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舞台で徹底的に磨き上げた超人的なテクニックとショウマンシップ溢れるパフォーマンスで、スウィング全盛期のジャズ・シーンでスターダムを駆け上がった天才、バディ・リッチ。彼がいなければドラムの歴史はまったく違うものになっていたと言っても過言ではない、まさにレジェンド中のレジェンドだ。本日4月2日は彼の命日ということで、本誌2017年11月号で掲載した生誕100周年の総力特集の一部をお届けする。
Archive Interview
まずは2017年11月号にも掲載した、バディ・リッチの超貴重なインタビューの一部を転載。1977年のモダン・ドラマー誌に掲載されたもので、そのルーツ、キャリア、演奏の心構えや機材への考え方など、知られざるそのドラム哲学を語った内容となっている。
練習すればするほど上達するという考えは、私は間違っていると思う
●生まれはどちらですか?
バディ ブルックリンだ。
●あなたのご両親はヴォードヴィルに所属していて、あなたも若い頃は優れたタップ・ダンサーだったという話は本当ですか?
バディ ああ、そうだよ、タップをやっていたんだ。
」
●ではドラムについてフォーマルな教育を受けたことはありますか? レッスンを受けたり音楽学校に通ったりとか?
バディ ないね、これまでにレッスンを受けたことは皆無だ。音楽学校に関しても、知人を訪ねるために一度バークリーの中を歩いたことがあるくらいだね。
●最初に手に入れたドラムが何か覚えていますか?
バディ 自分が持っていた初めてのドラム・セットの写真は見たことがあるよ。私がドラムをプレイし始めた当時のタムは固定してあって動かせなかったし、今みたいなセットはまだ製造していなかった。
●ご両親と巡業していたとき、あなたはオーケストラ・ピットに座らされていたとのことですが、当時のあなたが関心を持ったのは、やはりいつもドラムだったのでしょうか?
バディ そうだね。
●練習もかなりしてきたのでしょうか?
バディ いや、特に練習はしたことはない。練習をするという機会をまったく持てなかったからね。私はこれまでずっと働き続けてきた……ずっとドラムをプレイしてきたんだ、全人生を通してね。今となってはそんな(練習みたいな)面倒なことに構っていられない。他にもやらなきゃいけないことがたくさんある……武道や車のメンテナンスとかね。いずれにせよ、私はあまり練習に重きを置いていない。
●今話していただいた内容に関して、もう少し詳しくお話いただけますか?
バディ 練習すればするほど上達するという考えは、私は間違っていると思う。うまくなるためにはプレイするしかないんだ。部屋や地下室に籠って、1日中ドラム・セットでルーディメンツを練習したり、スピードを鍛えても、実際にバンドとプレイすることを始めない限り、(本当の意味での)テクニックを学ぶこともできないし、テイストも磨かれない。どのようにバンドと一緒にプレイすれば良いのかを覚えることはできないんだ。それは実際にバンドとプレイしないと身につけることはできない。どんな仕事でも良い……例えば4人編成のバンドでやるという仕事の発注を受けたとして、その上で練習するのならば、それは自分が成長する良い機会となるだろう。でもそれ以外の練習なんて退屈だ。そう思わないかい? 1日4時間から8時間練習しろと生徒に言う教師達を私も知っている。でもね、自分がやろうとしたことを1時間かけてもできないようなら、4日かけてもきっと無理だと思う。
●あなたは亡くなったジーン・クルーパとは親しい友人同士だったのですよね?
バディ そうだ、彼とはとても親しくしていたよ。
●彼から影響を受けたと思いますか?
バディ 自分より前にプレイしていたすべてのドラマーから影響を受けたと考えているよ、あらゆる意味でね。30〜40年前には本当にありとあらゆる個々のスタイルがあった。そこで名を馳せたドラマー達はみんな、それぞれ独自のプレイによってその名を知られることになったんだ。そういうドラマーは他の誰とも違う個性的なサウンドを持っていた。だから私が聴いてきた人はすべて、何らかの形で私に影響を及ぼしたと言えるんだ。
Interview:Jim Warchol/Modern Drummer 1977 January/Veenhoven-Amsterdam
Translation:Yuko Yamaoka
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