NOTES
Autumn 2023
【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray
d:ブライアン・ブレイド
変わらぬサウンドと新しい試みで
世界中を魅了しているバンド
フェローシップの新譜ですね。今作はいつものメンバーにカート・ローゼンウィケルが戻って参りました。1曲目からもうアンセム感満載で、カートのヴォイシングとジョンのシンセの調和で、ブライアンの大きなシンバルの倍音と溶け合って脳が喜びます。M2は『season of changes』の空気に似ており大きな3拍子の曲調で、カートもいてフェローシップ・ファンのあの頃の記憶にもブッ刺さる素晴らしい演奏。マイロンのソロに思わず拍手します。タイトル曲は、2008年の来日公演にてやっていましたし、2013年公開の『Live At Chicago Music Exchange』の映像からもいつも感動をもらいます。待望のスタジオ・レコーディングとして残されて歓喜です! このバンドは20年以上続いており、メンバー同士がリスペクトし合っているのが滲み出ていて、そして変わらぬバンド・サウンドと新しい試みを所々に散りばめ続け、世界中を魅了し続けていることに勇気をもらいます。(石若 駿)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ブライアン・ブレイド(d)、クリストファー・トーマス(b、syn)、カート・ローゼンウィンケル(g)、ジョン・カウハード(p、org)、メルヴィン・バトラー(sax)、マイロン・ウォルデン(sax、clarinet)
発売元:BSMF Records 品番:BSMF-5120 発売日:2023.08.25
d:スティーヴ・ジョーダン
ドラマー/プロデューサーとして
とんでもなく素晴らしい結果を産み出している
スティーヴ・ジョーダンが関わる全アーティスト/プロジェクト、チャーリー亡き後のストーンズのツアーに全面参加&大成功を収めた事実も含めて、世界レベルのドラム・シーンと長年のドラムの歴史において、ドラマー/プロデューサーとしてここまでの偉業を成し遂げ、そしてさらにとどまることなく活動し続けている人物もいない。特にブルーズ・ムービー・プロジェクト、永遠のモータウンなどで始まったルーツ・ミュージック/世界の音楽史への貢献度、そしてキース・リチャーズ、バディ・ガイ、ジョン・スコーフィールド、ジョン・メイヤー、ボズ・スキャッグス、ロバート・クレイなどのプロデュース作品における、すべてを把握し尽くしたドラム・パフォーマンスと適材適所のミュージシャン、エンジニア、スタジオ、機材セレクション……その完璧過ぎる仕事ぶりは、これで3作目になる重鎮ベティ・ラベットの最新作でもまたさらにため息しか出ない、とんでもなく素晴らしい結果を産み出している……必聴。(沼澤 尚/シアターブルック、ブルース・ザ・ブッチャー)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スティーヴ・ジョーダン(d)、ベティ・ラヴェット(vo)、ピノ・パラディーノ(b)、クリス・ブルース/ラリー・キャンベル(g)、レオン・ペンダーヴィス(key)、他
発売元:Jay-Vee Records 品番:JV2023J 発売日:2023.06.16
d:マーク・ジュリアナ
ここぞと魅せる素晴らしい音色とツブ立ち
卓越されたタイム感と音楽感に魅了される
