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【R.I.P.】Archive Interview−メルヴィン・パーカー
- Interview:Shinobu Tanno/Norio Watanabe
ファンクとは“何をプレイするか”ではなく
“何をプレイしないか”ということなんだ
●ファンクとはずばり何なのでしょう?
メルヴィン 僕にとってファンクとは、シンセサイザーやドラム・マシンといった電子楽器を使用していない音楽のことだ。ファンクはベース、ギター、ドラムを基本に、シンセサイザー以外のキーボードをかぶせたもの。またリズム・セクションのシンコペーションがファンクを決定づける要素で、さらにホーン・セクションのラインもファンクを特徴づけるものだ。
●ファンク、R&B、ブルース、ジャズの関連性について、どのように考えていますか?
メルヴィン 僕自身もなぜそういったジャンルに分化していったのかわからないけど、ファンクとジャズとブルースは、フィーリングという点ではお互いに関連し合っているということは確かだ。ブルースの根底には人々の愁いがあるんだけど、音そのものはすごく美しいものになるから、最終的にはその愁いは大した問題じゃなくなるんだよ。ブルースという音楽が持つ表現力が、テーマとなっている苦しみを軽減しているんだ。
●ファンク・ドラミングを特徴づけている要素とは?
メルヴィン 長年の経験がなければ身につかないものであるという点でユニークだと思う。要するに何をプレイするかということではなく、何をプレイしないかということなんだ。ほとんどのドラマーはプレイしすぎて、ファンクが損なわれてしまっている。やりすぎはファンクの邪魔になるだけだよ。必要なところだけプレイし、そしてほんのちょっとだけ個性を加えるのさ。それが何なのか、他人に説明することはできないんだ。各個人で見つけていくしかないんだ。僕の場合、たまたまそれに出くわしたという感じで、これは人に教えられるものでもないんだよ。経験を通じて学び取らなければならないフィーリングなんだ。
ドラマーがこのフィーリングを身につけるには、特別な感覚を持ち合わせたミュージシャンと一緒にプレイしなければならない。これは理論化されたものではないから、長年の経験と集中力によって身につけていくしかないんだよ。
●その他に注意点はありますか?
メルヴィン タイム・キープやベースと合わせることが基本になるんだけど、僕自身はどの曲もそれにふさわしいアプローチがあると考えているんだ。できることを全部音に出すドラマーもいるけど、それだったらドラマーがリーダーになるべきだし、ドラム中心の曲作りをするべきだ。僕はその曲に必要なものだけプレイするようにしているし、バンド全体にとってもその方がうまくいく。その曲にふさわしいグルーヴを叩き出しながら、基本から逸脱しないことだ。
●R&Bのバック・ビート中心のリズムが、よりファンク的なリズムになったのはいつ頃のことでしょうか?
メルヴィン ジェームス・ブラウンとプレイしたもう1人のドラマー、クレイトン・フィリヤー(Clayton Fillyau)が始めたものだと思う。僕が高校生の頃、彼を初めて見たとき、家に帰ってできるようになるまで、ひたすら練習したのを覚えているよ。このスネアを2、4拍から少しズラしたリズムをクレイトンや僕、クライド(スタブルフィールド)、ネイト・ジョーンズが発展させていったんだ。62年頃、ナット・ケンドリックはハイハットのオープン/クローズを使用したリズムを叩き始めたんだけど、そのもとになったシンコペーションはクレイトンによるものだったんだ。やがて僕とクライドがもう一段階発展させて仕上げたんだ。
●ルーディメンタルなテクニックが応用されていますか?
メルヴィン いや、ルーディメンツはほとんど何にでも当てはまるけど、このグルーヴだけは例外だ。おそらく楽譜にちゃんと書くこともできるんだろうけど、僕は書けない。