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    LiSAちゃんのレコーディングでは
    シンプルだけど、存在感をデカくするように
    とにかく本気で“叩き切る”

    ●現在の比田井さんのセッション活動は、歌にフィーチャーした楽曲で叩かれることも多いかと思いますが、“歌とドラム”の関係とはどういうものだと思いますか?

    比田井 それぞれ、身体と直接的に関係するものなので、(ドラムは)歌にとって一番近い存在だと思います。だからこそ、相関関係がそこで成り立っているというか。僕、ジェフ・ポーカロがすごく好きで、バス・ドラムやハイハットの感じを随所で変えていたり、たぶん彼はほぼ無意識でやっていることだとは思うんですけど、ああいうちょっとした変化を僕も大事にしたいと思っていて。歌詞にも時系列があったり、メロディや歌い方、心情も曲中で変わってくるじゃないですか。それに対して、ドラムはずっと同じことをやっているんじゃなくて、ちょっとずつアプローチを変えていかないと、辻褄が合わないと思うんです。ちなみに、うち犬飼っているんですけど、名前がジェフっていうんですよ。

    ●ジェフ・ポーカロ愛が飼い犬の名前にまで(笑)。

    比田井 はい(笑)。やっぱり彼のちょっとしたフレーズの変化……シンプルなんですけど、単調ではないプレイというのを、自分自身も大事にしたいですね。歌や楽曲全体を引き立てる役割になれたらと思いながら日々叩いています。

    New Single「結証」
    緑黄色社会
    2021年2月3日 Release

    ●サポートを務める緑黄色社会の最新曲「結証」でも、歌の展開にマッチしたドラミングやキメの作り方も印象的でした。

    比田井 この曲はデモの段階からだいぶ完成されていたので、アレンジャーの大野(裕一)さんが作ってくれたフレーズがきめ細かく作り込まれているというのもあると思うんですけど、ブレスのタイミングや、歌のノリに一緒にユニゾンしたくなるというのもあるかもしれないです。

    ●一方、セッション活動では、LiSAを筆頭にさまざまに活躍されていますが、最新シングル「dawn」では、上モノがデジタル・サウンドに対して、そのコントラストを生み出したアプローチが秀逸でした。レコーディングでは、どういうことを意識されましたか?

    比田井 デジタルに合う楽器選びというのは試行錯誤して、現場で考えていったのはもちろんなんですけど、この曲は演奏では、とにかく思いっきり叩きましたね(笑)。ディレクターの江口さんが、彼自身もドラムの機材をたくさん持っていらっしゃるほどとにかくドラムが好きで、“叩き切る”スタイルが好きなので、そういう部分はLiSAちゃんのレコーディングで大事にしていますね。この曲は、サビのパターンとかも本当にシンプルな8ビートなんですけど、とにかく存在感をデカくするように、本気で叩いて。力を強くするわけではなくて、それこそ“気迫”のこもった演奏を心がけました。

    New Single「dawn」
    LiSA
    2021年1月13日 Release

    ●LiSAのメガ・ヒット曲「紅蓮華」でも叩かれていますが……。

    比田井 LiSAちゃんの曲はもう何度も参加させてもらっていて、“このチームでならカッコ良くなるだろう”っていう感じで、安心して任せられる部分が多いですね。

    ●今では街のいたる所で聴かれる楽曲となりますよね。

    比田井 あまり“自分の叩いた曲”っていう意識はなくて……それこそ自分が恵まれてきた運もそうですけど、アーティストや作品自体、チーム全体の功績があってこそなんですよね。僕らは裏方なので、アーティストありきで、参加させていただける作品があると思うんです。すべて参加させていただいている作品、カッコ良いなと思って聴いているんですけど、自分の手柄ではまったくなくて、エンジニア、アレンジャー、ドラムテックの方々含め全員で作っている作品、音なんだなっていうのは思います。出来上がったものを聴いて“こんな音になるのかぁ”と驚かされることの方が多いですし、恐縮していますね。

    ●それでも、比田井さんのプレイから滲み出たエモーショナルが楽曲に反映されていると感じます。

    比田井 もちろん演奏しているときは、すごい本気でやっていますよ! 気持ちを込めて演奏はしていますけど、それがあれだけカッコ良くなっちゃうのは、チーム・プレイの功績でしかないと思っていますね。

    ●ちなみに、バンドのサポートとセッション・ワークとで、それぞれ叩きわけされたりはしているのでしょうか?

    比田井 バンドとアーティストで変えているっていうことはないかもしれないです。けっこう気持ちとかプレイ・スタイルは実はそんなに変わっていないんですけど、楽器を選ぶのがけっこう好きで、“今日は何着ていこう”みたいな感じで、その曲とアーティストに対して楽器は選ぶ時間が1日くらいかかるときもあります。それで、演奏に向かうときに、楽器が違うので気持ちも変わるっていうのはあるかもしれないです