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【Analysis】歌とガッド……参加作品から探る“ドラムの神様”の名演
- Score&Text:Yusuke Nagano
4月9日はスティーヴ・ガッドの誕生日。今なお世界最高峰に君臨し、あらゆる演奏家に影響を与え続ける、まさにドラム・ゴッド! “ドラムの神様”の誕生日を記念して、ここでは”歌モノ”におけるガッドの名演をセレクト! 魅惑のドラミングにぜひ耳を傾けてみてほしい!!
「Everything That Touches You」
Bonnie Raitt
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若きガッド特有の鋭さを含んだ幅広い表現力に注目
ブルース・ギタリストであり、シンガーでもあるボニー・レイットの74年の作品。16ビートのバラード系のこの曲では、ガッドのドラマティックで幅広い表現力が光る。Ex-1aはサビからCメロに入る箇所。打ち伸ばし後にシンバル系で、“間”を紡ぎ、タムへのフィルに流れていく展開はしなやかで美しい。また1bは、Cメロからギター・ソロに入る箇所。バス・ドラムの連打でグイグイと音圧を上げていくが、そのツブ立ちとキレ味の良さには、若きガッド特有の鋭さが含まれていて、抜群のインパクトがある。
「Aja」
Steely Dan
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ギター&ピアノに呼応する浮遊感あるシンバル・ワーク
ガッドの名演として最も有名な曲の1つ。中盤のサックスとの応酬や後半のドラム・ソロは伝説的に語り継がれている。ここで解説するのはイントロからAメロに入る部分(Ex-2)。まずイントロは浮遊感あるギターとピアノに呼応するようにシンバル類で装飾。そして6小節目からAメロに入るのであるが、浮遊感の名残りを残しつつ、しっかりと力強いパルスを内に秘めたパターンは、なかなか真似できるものではない。さり気ないが足で踏むハイハットの鋭いキレも見逃せない。
「LOVE, I NEVER HAD IT SO GOOD」
Quincy Jones
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異なる2つのビートの根底に流れるガッド印の脈動
ルーサー・ヴァンドロスとパディ・オースティンをフィーチャーした楽曲で、タイトな16ビートと浮遊感のあるビートが交錯するのが印象的。Ex-3はその冒頭部分で、前半の16ビートのイントロ・パートはハイハットのアクセントや32分を巧みに絡めて力強くビートをプッシュ。軽いキメのあとのAメロは、ライド4分打ちを基本とした、広がりのあるビートにガラリと世界を変える。ボリュームは繊細になるが、根底には共通の太くて重心の低い脈動が揺らぎなく流れているのが素晴らしい。
「Chuck E’s in Love」
Rickie Lee Jones
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歌と抑揚をシンクロさせたガッドの芸術的プレイ
気だるい雰囲気のリッキーのヴォーカルと見事に抑揚をシンクロさせた、ガッドの芸術的プレイが聴ける曲。Ex-4aはイントロ部分。4分刻みのハーフタイム・シャッフルだが、隙間に微妙に足で踏むハイハットが聴こえる。ウラでリズムを取る動きが漏れた感じであるが、これが絶妙な隠し味となっている。4小節目にガッド印の16分フレーズを挟み込むセンスも秀逸。ちなみに曲中の打ち伸ばし後も同様のフィルを叩いているが(4b)、派手すぎることもなく、存在感を発揮している。