いよいよ後編に突入!
菅沼:前回から2回に渡って繰り広げている“ツーバス&ツイン・ペダル技 怒濤の100連発!!!”、いよいよ後編に突入するぜ!
みなさん、前編の技はクリアできただろうか?何?楽勝?いやいや、まだまだ! あと59フレーズも残ってるのだ。
一度倒した敵が、バージョン・アップして再登場する“ドラクエ状態”のフレーズをぜひ堪能してくれたまえ。
今回はツーバス、ツイン・ペダルを踏むためのスケール練習的なアプローチの他、スーパー・ドラマー達のプレイの分析&再現! フット・ワークの真髄に迫りたいと思う。
Ⅰ ツーバス/ツイン・ペダルのベーシック・エクササイズ
ここがポイント!
まずはフィルインでの使用頻度が高い“足の2連打”をプレイしてみよう。
足の2連打は、どうも苦手と思っているアナタ。片足で踏むのとちゃうよ! ここはツーバスやツイン・ペダルの恩恵に賜りましょう。
片足のダブル・アクションとは違って、両足に分散して1打ずつ踏めばとても簡単に、しかも省エネで踏めるのだ。同じフレーズを1分間繰り返したときの体力の消耗の差は歴然!
技42〜43
16分音符での2連打
まずは定番フレーズの“タカドコタカドコ”(技42)!
2小節目はタム回しも取り混ぜたバリエーションだ。そして、手からだけではなく、足からのスタートももちろん練習しなければならない(技43)。
足の2連打で始まるフレーズは、ツーバス/ツイン・ペダルなら、とても簡単に踏めるのよ。ぜひトライしてみよう!
技44〜45
6連符での2連打
こちらも定番フレーズ(技44)!
簡単にブレイできて、一般人が聴くと、「超絶なツーバスだ!」と驚愕される、手が4打、足が2打の連符技!
譜面のように規則正しく回してもいいし、ランダムにいろんなタムを回せば超絶感が増す!
そして少々慣れが必要な足からのスタート(技45)もトライしてみよう。
Ⅱ ツーバス/ツイン・ペダルにおける2連打のスケール練習的な応用
ここがポイント!
ここまでの“足の2連打”というテクニックができれば、さまざまな応用が可能になる。
ここでは1拍ごとに解決するのではなく、 トリッキーに拍をまたがって進むトリック・プレイのアプローチを紹介しよう。
この2つのアプローチは“速打ち、速踏みドラマーの定番”として、長きに渡って演奏されているフレーズだ。“この連打、聴いたことがある!”と思える2大フレーズだ。
技46
16分音符での4分割フレーズ
上モノの2打、バス・ドラムの2打の4連打を6連符にハメたフレーズ(技46)だ。
フィルインとして使った場合、4拍子の流れの中に、いきなり3連符の流れを入れることができ、とてもトリッキーかつ、スリルのあるフレージングだ!
技47
32分音符の6分割フレーズ
技46に出てきた6連符を、32分音符上に当てはめたフレージングだ。
僕のセッティングのように8タム(うち2つは小口径スネア)でタムを回した例で、6拍まですべて別のタムで回せるプレイ。
点数の少ないセットの方がプレイは楽だが、音域の広いアプローチや巨大セットに興味を持つドラマーも増えてほしいと願う今日この頃だ。
Ⅲ バス・ドラム with クラッシュ(チャイナ)
ここがポイント!
バス・ドラムからの連打でスタートするアプローチを紹介しよう。
上半身はバス・ドラムとユニゾンでクラッシュ・シンバルやチャイナ・シンバル、あるいは重ねシンバルなどをトッピングする派手な技だ。
ドラム・セットではバス・ドラムが一番サイズが大きくパワーがあるので、シンバルを合わせて連打すれば、圧倒的な迫力を出すことができる。
技48
バス・ドラム2連打で始まるアプローチ
バス・ドラムの2連打から始まるフレーズ“トトタタ・トトタタ・トトタタ・トトタタ”の“トト”の部分にシンバルをユニゾン打ちしてみよう。
それだけで聴感上のパワーとアタック感が倍増するだろう。手順はシングル・ストロークで行うが、シングル・パラディドルでもやってみよう! 見た目が派手になり、音の定位も面白くなる!
