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FUYUの真髄が詰まったソロ・ライヴ! 多彩なジャンルと超絶技巧が織りなす濃密な2時間【Report】

  • 撮影/文:編集部

FUYU SOLO LIVE TOUR TOKYO
@Live & Pub Shibuya gee-ge
2025.06.12

繊細かつフリーな“ブラシ・プレイ”で幕開け!
激レア・パフォーマンス満載の前半戦

去る6月12日、東京・渋谷gee-geにて、FUYUソロ・ライヴが行われた。昨年も行われ好評を博した全国を回るツアーで、この日は仙台に続く2公演目。機材調整も万全で、会場に入るとFUYU流の“ツーバス・セッティング”が来場者を出迎える。

ライヴは意表を突くブラシによるドラム・ソロから幕を開けた。MISIAやEXILE ATSUSHIのサポートで聴かせるパワフルなバック・ビートとは一線を画す、繊細かつフリーなプレイはまさに激レア。スネアやシンバルのコントロールされた響きが琴線に触れる素晴らしい演奏で、会場は一気にFUYUの世界に引き込まれた。そのままシームレスにhanah springのサンバ調の楽曲へと移行。いきなり叩き込むのではなく、自身と会場のウォーミングアップを促すような、歌とドラムが調和した心地良い演奏を聴かせ、観客の心を掴んだ。

軽くあいさつを済ませたFUYUは、父がプロのオルガニストであった自身の生い立ちや音楽環境、小学3年からニューヨークに渡ったことなど、軽快にプロフィール・トークを展開。高校時代からブラック・ミュージックを演奏するようになったことに触れると、続いてカーク・フランクリンの「Hosanna」をライヴ・バージョンで演奏してみせた。ここでは本場仕込みのゴスペル・チョップスが炸裂。カークのヴォーカルにつかず離れず、弾力あるビートと高速チョップス・フレーズが交互に繰り出され、FUYUのショウマンシップを味わうにも十分なパフォーマンスだった。

続いてはレコーディングやライヴなどの現場の話になり、多忙を極めるFUYU流の仕事術が明かされた。それはアシスタントにキメやベースとなるビートの形だけをピックアップしてもらった譜面を作成し、イメージ・トレーニングをした上でレコーディングに臨むというもの。個人練習に入れる時間も多くないため、試行錯誤の末こうした手法になっていったと語り、たまに練習に入れるときには、気になるフレーズの反復や、限られた時間内でそのときの自分にとって必要なメニューを組み、効率的な練習を心がけているのだそう。

その流れで、レコーディング間際に譜面を確認した楽曲の中でも印象に残っている、Crystal Kayの「Girl’s Night」を披露。キメやシンコペーション、ブレイクのタイミングが複雑に絡み合う1曲で、FUYUの記憶に強く残っているというのも頷ける。正確性も求められるハウス系ナンバーとなっており、先ほどのハネ系とは一変したマシンのようなドラミングが印象的だった。

譜面に関連した話題からもう1曲演奏されたのは、2021年の誌上ドラム・コンテスト課題曲で、T-SQUAREの坂東 慧が作曲した「Trial Road」のフル・バージョン。意外にも小学校時代の先輩後輩だったそうで、FUYUの帰国後、坂東の方から「実は同じ小学校で、一緒にドッヂボールもしたことがある」という会話で交流が生まれたのだそうだ。FUYUが演奏するのを見られるのはめずらしいフュージョン・ナンバーで、しかも何とこの日完全な初見演奏(編集部もリハーサルから見ていたが、1度も曲をチェックする素振りはなかった)! 終始譜面を確認しているとは思えないほどの手数を詰め込んだプレイは流石の一言で、彼のYouTubeの初見企画動画をリアルタイムで目の当たりにしているという興奮が会場に充満していたように思う。

ボトムを支えるビッグ・ネームの名曲連発!
ジャズ・ナンバーも炸裂でファン大興奮の後半戦

その後10年以上に渡りライヴのボトムを支えるEXILEから「Over」や、スガシカオ「Progress」といった、“1打の説得力”が求められるナンバーを演奏。目を瞑り天を仰いだり、大きく振りかぶるタメも魅せるプレイからは、FUYUがこの楽曲に込める思いをひしひしと感じ取ることができた。さらにMAYA HATCH BANDバージョンのジョン・コルトレーン「Giant Steps」も披露。FUYUの高速レガートも堪能できた。

Q&Aコーナーでは、緊張を取る方法や、ニューヨーク時代の盟友で先日来日していたマーカス・ギルモアのことなど、会場から次々と質問が寄せられた。中でも「新しいものを取り入れるには?」という質問に「身体が覚えるまで反復練習」と答えており、先ほどの初見演奏や速譜能力の高いFUYUでも、まだまだ高みを目指す心意気を感じた。

話は尽きないが、イベントのリミットも迫っていたため、続いて演奏されたのは昨年のツアーでもセットリストに入っていたhanah springの「IN THE SUN」。川口千里との協奏も記憶に新しい楽曲で、その際に触発されたのか、後半では見事なポリリズムや片手に2本のスティックを持った“シングル・ハンドのハイハット・ロール”を披露! メロウなソウル・ナンバーながら、息を飲む展開が繰り広げられた。

そしてライヴの締めくくりに演奏されたのはMISIAの「逢いたくていま」とEXILE ATSUSHIの「願い」。今回のドラム・セットはFUYUを360度囲むような形で背後にもウィンド・チャイムなどパーカッションが配置されているのだが、そのウィンド・チャイムやそれに付属されているトライアングルのような響きのメタル・バーの演奏も同時にこなし、FUYUのプレイアビリティの高さを物語っていた。

アンコールはこちらもFUYUソロ・ライヴといえばのRED DIAMOND DOGS「GOOD VIBES」。約2時間にもおよぶライヴは、R&Bやファンク、ジャズ、フュージョン、バラード、ハウス、J-POPなどなど、何と10曲以上ものパフォーマンスを披露。ファンとの会話も普段にも増してよりいっそうフレンドリーかつ丁寧な対応だったのも印象的だったのだが、実は今回のソロ・ライヴ・ツアーは肘の手術直前で、術後は3ヵ月ほどドラムが叩けなくなるということから、一時的にドラムから離れるのを惜しむように、FUYUのやりたいことをすべて詰め込んだような、とても濃密で充実した内容だった。

また、今年の誌上ドラム・コンテスト『Find the Pocket 2025』では最終審査員およびデモ・パフォーマンスが決まっているFUYU。2ヵ月ぶりに現場復帰も果たしたようで、さらにパワー・アップした彼の演奏を楽しみに待とう。

  • 今回のツアーでFUYUが使用したのはMokison Drum Schoolが用意したTAMA STAR Bunbingaの24"&20"バス・ドラムがインパクト抜群の変則ツーバス・キット。ハイ・タムはMetalworksの10"スネアをスナッピーOFFにして使用。
会場では6月16日の発売に先駆け、ドラマガ7月号を先行販売。ソロ・ツアー限定で直筆ポスト・カードが特典として付属された。
ポスト・カードのサインはリハ終わり、本番前のわずかな時間で書いていただいた。FUYUさん、ご協力ありがとうございました!