マーク・ジュリアナの新作は『Mischief』。日本語訳で“いたずら”という意味のタイトルとなる今作は、自然体が生み出す遊び心で構成された素晴らしいジャズ作品。前作リリースの『the sound of listening』と同じメンバー/スタジオで録音され、ピアノはシャイ・マエストロ、ベースはクリス・モリッシー、サックスはジェイソン・リグビー。前作は実験的かつ雄大な作品で、私もCDを購入し、車で何度も聴いていた。そして今作はコンパクトかつ音楽的、ダイナミックな作品でマーク・ジュリアナの超人的にコントロールされ、言語化されたアプローチがバンドの軸となりつつ、ここぞと魅せる素晴らしい音色とツブ立ち、卓越されたタイム感と彼の音楽感やポリシーに魅了される。近年セイント・ヴィンセントのライヴ・サポートでも大忙しな中、こうやって素晴らしいジャズ作品を生み出すことに、彼の音楽家としての大きな懐を感じる。(神谷洵平/赤い靴)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】マーク・シュリアナ(d、per)、クリス・モリッシー(b)、シャイ・マエストロ(p)、ジェイソン・リグビー(sax、per)
発売元:AGATE 品番:AGIP-3783 発売日:2023.09.15
d:ジーン・コイ
全編通して親しみやすく
ライヴ映えする楽曲が目白押し
上原ひろみの新バンド(あえてそう呼ばせていただく)なんだから、やはり多少は身構えて対峙せざるを得ない。何て言うのが杞憂も杞憂。最終トラックであるM9(日本盤はボーナス・トラックあり)のタイトルが「Bonus Stage」で、曲調はもうまんま某夢の国のウエスタンランドあたりで聴かれるヤツであったからだ。バンド名をそのまま冠したコミカルなビョンビョン・シンセがリードするM2も然りであったのだが、まさかこんなにも全編通して親しみやすく、“楽しい”方向性だとは。M5での爆発力あるキメと音量を極めて抑えたドラム・ソロの対比や、M8でのトランペットとピアノが交錯する展開など、ライヴ映えする楽曲が目白押し。これはツアー、行かねば!(庄村聡泰)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ジーン・コイ(d)、上原ひろみ(p、key)、アドリアン・フェロー(b)、アダム・オファリル(tp)、オリー・ロックバーガー(vo)
発売元:ユニバーサル 品番:UCCO-1240 発売日:2023.09.06
d:イアン・トーマス/山木秀夫
アナログ・ビートの柱として本作を支える
山木秀夫氏の懐の深いプレイに熱くなる
シリーズとして第7作目。“GUITARHYTHM”という言葉に込められた布袋流のギター美学は、第1作目からブレることなく今作へとつながっている。「Highway Star」のカヴァーでは、オリジナルをリスペクトしつつデジタル・ビートで構築するアレンジが秀逸。今、布袋が王道に取り組む意味と価値とが存分に伝わってこよう。その逆に、アナログ・ビートの柱として本作を支えるのが山木秀夫氏。氏は『GUITARHYTHMⅡ』(1991年)のメイン・ドラマーとしても素晴らしいプレイを残していたが、その32年後にもアグレッシヴかつ懐の深いプレイで支えていく姿に熱くなる。個人的にはM6「Domino」のドラミングに最敬礼。(山本雄一/RCCドラムスクール)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】イアン・トーマス/山木秀夫(d)、布袋寅泰(vo、g、key、etc.)、亀田誠治/KenKen/ジェリー・ミーハン(b)、ニールX(g)、奥野真哉(key)、岸 利至/中野雅之(programming、etc.)、アイナ・ジ・エンド(vo)、田口 亮/田口 環(cho)、他
発売元:ユニバーサル 品番:TYCT-60215 発売日:2023.09.13
d:白根賢一
プログラミングとリアルを織り交ぜた
白根氏のドラムがソリッドで脳にビシビシ響く
FUJI ROCK FESTIVAL ’21のWHITE STAGEにて「非常事態宣言中のMETAFIVE」として、圧巻のプレイを見せつけた4人のパーマネント・バンドとしてのフル・アルバム。フジのライヴで魅せたその凄まじい怒りとやるせなさのパワー、そしてパンク〜NW〜テクノのアイロニーとユーモアをDNAに持つ4人が繰り出すサウンドがカッコ良くないワケがない。ミニマルなシークエンスと、砂原氏による独特なロー・エンドの処理が部屋を揺らし、プログラミングとリアルを織り交ぜた白根氏のドラムがソリッドで脳にビシビシ響く。レオ氏の鋭いリリックとパンキッシュなヴォーカル、永井氏の浮遊するギター、すべてが独特の世界観として聴き手に押し寄せてくる。このTEST、受け取れるかな? そしてドラム・マガジンなので一言。「ケンイチ先輩、カッコいいっす!」(土田“つっちー”嘉範)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】白根賢一(d、vo、programming)、永井聖一(g、vo、programming)、砂原良徳(syn、programming)、LEO今井(vo、programming)