技49
バス・ドラム3運打+シンバルの6運符のアプローチ
バス・ドラムの3連打にシンバル類をトッピングした6連符のアプローチ。
このアプローチはシングル・ストロ一クで3打ずつキレイに打ち分ける練習が必要だ。
そしてシンバルを3連打した後にスネアに戻り、このときバス・ドラムがなくなるが、ついつい1打多く踏んでしまい、“ドコドコ”と4打になつてしまう人が多いので注意。
技50
バス・ドラムの4連打で始まる6連符のアプローチ
技50は、バス・ドラムの4連打で始まる6連符のアプローチ。
このアプローチはバス・ドラムの連打が4打と打数が多いので、身体のバランスをとるのが難しい。
パワーを求めてペダルに体重をかけて、前傾姿勢になってしまうと、フレーズの始まりと終わりの部分が不安定になりやすいので要注意だ。
Ⅳ 恐怖のマシンガン・ショット
ここがポイント!
マシンガン・ショットというネーミングはカーマイン・アピスの連打プレイに命名されたものだ。
遠い音、ワタシはカーマインのクリニックに2回参加したが、ジェフ・ベックとのトリオ“BBA”でのマシンガン・ショットがクリニックのハイライトだった。
今では、この奏法がスッカリ定番になり、先ほど挙げた“バス・ドラムの2連打”の応用フレーズとして広く演奏されている。
技51
1アクセントのマシンガン・ショット
マシンガン・ショットはアクセントをどこに持ってくるかが鍵となる。
技51は8分音符にアクセントがあるのにお気づきだろうか。つまり8分音符の“タタ・タタ・タタ・タタ”を心で歌いながら、出てくる音は“タコドドタコドド……”と音数が4倍になっていることを体感するのだ。
技52〜53
2アクセントのマシンガン・ショット
ここではアクセントが2回連続するアプローチを紹介しよう。
技52はシンプルな3拍フレーズをマシンガン・ショットで埋め尽くす“タコタコドドタコ・タコドドタコタコ・ドドタコタコドド”。
技53は4拍で解決させるフレーズで、“タコタコドドタコ・タコドドタコタコ・ドドタコタコドド・タコドドタコドド”となる。
技54
3アクセントのマシンガン・ショット
技54はアクセントが3回連続するアプローチを紹介しよう。
シンプルな16分音符を歌いながら、マシンガン・ショットで埋め尽くす、“タコタコタコドド・タコタコタコドド・タコタコタコドド・タコタコタコドド”。
これぞ、簡単かつ超絶に聴こえるコンビニ・フレーズだ!
技55
複合アクセントのマシンガン・ショット
マシンガン・ショットのラスト、技55は実際にカーマインが多用するフレーズ。
32分音符の“4、6、6、6、6、4分割”になるアプローチで、これをマシンガン・ショットで埋め尽くすと、“タコドドタコタコ・ドドタコタコドド・タコタコドドタコ・タコドドタコドド”となる。
Ⅴ ツーバス/ツイン・ペダルのワン・ポイント装飾音符
ここがポイント!
ここではフレーズの合間をツーバス(ツイン・ペダル)の装飾音符で埋める、お洒落なアプローチを紹介しよう。
考え方としては上半身のフレーズをまず決定する。その体符の部分にバス・ドラムの装飾音符を挿入して埋めるのだ。今回は4ストロ一クと5ストロークのラフを取り上げる。
技56〜57
4ストローク・ラフ
技56、57は“タカタカ・ウンタカ・タカウン”の3拍フレーズの“ウン”の半拍の隙間を3打のバス・ドラムで埋めるフレーズ。
ルーディメンツの場合、着地の音符も含めるグルーピングになるので、1ポイントに3打で埋めると“4ストローク・ラフ”と呼ぶ。
技58〜59
5ストローク・ラフ
まずは“夕カタカ・ウンタカ・タカウン”の3拍フレーズをまず叩いてみる。
安定したら“ウン”の半拍の隙間に、4打のバス・ドラムを入れて埋めてみよう。4打のバス・ドラムで埋めると、着地のノートも含めて“5ストローク・ラフ”となる。
このような装飾的なアプローチはいろんなメイン・ノートに対して使える!
Ⅵ 8分音符のバウンス系シャッフル・ビート
ここがポイント!
ここでは、シャッフル・ビートで使えるツーバス/ツイン・ペダルのアプローチを紹介しよう!
