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Drummer’s Disc Guide – 2022 Summer

– Summer 2022 –

【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


【A】スティーヴ・ガッド&ミカ・ストルツマン 『Spirit of Chick Corea』

d:スティーヴ・ガッド

オーガニックな響きが全体を温かく美しく包み
生死を超えた人と人との絆を感じさせてくれる

チック・コリアとスティーヴ・ガッドの共演には、いつもなにか特別なマジックが存在しました。『妖精』、『マイ・スパニッシュ・ハート』、『マッド・ハッター』、『フレンズ』、『スリー・カルテッツ』……どのアルバムの演奏も素晴らしく、アナログ盤を擦り切れるくらい聴き込んだ覚えがあります。『スリー・カルテッツ』のCDバージョンのボーナス・トラックで、チック・コリアがドラムを叩いているのですが、リズミックなアイディアの豊富さに驚かされます。ミカ・ストルツマンとスティーヴ・ガッドも強い引力で結ばれた音楽家同士で、幾度となく共演を重ねてきました。マリンバのオーガニックな響きがアルバム全体を温かく美しく包み、生死を超えた人と人との絆を感じさせてくれます。(神保 彰)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スティーヴ・ガッド(d)、ミカ・ストルツマン(marimba)、ジョン・パティトゥッチ/エディ・ゴメス(b)、ジェフリー・キーザー(p)、チック・コリア(p/bonus track)、アントニオ・ハート/ジミー・グリーン(sax)、スティーヴ・デイヴィス(tb)、リチャード・ストルツマン(cl)、ゲイル・モラン・コリア/カレン・ネルソン・ベル(vo)

発売元:EIGHT ISLANDS RECORDS 品番:EIRD8003 価格:¥2,970(税込) 発売日:2022.06.08

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【A】ポーキュパイン・ツリー『クロージャー/コンティニュエイション』

d:ギャヴィン・ハリソン

テクニカルかつ正確無比なビート
ギャヴィンのドラム・サウンドは年々研ぎ澄まされている

ポーキュパイン・ツリーの13年ぶりのアルバム。ずっと待ってました。ドラムのギャヴィン・ハリソンはさまざまなプロジェクトに参加しているので、彼のドラムは他のバンドでも聴くことはできるが、やはりポーキュパイン・ツリーになると特別に感じてしまう。1曲目、唸るベースから始まる。いきなり5拍子だ。プログレ・バンドらしくアルバムを通して、基本的に変拍子で楽曲は進んでいくが、シンセやギターはシンプルなフレーズでアンビエントな世界観に徹していることが多い。そのぶん、ドラムはテクニカルかつ、正確無比なビートでバンドのサウンドをタイトにしていく。今回のアルバムを聴くと、ギャヴィンのドラム・サウンドが、年々研ぎ澄まされているように感じる。ドラム・セットのバランス、チューニング、どれも素晴らしく、とにかく音が美しく心地良い。非の打ちどころがないサウンド。ぜひ、アルバムを聴いてみてほしい。(叶 亜樹良)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ギャヴィン・ハリソン(d)、スティーヴン・ウィルソン(vo、g、key)、リチャード・バルビエリ(key)

発売元:ソニー 品番:SICP-31546 価格:¥2,750(税込) 発売日:2022.06.24

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【A】ザ・ローリング・ストーンズ『ライヴ・アット・エル・モカンボ』

