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    【Archive Interview】主宰者シシド・カフカが語るel tempo(エルテンポ)創設

    みんなが今まで通ってきたバックグラウンドと
    まったく関係ないところでのハンドサインに対して
    自分の持っているものをいかに
    表現できるかっていうところに集中しているから
    面白いことが起こっている

    ●あとel tempoの特徴として挙げられるのは、ベーシストがいることですよね。
    ○サンティアゴの学校で、クラスのみんなが参加したライヴがあったんですけど、そのときにベースがいたんですよ。それを最初聴いたとき、“これはキャッチーで良いな”と思ったんです。打楽器だけのアンサンブルよりも入り口/扉が開けやすくなると思って、ベーシスト(ケイタイモ)をお誘いしました。

    ●そうして一昨年(2018年)10月の初ライヴ(寺田倉庫公演)につながっていくわけですね。
    ○アルゼンチンに留学していたのがその年の4〜6月だったので、準備期間は帰国して4ヵ月くらいでした。

    ●el tempoのメンバーですが、サンティアゴは、最初に芳垣安洋さんや岡部洋一さんを推薦されたそうですね。
    ○彼はもともと、自分のサイン・システムを使ったグループを世界主要国に派生させたいと考えていたみたいで、東京も大きな都市だからその視野に入れていて、私がel tempo立ち上げの話をしたときに“彼ら(芳垣と岡部)はマストだ”と言っていたんです。それでサンティアゴが私とお二人をつないでくれたんですよ。私はパーカッショニストの知り合いが少なかったので、芳垣さんと岡部さんにいろいろご紹介いただいて……。

    ●el tempoのメンバーにバンドのドラマーがいたり実力派パーカッショニストがいたりと、絶妙なバランスで成り立っていたのがわかりました。しかも個性がちゃんとあって……。
    ○そうですね。打点だけのアンサンブルで、こういったサイン・システムで何かやろうと思うと、私達ドラマーが持っているロックのツールとパーカッショニストさん達が持っているラテンのツールとのバランスはものすごく大切ですね。ライヴを重ねるほどそう思います。メンバーの比率もいつも考えるんですよ。

    ●先日の横浜公演で茂木さんが「el tempoのメンバーは年齢やキャリア、立ち位置はみんなそれぞれ違うけど、いろいろな世代が本当に良い温度感でつながり合ってる」とお話しされていて、その感じはすごく伝わってきました。ステージにとても良い空気が流れているみたいで、それはやっぱり、中心にいるシシドさんもすごく感じられているのかなと。
    ○やっぱりみんなが今まで通ってきたバックグラウンドとまったく関係ないところでのハンドサインっていうものに対して、自分の持っているものをいかに表現できるかっていうところに集中しているから、面白いことが起こっているんじゃないかなと感じています。

    ●いわゆるロック・バンドのライヴとはまったく違いますよね。
    ○決まった道を歩んでいけないというか(笑)。そこは苦しいところでもあるし、面白いところでもあると思います。

    ●みなさんに感想を聞くと「こんなに緊張するライヴはない」と……。
    ○(笑)。私が急に何を思いついて何をしでかすかわからないですからね。

    ●楽器のチョイスは、アルゼンチンで学んできたものとほぼ一緒な感じなんですか? 低い音から高い音の楽器までまんべんなく使われていますよね。
    ○低音域から高音域までが一応揃うようにはしています。アルゼンチンとはドラム・セットの“3点”やタムが入っていたりっていうのが違うポイントですね。やっぱりドラマーが多いのでスティックを使う楽器が増えてきているのもあります。

    ●ちなみにシシドさんは、ラテン・パーカッションの経験やエッセンス的なものって……。
    ○まったくと言っていいほどないですね(笑)。私はアルゼンチンでドラムを始めているので、最初にラテンのリズムをやったから感じる人は感じる……くらいの影響の受け方で。ラテン特有の訛りとかは、el tempoリハーサルの合間に芳垣さんや岡部さんを捕まえてずっと聞いてますね。勉強中です。

    ※この記事はドラム・マガジン2020年5月号に掲載されたインタビューを再掲載したものです。

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