手でハネたリズムを叩き、両足も手と同じように対応するためには、バス・ドラムも完全に3連符でバウンスできるようにしなければならない。さっそく紹介していこう。
技60
バウンス系シャッフル・ビート(ハーフ・ビート)
まずはシャッフル・ビートをゆったり聴かせるのに最適な、ハ一フ・ビートのパターンをプレイしてみよう。
このパターンを基本に、細かくゴースト・ノートで埋めたパターンを“ハーフ・タイム・シャッフル”と呼ぶ場合もありますが、意味は同じでしょう。
技61
シャッフル・ビート(ノーマル・ビート)
ハネた8分音符のフット・ワークをキープしつつ、通常のシャッフル・ビートをプレイしてみよう。
このパターンはツーバスによるシャッフル・ビートの基本になるので、ぜひ安定するまで練習していただきたい。シンプルかつ迫力のあるアプロ―チと言えるだろう。
技62
シャッフル・ビート(コブハム式ゴースト・ノート入り)
3連符の真ん中にスネアのゴースト・ノートが入ることでバス・ドラムが3連打に聴こえるこのパターン。
このアイディアはビリー・コブハムの「クアドラント4」のプレイが初演と思われる。
コツは、左足からスタートした方が“跳ねパーセント”が上がリスピード感が出る。
技63
シャッフル・ビート(ゴースト・ノート入り、タム添え)
技62のパターンの3連符の真ん中のゴーストを、タムに移動させたパターンだ。
タムの方がスネアよりロ一・ビッチなため、フレーズに立体感も得られる! そしてこの場合は、ゴーストではなく実音で打つこと!
譜面ではタムのみだが、フロア・タムに移動するアプローチも音域が広がり、ワイドなニュアンスが出せるだろう。ただし、このフレーズ、あまりに存在感があるので、インスト向きのアプローチとして考えてね。
技64
3連符のシャッフル・ビート(ハーフ・ビートのシャッフル)
重厚なシャッフル・ビートをゆったり聴かせるのに最適なパターン。バス・ドラムで3連符をプレイし、上半身はハーフ・ビートのシャッフルを叩く。先ほどのハネた8分音符と違い、3連符で4拍とも埋めつくすことでパワー感が倍増!
技65
3連符のシャッフル・ビート2(ハーフ・ビートのシャッフル2)
技64と同じ3連符のバス・ドラムのパターンだが足順を変えており、この足順LRR(あるいはRLL)だと、得意な方の片足に2連打が集められるために、かなりの高速踏みが可能になる。
技66
3連符のシャッフル・ビート(ノーマル・ビートのシャッフル)
今度はハード・ロックやメタルの王道パターンだ!
難易度が高いポイントは“足が3連符”ということ。拍のアタマごとにスタートする足が変わり“R→L→R→L”になるため、ビギナーには少し難しいかもしれない。
技67
3連符のシャッフル・ビート(ノーマル・ビートのシャッフル2)
技66のパターンと同じく、足が3連符のノーマル・ビートで、足順は技65のときにも紹介したLRR(あるいはRLL)。この足順だと、ややパワーは落ちるが、スピード、燃費の面でとても効率の良いパターンだ!
技68
6連符系のシャッフル1
近年すっかりポピュラーになった、6連符のフット・ワーク。6連符を正確に踏むのはもちろん、上半身のビートをしっかりと叩けなければ、サウンドの崩壊につながるので気をつけてプレイしよう!
技69
6連符系のシャッフル2
右手の8分音符に対して、バス・ドラムを2打ずつつけるという3連符のアプローチだ。
6連符に当てはめる場合、手足の3連を2回繰り返して1拍に当てはめる。このフレーズは聴感上では超絶だが、演奏する方はとても省エネで簡単!
技70
6連符系のシャッフル3
技70は6連符の2分割フレーズになっていて、バック・ビートに当たる2拍目と4拍目は両手のボース打ちになっており、この部分にしっかりとアクセントを入れることが大切だ。拍ごとに手足が“オモテ、ウラ”とスリップするのが楽しい!
Ⅶ シカゴ系シャッフル VS ジグ系シャッフル
ここがポイント!