d:チャーリー・ワッツ

ストーンズの全ライヴ作品の中で
ベストな内容と言っても過言ではない

ファンの間で神格化されてきた、77年、エル・モカンボでのシークレット・ギグの完全版がついに公式リリース。海賊盤も含め、その全貌が明かされるのは今回が初めてであり、界隈では大事件なのだ。では、肝心な内容はというと、これが実に素晴らしく……本人達にとっても特別な夜であった様子がうかがえるのだが、ストーンズの全ライヴ作品の中でベストな内容と言っても過言ではないだろう。グルーヴの核を成す、キースのカッティング、チャーリーのバック・ビートのソリッドさ、揺るぎなさたるや半端ない。この時期の特徴と言えるワイルドなハイハット・ワークもたまらない。そして、彼らに絡むビルのメロディックで立体的なベース・ラインの美しさに驚く。初期に取り上げていたカヴァー曲の再演も多く含まれるが、ブルース/R&Rを自分達の表現として消化し、成熟しきった大人のストーンズの姿がここにある。伝説の夜はやはりすごかった。個人的推しレア曲、M9でノックアウトされるべし。(横山和明)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】チャーリー・ワッツ(d)、オリー・E・ブラウン(per)、ビル・ワイマン(b)、キース・リチャーズ(g、vo)、ミック・ジャガー(vo、g、harp)、ロニー・ウッド(g、cho)、イアン・スチュワート(p)、ビリー・プレストン(key、org、vo)、他

発売元:ユニバーサル 品番:UICY-16065〜6 価格:¥4,400(税込) 発売日:2022.05.13

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【A】レキシ『レキシチ』

d:蹴鞠Chang/となりのトロ遺跡/あす香大仏

曲ごとのアジャストの仕方が的確でありながら
ドラマーとしての個性も際立っている

日本史のストーリーをレキシ的に昇華する池田貴史によるソロ・ユニット、レキシ。本作で7枚目になるが、エンターテインメント性の高い楽曲を創作し続けることだけですごいのに、クオリティを落とすことなく、アレンジ&演奏はさらに磨きがかかっているように感じられる。その音楽的な側面で共に鍵を握っているのが、100s時代からの盟友である玉田&山口=蹴鞠Changとヒロ出島のリズム体。本作における蹴鞠Changのグルーヴ・メイクとサウンド・アプローチは見事で、曲ごとのアジャストの仕方が的確でありながら、ドラマーとしての個性も際立っているように思う。録音時期にはフィル・コリンズにハマっていたそうで、シングル・ヘッド・タムを使うなど、遊び心もたっぷり。それでいて印象に残るのは、“曲”であり、“歌”という理想的なバランス。M9では打首獄門同好会こと、“ぼく、獄門くん”が参加。歌うドラマー、あす香大仏の疾走するビートを核に、強力な“バンド・サウンド”を打ち鳴らしている! M5では“たたきびと”コンビも集結!!(北野 賢/リズム&ドラム・マガジン編集長)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】蹴鞠Chang(d)、となりのトロ遺跡(d、per)、あす香大仏(d、vo、cho)、レキシ(vo、cho、g、b、p、key、etc.)、ヒロ出島(b)、加藤えろ正(g、cho、per)、TAKE島流し(sax、fl)、DA 小町(g)、はじめ人間ちょっちゅね/元妹子(tp)、滝のもとの人麻呂/石垣太郎(tb)、他

発売元:ビクター 品番:VIZL-2043 価格:¥4,180(税込) 発売日:2022.04.20

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【A】ジョーイ・アレキサンダー『オリジン』

d:ケンドリック・スコット

スコットのシンバル・サウンドの芳醇さが際立つ
得意技のプッシュ・プル・テクニックも必聴

ラリー・グラナディア、ケンドリック・スコットの円熟したサポートを得て、19歳という若さを感じさせない落ち着きを感じさせる作品。クリス・ポッター、ギラット・ヘクセルマンのフロントが加わるトラックも実にバランスが良い。ケンドリック・スコットの素晴らしさの1つ、シンバル・サウンドの芳醇さが際立つ。とても柔らかいライド・パターンから、波紋のように広がるクラッシュとコントロールが自由自在。M6で聴かれる彼の得意技、プッシュ・プル・テクニックも必聴。トラディショナル・グリップが多いため、マッチドより円やかなリズム、サウンドを奏でる。ラスト曲でのブラシによるバラード演奏の、吸い込まれるような表現力も素晴らしい。(大坂昌彦)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ケンドリック・スコット(d)、ジョーイ・アレキサンダー(p、org)、ラリー・グレナディア(b)、ギラッド・ヘクセルマン(g)、クリス・ポッター(sax)

