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    “ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -金属編-

    • Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine

    Bronze -ブロンズ-

    センシティヴで温かみのあるキャラクター

    銅を主成分として、錫(すず)を加えた合金。いわゆる青銅。サウンドとしては、ブラスのパワーときらびやかさ、コパー/カッパーのダークさを兼ね備えており、センシティヴで温かみのあるキャラクター。金属材としては、高域は控えめで、中低域が豊か。

    グレッチのようなクリア・ラッカー仕上げのストレートなシェルだけでなく、カノウプスやラディックのように全体にハンマリングが施されたものも多く、基本的にブラス・シェルであるラディックのブラック・ビューティーにもブロンズ・シェルのものが存在するなど、多種多様な仕様の楽器があり、根強い人気がうかがえます。

    • LUDWIG Bronze Phonic(Hammered)......タイトでパンチのあるサウンド。共通パーツのコパーフォニック、ハンマード・ブラスと比較することで、ブロンズのキャラクターが明解に掴めるでしょう。

    ハンマリングの効果について、ここで簡単に触れさせていただきますと、複雑な倍音が引き出されて、ディケイやサステインの短い、ドライな響きに変化する傾向があるようです。形状の変化によって空気の流れが変わる、内部で音が乱反射する、という説明も目にしますが、叩くことで剛性や結晶構造が変化し、素材が持っていたチーンという透き通った金属音が、ジーンないしギーンといった音色に変化する様をイメージしていただくと良いと思います。

    Aluminum -アルミニウム-

    音色はライト、ディケイは短めでドライ

    軽くて強く、加工しやすい金属。60 年代前半に各社から主にエントリー・クラスのモデルとしてアルミ・シェルのスネアが発売され、ポピュラーな材となりますが、1910 年代頃にはアメリカの Barry が、すでにアルミ・シェルのスネアと大太鼓を製作しており、実はドラムのシェル材としての歴史は古いようです。

    • LUDWIG Acrolite......非常に愛用者の多いロングセラー・モデルで、世にアルミ・シェルを広めた功労者。塗装をかけた薄いシェルに軽いパーツを組み合わせ、トーンはライトで柔らかい。

    音色もライトで、ディケイは短めでドライ。“パンッ”というクラック音が特徴的。金属らしい成分を感じさせつつも、柔らかく小回りが利いて扱いやすく、変化球に見せかけて、実は王道なサウンドです。薄いシェルでは控えめな音量と耳に優しい倍音、分厚い削り出しでは芯のある迫力のサウンド、クローム・メッキではきらびやかな高域と使いやすい音量……と、仕様でいろいろな面が見えてくる材でもあります。

    Bell Bronze/Bell Brass -ベルブロンズ/ブルブラス-

    鋭敏なレスポンス、長いサステイン
    抜群の音ヌケ、大音量

    銅を主成分として錫を加えた合金。ソナーやDWではベルブロンズ、 TAMAやグレッチではベルブラスと、メーカーごとに呼び方が異なる材質ですが、ドラムの仕様においてベルブラスと呼称する場合、標準的な金属胴が1~2mmであるのに対し、3~5mm程度の厚めに成型されており、かつ、金属材を曲げたり伸ばしたりはせず、鋳造された合金を削り出してシェルにしているものを指すケースがほとんどなので、今回はベルブロンズ/ベルブラスを一括りの材として解説させていただきます。

    TAMA Bell Brass Snare Drum BB156
    1980年に発表され、その圧倒的な音圧感にも関わらず耳に痛くない落ち着きのあるサウンドで一世を風靡したTAMAのベルブラス・スネア。こちらは80年代中期頃のスペックを再現したもの。

    前置きが長くなりましたが、原則としてほぼすべての楽器が超重量級のスネアとなっており、鋭敏なレスポンス、長いサステイン、抜群の音ヌケ、大音量といった、共通の特性があります。剛性や重量ゆえの音の密度があり、極端なロー・ピッチや、ハードなミュートを施した状態でも、十分な音量を稼げる傾向があります。非常に高価な楽器の代名詞でもあり、近年の新品および中古市場においても20~30万円することはざらで、中には50万円ほどになるものも存在していますが、アジア圏でベルブラス・シェルを供給するメーカーが出てきたおかげか、近年は10万円前後から流通するようになってきています。