シャッフル・ビートは大きく分けて2種類に分類することができる。
ブルースの本場、シカゴ発祥のシカゴ・シャッフル。これは“ダッタ・タッタ・ダッタ・タッタ”という、独特のハネで、今回はロックやジャズにも使用できるアプローチを紹介する。
もう1つはアイルランド発祥のリズム、ジグをルーツに持つシャッフル・ビート。アイルランドでは“リール”や“ジグ”が伝統的なダンスのリズムとなるが、そのジグには“スリップ・ジグ”、“ホップ・ジグ”など、さまざまなジグが存在する。
技71
シカゴ・シャッフル1
ジャズの楽曲にも使用できるアプローチで、右手はレガートでジャズのフィールを出して、左手はアタマを抜いたハネの8分音符でプレイ。スネアはバック・ビート以外はできるだけ音量を抑えるのがコツだ。
技72
シカゴ・シャッフル2
上半身も下半身もすべて、ハネの8分音符をプレイ! その昔は、片足で踏んでいたので地獄のパターンだった。それでもツイン・ペダルの使用で、足はかなり楽になった。それでも高速においての手のボース打ちは難易度が高いだろう。
技73
ジグ系シャッフル1
手足の動きはユニゾンで、右手はライド・シンバル、あるいはチャイナ・シンバルやハイハット(クローズ)でプレイする。しかし、このダンサブルなフィーリングのパターン、ロックやメタルにも合うのが不思議だ。
技74
ジグ系シャッフル2
またしても手足がユニゾン! しかも3連符すべてを手足でやってしまうパターンだ。全身すべてでビートを出している感覚がとても気持いい! このパターンは、スネア・ドラムのゴースト・ノートで抑揚をつけることのできる躍動的な表現だ。
Ⅷ スーパー・ドラマー達のツーバス/ツイン・ペダル技
ここがポイント!
さて、ここまで紹介したフレーズは100フレーズ中、74フレーズ!
残りの26フレーズは、スーパー・ドラマー達のツーバス/ツイン・ペダル技を参考にした技を紹介していこう!
今回の企画のタイトル通り、“王道モノ”から、定番フレーズ、最新の超絶ドラマー達の“変態フレーズ”まで幅広く取り上げてみた。フレーズによってはかなり難易度が高いものがあるが繰り返し練習して、ぜひモノにしてほしい。
技75〜76
「デジモータル」フィア・ファクトリー(d:レイモンド・ヘレーラ)
レイモンドのフット・ワークのアプローチは、常にギターのリフと密接な関係にある。
おそらくギターのダウン・ピッキングが右足、そしてアップ・ビッキングが左足で、リフそのものをユニゾンするケースが多い。このプレイも4拍目の32分音符のワン・ポイントの連打で、難なくユニゾン!
まずは基本ラインの“ドドッド”を練習しよう。そしてウラの部分を追加して“ドコドッド”と音数を増やしてみよう。
ずっと同じ動きでいけないようになっているのが8拍目にくる解決フレーズ! ここでフレーズがリセットされるのがニクいぜ!
技77
「ノー・ワン」フィア・ファクトリー(d:レイモンド・ヘレーラ)
毎拍違うフレーズで構築されたこのパターンの基本ラインは、8拍目には解決の32分音符がつく。足のフレーズが細かくなった分、右手は4分音符でゆったり聴かせる。テクニック重視ではなく、音楽的にもよく考えられているのだ。
技78
「エイカーズ・オブ・スキン」フィア・ファクトリー(d:レイモンド・ヘレーラ)
この6連符のアプローチは手癖になっているドラマーも多いだろう。
それほどにプレイしていて、気持ちのいいフレーズなのだ。2小節目の“タンタンタンドド・タンタンタンドド”は、ギターのリフではなくドラム主導だと思われる。
技79
「ハック・ザ・ファック・アップ」フィア・ファクトリー(d:レイモンド・ヘレーラ)
基本練習を思わせるバス・ドラムの16分音符と32分音符チェンジアップ!
さらに2小節目ではブラスト・ビートのスカンク・ビート的なアプローチからバス・ドラムの32分音符へと移行。フレーズ的には無機質なのに、なぜか魅力的な技だ!
技80
「ゼロ・シグナル」フィア・ファクトリー(d:レイモンド・ヘレーラ)
このフレーズはシンプルなアプローチだが、プレイするにはコツがいる。
まず右足で8音符を踏む。もちろん、この段階で上半身は8ビートをプレイ! そして左足で16分音符のウラをワン・ポイントで入れていく。スネアが入るあたりが難しい!