発売元:キング 品番:KKJ-179 価格:¥3,000(税込) 発売日:2022.05.31

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【E】Official髭男dism「ミックスナッツ EP」

d:松浦匡希

リズム&ドラム・トラックの構築にも
随所から徹底的なこだわりが伝わってくる

外出時にふと耳に入ってきた曲が気になり、アプリで検索すると“またヒゲダン……”が私は多い。喧騒の中での一瞬でも何かを伝えてくるのが彼らの生み出す楽曲の強さだと思う。今作は4曲入りEPということながら、それを実感するには十分。超速のSwingを軸に、アバンギャルドな演奏とポップなメロディで不思議感満載の「ミックスナッツ」、シンプルなグルーヴで惹きつけてドラマチックな展開を遂げていく「Anarchy 」、そしてリズムもメロディも心地良いのに、予想できるコード進行を覆し続けて“らしさ”を醸し出す「Choral A」と、彼らの冒険心が満載。リズム&ドラム・トラックの構築にも随所から徹底的なこだわりが伝わってくる。(山本雄一/RCCドラムスクール)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】松浦匡希/横田誓哉(d)、楢﨑 誠(b)、小笹大輔(g)、藤原 聡(vo、p、d)

発売元:ポニーキャニオン 品番:PCCA-06138 価格:¥1,650(税込) 発売日:2022.06.22

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【A】DIR EN GREY『PHALARIS』

d:Shinya

緊張感漲る圧巻のサウンドは
キャリアに裏打ちされた唯一無二のもの

結成25周年を迎えたDIR EN GREYの11作目となるフル・アルバム。冒頭には、いきなり10分に迫る大曲「Schadenfreude 」が配されており、時に重厚に、時に静謐に、時に猛烈な速さを伴い、めくるめく音楽世界を織り成していく。この曲が象徴するように、続く楽曲群も、場面ごとに異なる側面を持つことでコントラストを描き出す。その緊張感漲る圧巻のサウンドは、キャリアに裏打ちされた唯一無二のものだと思う。Shinyaのドラミングは、ブラスト・ビートで高速パートを牽引し、ふくよかなサウンドを効果的に鳴らすことで静謐なパートに彩りを加え、作品の世界観をしっかりと支えている。轟音の中でも1打1打がきちんと耳に届くサウンド・メイクも秀逸。(竹内伸一)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】Shinya(d)、Toshiya(b)、薫/Die(g)、京(vo)

発売元:FIREWALL DIV. 品番:SFCD-0273 価格:¥3,300(税込) 発売日:2022.06.15

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【A】摩天楼オペラ『真実を知っていく物語』

d:

気持ち良すぎるツーバス、ブラストで
思わずメロイック・サインを掲げてしまった

新体制となって初のフル・アルバム。期待して拝聴しましたが、M1から“響節炸裂!”と言わんばかりの超攻撃的&テクニカルなフレーズの応酬。激しいツーバス・フレーズが続く中にエフェクトがキラリ……さすがです。“1枚ぐらい抜いてもバレへんのちゃうの?”と思っていたあの多量のシンバル、全部使ってます! 各曲がドラマを作り、1つの作品となっていてあっという間に聴き終えてしまいました。ドラム・プレイもメタルはもちろん、比較的ストレートな楽曲でも、間を生かした演奏がさすがの一言。そしてM7〜8は気持ち良すぎるツーバス、ブラストで思わずメロイック・サインを1人で掲げてしまいました。最後の表題曲は感動の一言です。もっと各曲を掘り下げたいのですが、字数もありますので、ぜひ手に取ってお楽しみください。(影丸/-真天地開闢集団-ジグザグ)

◎Disc Information
【参加ミュージシャン】響(d)、燿(b)、優介(g)、彩雨(key、p)、苑(vo)

発売元:Amairo Records  品番:AMIR6 価格:¥4,000(税込) 発売日:2022.06.22

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