてください。
イアン Legendシリーズのキットで、タムが13”×9”で、フロア・タムは16”×16”と18”×16”。そしてバス・ドラムは24”×16”というキットだ。自分が持っている24”のバス・ドラムのサウンドは、どのブランドのドラムより音ヌケがするし、タムはドラム・ソロをする際にとても気持ち良く鳴ってくれる。Legend自体は10プライで、北欧産のバーチを互い違いに重ねているんだ。
スネアは自分が開発に大きく携わったMerlin の14”×6.5”。Merlinはバーチとメイプルを互い違いに重ねて20プライもあるんだけど、非常に薄く加工しているので重くはない。サウンドはそれこそ、バーチとメイプルの両方の持つ良い特性を持っている、本当に素晴らしいスネアだね。とにかく今までで一番クオリティが高いドラムと思っている
シンバルはジルジャン、ハードウェアは今のところDWの9000シリーズ。BDCでCASINOハードウェアが発売されたら、それを使う予定だね。スティックはヴィック・ファース、あとはローランドのSPD-SXをセカンド・スネアとしても使っているかな。
●ご自身のセットを組むに当たって、特別に開発したことや、注文を出した点などはありますか?
イアン 特に自分用に特別にというわけではなく、誰が使っても良い音が鳴るという点で開発にも関わっていたので、すべてが特別と言っても良いかと思う。
●あなたが最高だと思うアコースティック・ドラムのサウンドは、どういったものでしょうか?
イアン ドラムはもちろんヘッドも重要だけど、シェルがしっかりしないとそもそものサウンドが出ないよね。コールドプレス工法によるハンド・メイド・シェルはとても振動に反応しやすくなっていて、演奏の細かいニュアンスがとても伝わりやすい。
(最高だと思うのは)幅広いダイナミック・レンジがあり、チューニング次第でどんな音楽ジャンルにも対応でき、音ヌケがしっかりとするドラムだけど、BDCのLegendキットはそれを具現化しているといえる。
もう1つのマホガニーとバーチのハイブリッドでもあるLoungeキットは、マホガニーの暖かみのある音色も加わっていて、とても良いキットだと思う。どちらも共に、チューニング次第でジャズからメタルまでの音楽ジャンルに対応しているので、どんなドラマーにも気に入ってもらえると確信しているんだ。そういう点では、すでに理想のドラム・キットだと考えている。
●今後、あなたがこの会社でやっていきたいこと、実現したい製品などはありますか?
イアン 現時点では具体的なアイディアはないけど、近いうちにBDCの本社に行ってミーティングをしてくる予定なんだ。そこで何か具体的なものが動きだすかもね。
●最後にカサビアンでの活動やあなた個人の今後の活動の予定など、わかっている範囲で、教えてください。
イアン カサビアンはクリスマスまでお休みで、来年にはワールド・ツアーの計画がある感じかな。日本にも単独で戻って来られると良いね。2019年にスタジアム・ツアーを計画して、それが全部2020年にキャンセルになったので、また、それを実現できるかな。そしてBDCとしても業界がさらに発展していくように願っているよ。
あとはインタビューの冒頭でも触れたけど、“amplify.link”というウェブ・プロジェクトを立ち上げて、多くのミュージシャンの手助けになるようなプラットフォームを作ったので、これをさらに発展させていきたいと考えているんだ。