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    たたきびと ♯8 尽きない“フット・ワーク”の悩み【後編】

    • Photo:Takashi Yashima、Yoshika Horita Analysis:Yusuke Nagano

    2014〜16年にお届けした玉田豊夢と朝倉真司による連載セミナー=“たたきびと”をドラマガWebに転載! 打楽器の魅力、楽しさを伝えることを主軸に置いており、ドラム&パーカッションを初めてみようという方に最適な内容です。第8回のテーマは、前回に続いて、ドラミングの重要なテクニックであるフット・ワーク。ハイハット・ペダル=左足の使い方について考察します。今月も中〜上級者必見!

    これからドラムを始めてみたいという方は「ビギナーお助け記事まとめ」をチェック!

    ハイハットとライドを同時に鳴らすのが
    何となく生理的に嫌で
    綺麗にコントロールできないなら
    左足は動かさないって (朝倉)

    キックで16分ウラとか
    8分ウラを入れるときも
    動かしている左足を基準に
    タイミングを掴んでいる感覚 (玉田)

    ●前回は右足=フット・ペダルの踏み方についてお聞きしましたが、今回は左足=ハイハット・ペダルの踏み方についてお聞きしたいと思います。左足は右足に比べてフォーカスされることが少ないので、悩んでいる人も多いと思うのですが……。

    朝倉 演奏している人の足元はよく見えないから、本当に悩みますよね。“左足は何で動いているんだろう?”とか……ほとんどのドラマーが左足を動かしてリズムを取ってるじゃないですか?

    私はまったく動かさずにやってきちゃったので、“やっぱり動かさなきゃダメなのかな。今から練習しようかな”って、大人になればなるほど思うようになって。でもカースケ(河村智康)さんとか、ほとんど動かさないけど素晴らしいドラマーもいるのを見て救われたり(笑)。もちろん“動かせたら良かったな”と思うことは今でもありますけど。

    ●左足のゴースト・モーション(カカトを上下させる動作)は、初心者は悩みますよね。朝倉さんが動かさなかった理由は何だったんですか?

    朝倉 足を動かした結果ハイハットが鳴っちゃったりするのが、最初の頃、自分の中で嫌だったんです。例えばライドを叩いているときに、ハイハットが“チャッチャッチャ……”って2つの音を同時に鳴らすのが何となく生理的に嫌で。綺麗にコントロールできるならば良いかもしれないけど、できなかったので、それなら動かさないって。

    玉田 僕はテレビや映像でプロのドラマーが動かしているのを見て、“左足は動かさなきゃいけないんだ”って思い込んでしまったんです。そうやって始めちゃったんで、例えばキックで16分ウラとか8分ウラを入れるときも、動かしている左足を基準にタイミングを掴んでいる感覚なんです。

    朝倉 私はそういう基準があるのが良いなぁと思うんですけどね。豊夢君はライドにいっているとき、ハイハット踏みまくって揺れながらずっと鳴っているイメージがあるんですけど、ああいう在り方は音の塊感としてすごく好き。

    玉田 僕は逆に左足を動かさない朝倉さんがうらやましいですね。海外のドラマー……特に黒人のドラマーを見ると圧倒的に動かしている人が少なくて、グルーヴにせせこましさがないというか。音色も動かさない方が絶対的に良いと思うんです。

    動かすと、どうしてもハイハットに“圧”がかかるので、詰まった感じのサウンドになったり、開き方も曖昧になったり。でも左足を動かしてない人のハイハットを聴くと、安定したサウンドで、ハイハットの音が続いているような感じがして、それがグルーヴのスムーズさとかにつながっているように思うんです。

    それで最近は然るべきところで踏んだり、踏まなかったり、意識するようになったんですけど、ちょっと他のことに集中したりすると、自然と動き出しちゃうんですよね。

    ●無意識で左足でリズムをキープしているんでしょうね。

    玉田 そうですね。でも左足頼りみたいになると、グルーヴが詰まった感じになりやすいというか。理想は腰のあたりでどっしりと感じて、全体を操るようなイメージですね。

    朝倉 “左足を動かしている人は、あそこでリズム・キープしているんだろうな、そういうのがないから自分はいまいちダメなんだな”とかいつも思ってしまいます(笑)。

    ●でもどちらが正解/間違いというわけでもないですよね?

