NOTES
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UP
“ドラムの材”が丸わかり!スネア材質図鑑 -番外編-
- Text:Kazuaki Yokoyama、Takuya Yamamoto、Rhythm & Drums Magazine
Acrylic -アクリル-
程良く芯があり、中域がスッキリと前に
透明なルックスのインパクトが強烈な、樹脂系の材の代表格。60年代にファイブスがCrystaliteを発表、70年代に入るとラディック、ソナー、パールなどが続々とアクリル・シェルのモデルを発表しました。カラー・バリエーションとして、スモークがかった渋い色味のもの、磨りガラスのような仕上げのもの、透けていないもの、複数の色を組み合わせたスパイラルなどがあります。
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アクリルにもかかわらず、丸く柔らかめなトーン、豊富なサイズとカラー・バリエーションでアクリルの可能性を広げた名器。ジョン・ボーナム、カレン・カーペンターなどの使用で広く知られた。
レンジは狭めでディケイも速いですが、程良く芯がありクッとフォーカスされ、中域がスッキリと前に出てきます。クリア・ヘッドを張ると樹脂らしいプチプチした質感となり、見た目を気にせずコーティング・ヘッドを張ると、途端にまろやかで落ち着いたトーンに化ける印象です。イロモノ扱いされがちですが、実はまとまりが良く扱いやすく、ドラムの素材として再認識されるべきだと思っています。
Fiber -ファイバー-
中低域が豊かで太く、重心は低め
フェノール樹脂を固めたもので、パールから 60年代に発表された名器、プレジデントのシェルに使用されていました。フェノール樹脂というものは、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の1つで、世界で初めて植物以外の原料より人工的に合成されたプラスティック、だそうです。
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昨年、パール創業75周年を記念し復刻したプレジデント・シリーズ。スペックも当時を再現している。
他の樹脂系シェルと比べると倍音成分が多く複雑なトーン。中低域が豊かで太く、重心は低めです。ある種ウッド・シェルに近いふっくらした質感に、樹脂らしいプチッとしたアタックが乗った感じでしょうか。近年、カノウプスがファイバー・スネアを発表したりと、根強い人気があるのも頷ける、何とも魅力的な材です。
Fiber Glass -ファイバーグラス-
ウッドにもメタルにも似ていない
独特な質感
繊維強化プラスティック(FRP)の一種で、ガラス繊維をプラスティックの中に入れ、強度を向上させた材(GFRP)。やはり樹脂系シェルのパイオニアであるファイブスが他者に先駆けて60年代に発表し、70年代にパールが発表したプレジデント・エクスポートも名器でした。ドラムに使用した場合、重くて硬いシェルになることが多いです。硬質なトーンで、“パーンッ”と飛び散るようなアタック音に特徴があります。音の膨らみはあまりなくストレートですが、レンジは広く、パワーもあります。ウッドにもメタルにも似ていない、独特な質感。樹脂系全般に言えますが、湿気に左右されず状態が安定しているのは、やはり強みです。
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ファイバーグラス・シェルの世界代表。音色はアタックが鋭く、高域が立ちソリッド。バディ・リッチもある時期に愛用していた。
Carbon -カーボン-
重心の低い落ち着いたトーン
こちらも繊維強化プラスティックの一種で、炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスティック(CFRP)。アタック、パワー、といった売り文句をよく見かけ、ルックスとも相まってハード&ラウド、というのが一般的な認識。しかし、実際には重心の低い落ち着いたトーン。音の密度に程良い“抜け感”があり、意外に柔らかく大人しい、というのが筆者の印象です。変な話ですが、マホガニーの代替材的にも使えそうなキャラクターなのかもしれません。やはりイメージに反し、ロー・ピッチでゆったり聴かせると気持ち良いです。重量は軽く鳴らしやすく、またパールのカーボンプライ・メイプルのように木材と貼り合わせて使われることもあります。
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6プライ・メイプル・シェルの内外にカーボンクロスをラミネート。メイプルの持つ、ある種のピーキーさを抑え、また見た目に反して重厚過ぎず、実に扱いやすい1台。