技81
「ジャック・ハマー」ポール・ギルバート(d:マルコ・ミネマン)
7拍子は、変拍子の中でももはやポピュラーな拍子。だが、ここで紹介するマルコのアプローチ
をプレイするには少々難易度が高い。
何せ、ここまでで紹介した“ドッドコ”と“ドコドン”のフット・ワークの両方が普通にプレイできないとプレイできないのだ! さらに4小節目のイヤな9拍子の解決には笑える。テンポもBPM=134と速めで、足の連打を踏みながら身体のバランスをとるのが課題となるだろう。
技82
「ブロークン・ハンズ」ラム・オヴ・ゴッド(d:クリス・アドラー)
ここまでツーバスのパターンを紹介してきて“ドコドン・ドコドン”というフレーズが日常的に踏まれているということは理解していただけたと思う。しかし、このクリスのパターンはテンポがBPM=164と、かなり高速なのだ。
なので、上半身はハーフ・ビートでゆったりと! いやあ、考えられてるねえ。そのまま“0.75拍”と言われる1拍半フレーズに突入するが、ここはペダル・ワークの見せどころ!
技83
「ナチュラル・ボーン・キラー」アヴェンジド・セブンフォールド
(d:マイク・ポートノイ)
このスーパー・ドラマー達の実際のプレイ分析でも、特に初心者のドラマー向きのフレーズ!
このフレーズの分割は16分音符で“6、6、4”と分割するポピュラーなアプローチだ。ツーバスを16分音符でキープしながら、両手で1拍半のアクセントを打ち、毎小節4拍目に解決するというポップな技! 次の展開としてはスネアの部分をタムやフロア・タムにしてワイドな感じを出してみよう!
技84
「セイブ・ミー」アヴェンジド・セブンフォールド(d:マイク・ポートノイ)
この8分の12拍子は画期的だ! 普通なら1打踏むところを3打、4打と踏み倒している!
よく手数派のドラマーをつかまえて“2打打つところを1打で表現するのが、いいドラマーなんだよね”と否定する人がいるが、足の場合はどうなんでしょ? ワタシはカッコいいと思う。こういうことをするためにツイン・ペダルを買ってるんだからね。しないのならシングル・ペダルにするっつ一の!
技85
「ビカミング」バンテラ(d:ヴィニー・ポール)
かなり昔のアプローチだが、この名フレーズを紹介しないわけにはいかない。初めてこの8分3連のツーバス・フレーズを聴いたときは、そりゃもうめっちゃ興奮したものだ。
足順は1拍目は右から、2拍目は左からと常に交互に踏む方がツブ立ちとパワーが出る。このフレーズは多くのドラマーに影響を与え、その上でさらに進化形のフレーズが出るという偉業フレーズと言っても過言ではない。
技86
「ジグルロックス」ペリフェリー(d:マット・ハルパーン)
技85の8分3連が進化した6連符系フレーズと言える上級フレーズだ!
バス・ドラムは7連打、10連打、さらには16連打という高速踏みを実現。まずハンマー・ブラストのエコノミーをプレイし、安定させてからフット・ワークの練習に入ろう。連続した高速踏みよりも、このような断続的なアプローチの方が難易度が高いので、しっかり練習してね。
技87〜90
「ブリード」メシュガー(d:トーマス・ハーケ)
前編で紹介した“バケラッタ・フレーズ”。技87は、トーマスの本家のアプローチだ。
上半身はハーフ・ビートで楽にアプローチ! テンポはBPM=118というミディアム・テンポ。ということで、地獄のような速さではないものの、ジワジワとくるグルーヴ感が超気持いい!
これを踏み続けると“ドラマーズ・ハイ”とでも言おうか、なんか涌き上がる快感がある!
さて技88は“バケラッタ”からの発展フレーズ! “バケラッタタタ”という5拍フレーズを紹介しよう!
