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“ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -金属編-

  • Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine

Titanium -チタン-

高域から低域まで
幅広いレンジの倍音が存在

軽く強靭な金属。比較的加工が困難な材ということもあり、製造するメーカーは限られていましたが、現在は複数のメーカーが生産しています。大音量に対応した、高価な重力級の楽器のイメージがあったものの、近年はその硬さを生かした極薄のシェルも見かける機会が増えており、さまざまな用途の楽器が存在しています。

KITANO K-TI KING 50
チタン・ドラムと言えば、大阪発のKITANOだろう。シェルはもちろん、フープ、ラグ、スナッピー・コートといったパーツもチタン製で、他を寄せつけないパワーと音量感で圧倒的な存在感を放つ。

サウンドの特徴としては、チタン特有の極めて速いアタックとディケイの中に図太い低域が凝縮されており、クリアな中高域が上品に響きます。アルミのような軽さがありますが、甘く繊細な響きというよりは、辛口なキレの良さがあり、高域から低域まで幅広いレンジの倍音が存在していますが、ブラスのような複雑な華やかさではなく、明快で直線的な音の飛び方です。

Stainless Steel -ステンレス・スティール-

パワフルでストレートな音飛び

鉄を主成分として、クロムを添加した、錆びにくい金属。主成分が共通であるスティールと似たキャラクターですが、フィニッシュの選択肢が増えたことから、サウンドの方向性にも違いが生まれています。

LUDWIG Heirloom Stainless Steel
ステンレスといえばヴィンテージ・ラディックのキットなどが思い浮かぶが、こちらは同社のレーザー彫刻が美しいモデル。クリアな輪郭ながらも落ち着きのある音色が印象的。

スティールでは難しいポリッシュ仕上げやバフ仕上げでは非常にオープンなサウンド。硬さから生まれる、ロスが少ないパワフルでストレートな音飛びと、ブラスよりは軽く、アルミより華やかなサウンドが特徴的。ステンレスは工業製品でも重要なポジションを占めており、多種多様なステンレス材が存在しているので、ロットごとの公開されない些細な仕様変更や、メーカーごとの違いも考慮したいです。

ラディック・オリジナル合金
“Ludalloy”の謎

非常に扱いやすいバランスで
ジャンル問わず広く愛された

メタル・スネアの代表選手と言えばラディックのスープラフォニックとスーパーセンシティヴ。これらのスネアに 1964年頃から現在に至るまで使われてきたラディアロイ(Ludalloy)と呼ばれる伝統のアロイ・シェルの材は長年公表されず、スティール系?アルミ系?とさまざまな憶測が飛び交っていたが、近年、同社が突然「クローム・メッキをかけたアルミ・シェルでした」と正体を明かしてしまい、この論争はあっさりと終止符を打つこととなった。廉価版モデルであるアクロライト(こちらはカタログにアルミニウムと明記)の発表と同時に、メタル・シェルのモデルはほぼすべてブラスからアルミへ切り替えたのだと思われる。

  • 現行のLM402。

メッキの厚みは年代によって若干異なり、60年代のものは薄く、ビッツが出たり剥がれたりすることも多いが、時代が進むにつれて段々と厚く剥がれにくくなっていった。音に関してはアルミらしい軽快さを残しつつ、メッキ処理による高域のきらびやかさ、音量、タイトさが増している。非常に扱いやすいバランスで、ジャンルを問わず広く愛されたのも頷ける。ちなみに、メッキをかけていないアクロライトは、音量は控えめで柔らかく落ち着いた印象。ラディアロイ以前にクローム・オーバー・アルミ・シェルが使われた例はおそらくなく、音楽界全体に影響をおよぼすほどのサウンドを作り上げたという意味で、1つの大きな発明だったと言えるかもしれない。