    朝倉 そうですね。左足を動かす人は“やっていないのも良いなぁ”って思うだろうし、動かさない人は“やっておけば良かった”って思うかもだし……。私と豊夢君はその両方の例というか。

    ●お二人が正反対っていうのも面白いですよね。ではハイハットのオープン/クローズのやり方はいかがですか? つま先でコントロールする人もいれば、カカト側でコントロールする人もいますが、朝倉さんはどちらですか?

    朝倉 つま先じゃないですかね。私はハイハットは結構開いてセッティングして、ボトム側を斜めにして、その斜めに上がっている方を手前に向けてセットしていて。足の力を抜くと、すぐ“チー”っていうみたいな状態にしているので、多分つま先の力を抜いているのかなと……。

    意識がこう、“ちょっとそうしたい”ってときに、そういうふうになるように。“ジャンジャン”踏んで鳴らしたりとかは余りしないのでそんなふうにしているような気がします。

    玉田 僕は左足が動いていることもあって、カカトが上がった状態なので、そのままオープン/クローズすることが多いんですけど、音の長さとか速さ、ニュアンスでかなり変わりますね。

    リズムの中で……例えば“ドクチー、ドクチー”みたいに、キックが4つ打ちのハウスみたいな場合は、つま先側から徐々に開けるイメージで操作したり。その音のイメージを出しやすいように身体が勝手に切り替わるというか。

    たたきびとの“フット・ワーク”

    ここでは玉田&朝倉のハイハット・ペダルの“踏み方”=左足の使い方をチェックしていこう。左足を動かす玉田と、動かさない朝倉、その違いが写真を通してよりハッキリとわかるだろう。それがサウンド、グルーヴの違いを生み出している!

    玉田の“フット・ワーク”

    • 写真1

    写真1から見た玉田の左足のポジションは、カカトを少しだけ持ち上げて足の裏と床が平行に近い状態になっているが、これは先月号で解説した右足のフォームと共通しているのもポイント。つま先に常に圧がかかるためタイトなクローズ音を得やすく、ハイハットが不本意に開き気味になる症状を抱える初心者の解決策としてもオススメ。そしてオープン/クローズでは、オープン時はカカトを下ろしてつま先を緩め、クローズ時はカカトを上げてつま先を下げるシーソーのような動きが基本となる(写真2〜3)。クローズ時にはカカトが高めに上がっているが、このような動きは脚全体の重さをつま先に集中させてキレの良い音色を得やすい。

    朝倉の“フット・ワーク”

    • 写真1

    写真1から見た朝倉の左足のフォームは、足の裏が完全にフット・ボードと密着しており、大地と一体化するような安定感が視覚的にも伝わってくる。先月号で解説した朝倉の右足はカカトを比較的高めに上げるスタイルであったが、左右が相反するフォームでバランスがうまく取れていると感じる。ハイハットを閉じる圧力を微妙にコントロールしやすいのも長所で、音色やニュアンスなどの細かい表情の変化を引き出したいときにはオススメだ。そしてオープン/クローズもカカトを下ろした状態でつま先だけを上下に動かしているが(写真2〜3)、クローズ時には微妙にカカトが浮いて、脚全体の圧力をつま先側にかけているのがわかる。

    ※本記事は2015年4月号の連載セミナーを転載した内容となります。

    朝倉真司●音楽家、ドラマー、パーカッショニスト 。1996年にLOVE CIRCUSのメンバーとしてデビュー。その後、ヨシンバ、パーカッショングループ ”Asoviva!”のメンバーとして活動しながら、森山直太朗、一青窈、くるり、秦基博、あいみょん、Superfly、ONE OK ROCK、岸谷香、いきものがかり、レキシなどのさまざまなアーティストのライヴ/レコーディングに参加している。
    2017年9月には森山直太朗劇場公演「あの城」(本多劇場・2018年3月映像作品化)、2019年7月には20th century(V6) TWENTIETH TRIANGLE TOUR「カノトイハナサガモノラ」
    (グローブ座、北九州劇場、梅田芸術劇場・2020年3月映像作品化)にそれぞれ役者としても出演している。
    玉田豊夢●1975年生まれ。20歳の頃からサポート活動をスタート。100s、C.C.KINGのメンバーとしても活躍。これまでに中村一義、小谷美紗子、斉藤和義、レキシ、いきものがかり、Superfly、フジファブリック、ポルノグラフィティ、宮本浩次など数多くのアーティストのライヴ/レコーディングに参加。13年には自身のシグネチャー・スネアを発表した(生産完了)。

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