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    Archive Interview −クライド・スタブルフィールド−

    俺が考えているのは“ワン”だけ
    その後はアドリブだよ
    “ワン”がすべてを支配するのがJBの音楽なんだ

    ●ドラムを叩いているとき、どうやってグルーヴを出していくことが多いですか?

    クライド グルーヴはハイハットとべース・ドラム、スネアの3つで作っていくんだ。俺にはハイ・タムみたいなものは必要ない。調味料みたいなものだからね。あくまでもこの3つが一緒になってグルーヴを決めているんだ。

    ●演奏中に心の中でリズムを歌うときには、ゴースト・ノートも含めて歌っている?

    クライド そうだよ。テンポも何もかも、すべては俺が感じたものだよ。そうやってリズムを感じて、自分のアイディアを表現しているんだ。機械のような役割を受け持っているわけさ。アンサンブルを掻き回したり、刺激したりしながら、常に進行感を作り出さなきゃならない。何をやっていてもね。

    ●そういったグルーヴの基本になるのは、上下動ではなく、回転するような動きですか?

    クライド そう、回転するような感覚だよ。あと、ドラムを叩くとき、コンガの感覚も盛り込もうとすることもある。すべての曲でそうするわけじゃないけれど、ストレートなパターンにコンガの感覚を加えるんだ。簡単にはいかないけれど、ときどきやってみることがあるよ。

    https://youtu.be/8vDXrN-90p0

    ●教則DVD『聖典 ザ・ファンク・ドラム』では、1拍目の重要性を強調していましたよね。

    クライド パターンの1拍目をね。とにかく1拍目が肝腎なんだ。「ワン・トゥー・スリー・フォー」とカウントする中で、“ワン”がー番重要になる。他の部分はすべてアドリブで構わないけれどね。もちろん、「ワン・トゥー・スリーフォー」だっていうことはわかっているけれど、俺が考えているのは“ワン”だけで、その後はアドリブだよ。“ワン”がすべてを支配するっていうのが、JBの音楽なんだ。

    “ワン”しか考えていないよ。4分音符だとか俺にはそういうことはまったくわからないんだ。本当だよ。そういうことはやっていない。知らないうちにやっているのかもしれないけれど、自分では意識していないね。“ここに16分音符を入れよう”、4分音符を叩こう”とか、そういうふうに考えることはないんだ。そこにぴったりハマると思ったことをやっているだけさ。それがどんな音符になっているのかはわからないよ。

    俺は“ワン”しか意識しない。意識するのは1拍目の“プン!だけで、後はパターンを感じている。1拍目だけが重くて、後はみんな軽いんだ。とにかく、俺はそうやっている。どうしてかは、わからないよ(笑)。俺は音楽を習ったこともないし、譜面を読んだこともないからね。音符の区別もつかない。とにかく感じるままに、歩いたりしゃべったりするように、グルーヴを出す。それが俺の演奏の基本だ。

    ●あなたは実際に演奏しているとき、具体的に頭の中で何を歌っているのですか?

    クライド 全部だよ。曲のメロディも、ドラム・パターンも、グルーヴも、全部いっぺんに感じている。でも、そうするように決めているわけじゃいるわけないよ。演奏するときには何も考えずに、感じたままにやるんだ。何かを考えたり、何かをしようと意識したりしだすと、いろいろと問題が出てくるからね。

    だから一度演奏を始めたら、すべてを忘れて、音楽に身を任せるんだ。パターンはときどき変わることがあるかもしれないけれど、何もなければ同じターンを続けていればいい。自分のやることを考え過ぎると、たちまち混乱を招くからね。だから、俺はあまり考えずに、ただひたすら演奏しているんだ。

    ●あなたにとって“ファンキー”とはどんな状態を指すものですか? 何をもって“ファンキー”だと思いますか?

    クライド そのドラマーが演奏しているグルーヴやパターンがヨレずに安定していることだ。遅いテンポでも速いテンポでも同じさ。そうすれば、そのドラマーは“ファンキーだ”ということになる。グルーヴがあって、ソウルがあって、どんなオカズを入れても、もとのパターンにピタッと戻ることができれば、そのドラマーは“ファンキーだと言えると思うよ。

    ●最後に、“Mr. Funky Drummer”のあなたがドラムを叩くにあたって、最も大切なこととは何でしょうか?

    クライド 一番大事なのは、ハイハットとスネア、それにベース・ドラムだよ。さっきも言ったように、他はみんな調味料に過ぎないからね。CDを作るときも、俺は全体の一部を担っているわけで、曲を演奏するときには、とにかく何でもいいから音を出した。それがJBバンドのやり方だった。何が何だかわからないまま、カウントを出して、とにかくグルーヴを叩いたんだ。「ワン・トゥー・スリー・フォー!」とカウントをとったら、とにかく、自分のパターンを叩かなきゃならない。それができなきゃ、大変なことになる(笑)。

    フレッド・ウェズリーと一緒に演奏したときにも、何の曲をやったかは覚えていないけれど、とにかくグルーヴを出すというやり方を紹介したんだ。アイディアは他のどこからでもない、自分の心、自分の内面から湧き上がってくるんだ。パターンにしても、誰かから与えられるわけじゃなくて、自分の話をするように、自分の足で歩くように、自分のアイディアを音にしているからね。それが俺のドラムの叩き方さ。何か曲をやるときに、あるパターンを叩いてうまくいかなければ、何も考えずに別のパターンを叩くまでのことさ。それだけだよ。前もって何かを考えることはない。ドラムに向かって、グルーヴを叩いて、楽しんで、意味のある音楽をやるだけさ。

    俺は、観客が身体を動かすのが見たいんだ。俺達の演奏を聴きながら、みんなが身体を揺らしてくれればいい。でも、頬杖をついたまま、じっとしている人がいたりすると、少し気分が悪くなる。その人が嫌いなわけじゃないよ。身体を揺すっていないということが気に入らないんだ。そういうときには、その人に身体を揺すってもらうために、俺はいろいろと工夫を凝らす。で、その人が身体を揺らし始めれば、俺は「やったぞ!」と思うわけさ(笑)。そんなふうに俺は演奏しているんだよ。