まず譜面のバス・ドラムのパートを見てみよう! 小節をまたぎつつ、キレイに5拍ずつ進行するパターンだ。楽曲自体は4分の4拍子なので、手が普通の4拍子のハーフ・ビートの中、常にバス・ドラムのビートがスリップしていくという変態フレーズ! “1、2、3、4……”とカウントしながら練習してね。
技89は、バス・ドラムが再びバケラッタに戻る。このパターンも3拍フレーズなので、解決の先は3拍、6拍、そして3小節となる。
メイン・パターンとの違いは、上半身のパターン! バケラッタの“バ”でクラッシュして“タ”でスネアに落ち着くという3拍フレーズで、オスティナート的な上半身のハーフ・ビートのキープがない。そのまま、全身で術中に落ちつつも、曲は4分の4拍子で進行するのだ!
技90に出てくる、このキメというかパターン、16分の22拍子。しかし、この「ブリード」という大曲、まず、リズム・パターンのアイディアをいくつか出してから、アレンジに入った“リズム・アレンジ先行”の楽曲かもしれない。僕らもよくやるが、ホンマにプログレ的な手法ですな。さすがに“テクニカル・メタル”と呼ばれるハズだ。
技91〜93
『Performance & Technique』ボビー・ジャーゾンベク(教則DVD)
このシンプルなツーバスのアプローチは前編も紹介したボビー・ジャーゾンベクのプレイだ。
みんなこの感じの3連符は普通に踏むよね。このフレーズもツーバス/ツイン・ペダルを踏む上で、重要な基本ラインになるので何度も反復練習しよう。独学のドラマーは特にキレイな3連符を意識して踏むこと! テンポが上がっても、しっかりと“タドド・タドド”と均等な3連符を目指す。
技91同様、手が1打+足が2打の16分音符版だ! ここでも音符の隙間が一定になることが大切だ。
テンポが上がっても3連ぎみにならず、しっかり“タッドド・タッドド”と16分音符のニュアンスをキープしよう。シングル・ペダルでも、よくプレイされるアプローチだが、ツーバスやツイン・ペダルの使用でスピード、持久力ともに効率良くプレイできる。ツーバスの定番フレーズだ。
ボビーの技として最後に紹介するのは“タンドコドッ・タンドコドッ”と聴こえる3拍フレーズ。
ここまで紹介した技3種類すべてが手に対して、足数の方が多い! それはバス・ドラムをプレイしている間に、スティックを投げたり、回しているからなのだ!
このフレーズでは特に回すチャンスが多い! 映像で見ると、とてつもなく“投げ技、回し技の宝庫”ぶりを発揮しているぜっ!
技94〜95
「ブランド・ストリート・ブルーム」シクス(d:ダン“ロード”フォード)
テンポはBPM=107ということで“モデラート”なのだが、その内容は“ツーバスを使った5連符”という変態リズム・パターン。
これを演奏してみると意外に気持ち良く、独自のグルーヴがある。しかし、初心者は16分音符か6連符に引っ張られる傾向があるので、まずキック・パッドで5連符を反復練習して、身体に“5”のパルスを染み込ませてからパターンに挑戦しよう! とても斬新なアイディアだ!
こちらは、16分の16拍子での5連符で踏むツーバス・プレイ。スプラッシュも混ぜたこの変態リズム・パターンは、実に斬新なアイディアで、技94と同様、独自のグルーヴがある。
こちらも、16分音符か6連符に引っ張られる傾向があるので、こちらのフレーズもキック・パッドで5連符を反復練習し、技94をマスターしてから臨んでみるのもいいだろう。ポイントはやはり“5”のパルスを染み込ませることだ!
技96〜97
「Blue Rondo A La Turk」PSP(d:サイモン・フィリップス)
譜例は8分の9拍子の基本パターンの一例! サイモンさん、盛り上がるといつもツーバスで埋めながら、クラッシュ・シンバルが小節の変わり目でシンコペしはりますねん!
さらにタムのフィルインは男のシングル・ストロークで骨太な感じ。このあたりが、どちらかというとフュージョンよりもロック寄りの所以だろう。高速じゃないツーバスは、このような使い方でサウンドを重厚にするのだっ!
この曲では過去にスーパー・ドラマー達がさまざまなアプローチにトライしている。例えば“アル・ジャロウ”という広島のヴォーカリスト(うそ)のでは、スティーヴ・ガッドがトリプル・ラタマキューでテーマをプレイ!
今回のサイモンは“ツーバスで埋め尽くし”のアプローチ! これにはホンマにノックアウトされた。このアイディアはどこから来るのか! ぜひパクリたいプレイだ!