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    Archive Interview 茂木欣一[フィッシュマンズ]⑤ 〜1997年8月号〜

    フィッシュマンズを名乗る努力

    ●サウンド的には全体的にダブ的要素が濃くなったような印象を受けたんですが。

    茂木 どうなんでしょうね。僕自身はもう麻痺しちゃっててね。リバーブもダブも表現の一部というか。全部自然。やっぱりね、大事なのは素材、最初の演奏。素材が良ければ何でもできるっていうことは今回もすごく感じたことだし、悪い演奏を編集でどうしたところで、やっぱり悪いものは悪い。そのときにいいノリを出してないと、やっばりダメなんだって非常に思いますね。

    ●そのためにプレイ面で意識していることは?

    茂木 シンプルで強いもの、それはこのバンドにおいてはずーっと貫いていくべきもの。……フレーズはね、僕は最初、わりと作りすぎようとして手数が多くなって、そこでまず「全然良くない」って言われるんですよ。で、そのあと極端に減らすと「何それ?」って(笑)。僕の場合、その2つが元になってるかな。

    ●ただパターン構成は練られたものである感じがするんですよ。1つのパターンで作っていくワン・グルーヴの高揚というだけでなく、パターンを組み合わせることによって、さらに大きなグルーヴを作りあげているというか。

    茂木 そうですね。ずっと回ってる感じっていうのが、フィッシュマンズの音全体に作用していることだと思うから。それは昔から大事にしていることだと思うから。今回はさらに発展させてるかな。僕達のレコーディングでは生ドラムとMIDIドラム、そして打ち込みっていう方法があるわけだけど……やっぱり生でやるときは、あまり準備しすぎない方がいいような気もするんですよ。準備しすぎると、変な自己満足みたいなところで終わる可能性もあるし、無心なところでやってる方がいいですよね。でもMIDIドラムのときはパーツごとの細かさがデータとして如実に出るぶん準備は必要だし、多少計画していった方がいいっていうか。MIDIドラムでやる曲なんかは家のMacであらかじめパターンを組んで準備してくることもあるから、そういった部分は練っているとも言えますね。

    ●今回は1曲の中でも生ドラムとMIDIドラムを併用してますよね。生ドラムだけで演奏した曲は?

    茂木 「WALKING IN THE RHYTHM」と「DAY DREAM」の2曲。ラディックのバスドラにスネア、ハイハットに、20″のライドを1枚!

    ●「MAGIC LOVE」は生ドラムじゃないんですか?

    茂木 ハットだけ生で、あとは全部自分のラディックの音をサンブリングしたものなんですよ。「POKKA POKKA」、「うしろ姿」、「バックビートにのっかって」は全部MIDIドラム。ライヴではローランドのMIDIドラムだけど、レコーディングではヤマハのTMXを使ってます。

    ●「WEATHER REPORT」はリズム・パターンが凝ったものになっていますが、これは?

    茂木 打ち込みとMIDIドラムですね。打ち込みのデータには、僕だけじゃなくて、ZAKが叩いたデータも入ってるんですよ。それをぐっちゃぐちゃに混ぜて、“面白い! こんなことになっちゃった!”って感じかな。僕、人に叩かせるの大好きなんです(笑)。あとは「IN THE FLIGHT」ですけど、これは佐藤君のデモ・テープに入っていた音をそのまま使っているので、僕は参加していません(笑)。

    ●ドラムのサウンドもリズム・アレンジも、作品を重ねるごとに多彩になっていますね。

    茂木 今回は楽しかった。でも、それもみんなで決めてることだから……バンドっていいよね~、ホント。まず楽曲ありきなんだけど、やっぱりバンドであるからこそ、ここまで楽曲が輝いたんだよって言いたいですね、僕は。ドラムに関して言えば、やっぱりトータルで聴いてどうかっていう部分を大事にしたい。やみくもな技術じゃなくてさ、やっぱりセンス。フィッシュマンズを名乗っているからには、そのセンスというものを出すために努力はすべきだと思うんですよ。単にテクニカルであるんじゃなくて、バンド全体に作用するセンスを身につけて、それを演奏できるようにしたいよね。

    ●そのために、今はMIDIドラムや打ち込みを併用しているというわけですね。

    茂木 レコーディングはまさにその通りだよね。僕らが今やっているようなことには絶対必要なものだし。生ドラムは録音する前のセッティングがすべてで、あとはいい演奏をするだけ……そういう身の置き方も死ぬほど好き。最初はキース・ムーン命とか言ってたやつが、今はMIDIドラムでやってるって考えるとふと笑っちゃったりすることもあるけど、MIDIドラムで徹底的に細かーいチェックするのも重要なことだし、生で勝負する自分も大好き。性格的には生ドラム・タイプだと思うんだけど、僕のいいところは、どっちも好きっていうところなんだと思う。やっぱり柔軟な方がいいよ。柔軟である部分と“ここは意地でも”っていう部分と両方大事、それは間違いない。

    ●これからさらにやってみたいことはありますか?

    茂木 歌うのが大好きで曲も作ってるので、ソロ・アルバム。嘘です(笑)。ドラマーとして、いろんなレコーディングに参加させてもらいたいですね。最近はヒックスヴィルとか、SMAPのレコーディングにも参加したし。何にでも取り組みたいし、今はいろんなことに夢中になってるって感じ……これはきっと充実してる状態なんですね(笑)。

    ●では最後になりますが、DM読者に向けて新作のお勧めポイントを。

    茂木 うーん、何だろうねぇ。このアルバム最高!としか言えないんだけど(笑)。僕はここでフィッシュマンズにとって絶対必要なドラミングをしているはずで、必要だと思って取り組んだ結果がここにある。だからこそ、このアルパムを聴いた人が“自分がやってるバンドや音楽にとってこれがいい!と思うものを選択すればいいんだ”っていう気分になってくれたらいいな。こういうやり方があるんだね、じゃあ俺はこうやろうかなって。プロであろうとアマチュアであろうと、音楽に夢中に取り組める気分になってくれたら最高だよね。

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