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    【Archive Interview】カリーム・リギンス

    • Photo : Cherry Chill Will
    • Interview:Rhythm & Drums Magazine/Translation:Yuko Yamaoka

    偉大なグルーヴ・マスター達を聴くことはとても重要
    その一方でマシンで作られたヒップホップのビートを聴いて
    インスパイアされたりするのもいいんじゃないかな

    ●12年に発表された初となるソロ・アルバム『Alone Together』は、短いトラック34曲で構成されているのが1つの特徴ですが、これは同じくStone Throwレーベルから発表されたJ・ディラの『Donuts』へのオマージュなんでしょうか?
    カリーム そういうわけじゃないんだ。もちろん僕自身『Donuts』から影響は受けているし、とてもインスパイアされているよ。でもStone Throwレーベルからリリースしたのもそれが理由じゃないよ。ただピーナッツ・バター・ウルフ(註:DJでStone Throwレーベルのオーナー)に僕を紹介してくれたのは確かにディラだったけどね。

    ●アルバムはあなたのヒップホップ・サイドをフィーチャーした内容ですが、ところどころにジャズのフィーリングを感じるところに、あなたの個性が表れているようにも感じましたよ。
    カリーム ありがとう。僕の中にはいろんな側面があるんだ。そしてリスナーにはそれを聴いて欲しかった。ヒップホップ主導のサウンドで今回はアルバムを作ったわけだけど、ストレートなジャズ・アルバムもリリースしたいと思っている。実はもう完成済みなんだ! リリース待ちの状態だね。

    ●『Alone Together』は収録されているリズム・トラックがバラエティに富んでいて、どれもクールですね! クレジットを見るとほとんどの曲をMPCで作っているようですが、サンプリングの音源には何を使ったんですか? 
    カリーム レコードからサンプリングした部分もあれば、自分でドラムをプレイした部分もあるよ。『Alone Together』で僕は、それらをミックスさせたガンボ料理を作りたかったのさ。つまりいろんな素材、あらゆる要素を一緒に調理したいってこと。

    ●いわゆるマシン・ビートとは異なる、揺れを感じるのですが、サンプリング・パッドを素手で演奏してトラックを作っているんでしょうか? 
    カリーム その通りだよ。マシンのビートもすべて僕の手を通っているんだ。これだと思えるシーケンスを手探りしながら作っているよ。マシンで作ったビートに生ドラムを使ったライヴ・ドラムをオーバーダブしたり、違う楽器を重ねたりもしたよ。

    ●アフリカやブラジルのニュアンスを感じさせる民族系のリズム・トラックが特に印象的だったのですが、そういうリズムのアイディアはどこから生まれるのでしょうか? 
    カリーム 僕はブラジル音楽が大好きでレコードをたくさん聴いてきたからね。ブラジル音楽にインスパイアされ続けているから自然とその影響がリズムに表れてくるんだと思う。アフリカ音楽に関しても同じだよ。特にアフロ・ビートの影響は顕著だと思う。僕が手がける音楽のすべてにアフリカ音楽の影響はあると思うし、意識的にそれを作品の中に取り入れたいと思っているんだ。

    ●「Harpsichord Session」など3曲でグレッチ・ドラムとクレジットされていますが、なぜこれらを生ドラムでプレイしようと思ったんですか? 
    カリーム 僕がやりたいと思うこと、僕が必要だと思うことすべてをサンプラーで、できるかというと、当然不可能なこともある。それを解決する良い方法の1つが、僕が実際にプレイするっていうことなんだ。でもそれって結構効果的なんだよ。生ドラムの完璧じゃない感じが面白いんだよね。そういう要素もこのレコードには含めてみたいと思ったんだ。プログラム・オンリーにするよりもね。

    ●ラストの「J Dilla The Greatest」も生ドラムによるプレイですが、J・ディラへ捧げたこの曲は、どんな気持ちを込めてプレイしたんですか? 
    カリーム ディラはエルヴィン・ジョーンズからものすごい影響を受けたと僕は思っている。彼はエルヴィン・ジョーンズの音楽が大好きだったからね。だからこの曲ではエルヴィン・ジョーンズのリズムを取り入れようと思ったよ。そんな感じでディラが愛した音楽のあらゆる要素のフュージョンみたいにしたかったんだ。

    ●あなたのような本物のグルーヴ・メイカーになるために、最も大切なことは何だと思いますか? 
    カリーム 偉大なグルーヴ・マスター達を聴くことはとても重要だと思う。バーナード・パーディのようなストレートなドラマーや、フィリー・ジョー・ジョーンズ、アート・ブレイキーのようなドラマー、スティーヴ・フェローンやロイ・ヘインズらのように強力なパルス、強烈なビートを持つプレイヤーを聴くことは大切だよ。その一方でマシンで作られたヒップホップのビートを聴いて、インスパイアされたり、そういうレコードを聴いてリズムを覚えてみたりするのもいいんじゃないかな。