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    Interview−ジョジョ・メイヤー②

    • Interview:Akira Sakamoto
    • Photo:Taichi Nishimaki

    2021年1月号のチャーリー・ワッツ追悼特集で、その演奏技術について独自の分析を語ってくれた世界最高峰のテクニシャン、ジョジョ・メイヤー。取材時にコロナ禍における自身の活動について質問したところ、面白い話が聞けたので、ドラマガWebに独占掲載!  

    僕がコンピューターのタイム・クロックに合わせるんじゃなく
    コンピューターが僕の演奏に追随するんだ

    ブライアン・イーノと一緒にAIを使って
    音楽を自動生成するプロジェクトと取り組んでいた

    ●あなたの近況や最近取り組んでいるプロジェクトについてもうかがいたいと思います。最近のSNSに投稿したスタジオでの録音作業の様子は、あなたが2017年と19年に音楽を提供したドキュメンタリー映画『Lunar Tribute』のサウンドトラックを録音したときのものと似ていますが、音楽のコンセプトとしてはその延長線上にあるものなんでしょうか?
    ジョジョ そういうわけでもないんだ。パンデミックが起こるまで、僕はブライアン・イーノと一緒に、AIを使って音楽を自動生成するプロジェクトと取り組んでいた。残念ながらコロナのせいでプロジェクトは延期になってしまったけれど、AIを利用した音楽作りについての勉強は個人的に続けていて、そのための新しいツールを利用してAIとの共演を試している。コンピューターと即興演奏するというソロ・プロジェクトなんだ。

    ●そのAIは市販のソフトウェアではなく、ブライアン・イーノとのプロジェクトのために特別に開発されたものなんですか?
    ジョジョ 市販のソフトウェアだよ。AbletonのMax For Liveを使っている。Maxはプログラミング言語の一種なんだけれど、ここ3年ぐらいで大きく進化していて、10年ぐらい前には不可能だったことができるようになったんだ。入力に対してカオス的だったり、ランダムだったり、確率的だったりする反応を出力するというもので、エレクトロニカの人達はその入力にコンピューター・プログラムのタイム・クロックを使っているけれど、僕は自分のドラム演奏から生成されたクロックを入力している。つまり、僕がコンピューターのクロックに合わせるんじゃなく、コンピューターが僕の演奏に追随する。

    ●面白そうですね。
    ジョジョ AIが僕のテンポを感知するから、僕がテンポを遅くしたり速くしたりすると、コンピューターがそれに合わせてくれる、つまり、コンピューターが僕の演奏に応じて音楽を生成するわけで、あらかじめ作られたバッキング・トラックに合わせて演奏するのとはまったく違うんだ。演奏するたびにまったく違う音楽が生成されるからね。AIと共演するのは、未来に向かって一歩踏み出す感じだよ。ブライアン・イーノとの共同プロジェクトも、早く再開したいと思っている。とても興味深いプロジェクトだし、彼から多くのことを学べるしね。何と言っても彼は、これまでにいろいろなことを成し遂げて来た人で、その人から誘いを受けて光栄に思うよ。

    ●ブライアン・イーノの方から誘いがあったんですか?
    ジョジョ それが、面白い話でね。ある日僕は、BBCがブライアン・イーノにインタビューしたテレビ番組を観ていた。今から3、4年ぐらい前に収録された番組で、「今はどんな人からインスピレーションを得ているのか?」という質問に、「ウーン、たくさんいるけれど、ジェームス・ブレイクとか、ドラマーのジョジョ・メイヤーとか……」と答えていて、僕はそれを聞いて「ええっ!?」となった(笑)。それで、ブライアンとよく一緒に仕事をしている友達に、「ブライアン・イーノに僕の連絡先を教えてくれてもいいよ」ってメールを出したんだ。そうしたら、彼はそれをブライアンに伝えてくれたみたいで、ブライアン本人から「やあ、僕はここ何年もの間、自分のプロジェクトのためのインスピレーションを君からたくさんもらっているんだ」というメールが来た。僕がドラム・マシンのような演奏を追及してきたということでね。

    ●なるほど。
    ジョジョ で、彼はAIベースのソフトウェアを使って、コンピューターに僕みたいな演奏をさせるプロジェクトと取り組んでいるって言うじゃないか。

    ●うわぁ……。
    ジョジョ つまり、僕はマシンの真似をしようとしていて、ブライアンはマシンの真似をしている人間の演奏をコンピューターのプログラムで真似しようとしていたわけさ(笑)。

    ●話がループしてますね(笑)。
    ジョジョ そうなんだ。で、彼は僕の演奏を真似た“偽ジョジョ”のプログラムのサンプルを送ってくれたから、僕は逆に、自分のドラムでそれを真似た演奏を送った。すると、彼から「ロンドンにおいでよ」っていう連絡が来て、共同プロジェクトが始まったというわけ。具体的にどんなことをやるのかはわからなかったけれど、一緒にいろんな実験をするうちに面白いものが出来上がって、そのデータを保存して2、3ヵ月後にまた一緒に作業を続けようという話になったところで、パンデミックで旅行ができなくなっちゃった。バンドでのツアーもままならない状況だったけれど、ここ1年半ぐらい、個人的にそのプロジェクトを続けたり、サウンドトラックを作ったり、いくつかのプロデュースを手がけたりしたおかげで、Maxのプログラミングについてもかなり勉強できたよ。

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