発売元:ワーナー 品番:WPCL-13490 発売日:2023.07.12
d:古田たかし
聴き手に曲の映像を喚起させるような音色と
ビートを選ぶセンスに耳も喜ぶ
最初に言ってしまうと本当にすごかったです。“空耳”の安斎さんを知る人は、あのユルい感じで旧知のバンド仲間である古田さんと“バカボンのパパ”などをテーマに楽しんで音楽を、なんて思う方もいそうですが、その奥に広がる音楽的なセンスに、“え、こんな音の積み方!? え、ココも!? え、ここまで!?”と耳を止めずにはいられないでしょう。とにかく聴き手にその曲独自の映像を喚起させるような音色(楽器や声、エフェクト含む)とビートを選ぶセンスに私の耳も喜んでいました。そしてその音色の積み方、編み方、ヒネり具合いまで、実に丁寧で実に巧み(各曲について言いたい!)。これが古田さんのマルチ・インストゥルメンタリスト、作・編曲家、ヴォーカリストとしての実力な~のだ!(村田誠二)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】古田たかし(d、vo、etc.)、安齋 肇(vo、etc.)、佐川秀文(g、vo)
発売元:Turfull Studio Label 品番:TRJC-1137 発売日:2023.09.06
d:Tetsu
“こう来たか!”という驚きが詰め込まれつつ
楽曲の流れを邪魔しないTetsuのドラム
再結成から16年、コロナ禍を経て4年ぶりとなる10枚目のオリジナル・アルバム。V系と呼ばれるシーンでは古株的存在の彼らゆえ、刺激的なフレーズ満載のアグレッシヴな音楽を想像するかもしれないが、実は幅広いリスナーが抵抗なく聴ける風通しの良さがある。それを象徴するのがTetsuのドラムで、世界屈指の要塞キットで音楽的なプレイを聴かせる手腕にはいつも舌を巻く。ドラマー的視点で“こう来たか!”という驚きが随所に詰め込まれているにも関わらず、楽曲の流れを決して邪魔しない。豊かな曲調とアレンジが揃った今作を聴いて、そのことをあらためて強く感じた。サブスク時代の今こそ、これまで縁のなかった人も耳を傾けてみてほしいと思う。(西本 勲)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】Tetsu(d)、SEELA(b)、CIPHER(g)、kyo(vo)
発売元:ワーナー 品番:WPCL-13471 発売日:2023.09.13
d:フロ・モーニエ
生音のデカさから来る本物の熱量こそが
メタル・ミュージックの醍醐味
2枚のEPを挟んではいるものの、フル・アルバムとしては11年ぶりにデス・メタル界の暴虐王が帰ってきた! 複雑なリズム変化や予測不能な独特過ぎる曲構成の妙はもちろん健在で、今作では現代ネット社会の闇を旧約聖書の物語に準えて描くコンセプトがあるという。ブラスト・ビートと高速ツーバスを主体としたプレイ・スタイルはマシンのように叩くべし……そんな固定観念を持つ人にこそ聴いてほしいのがバンドの核を成すフロ・モーニエの“有機的な”超絶ドラミング。一筋縄ではいかないフレージング、そして生音のデカさから来る本物の熱量こそが、日頃の鬱憤をも一瞬で吹き飛ばしてくれるようなメタル・ミュージックの醍醐味を味わわせてくれるのだ!(岡安鋼樹)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】フロ・モーニエ(d)、オリ・ピナード(b)、クリスチャン・ドナルドソン(g)、マット・マギャキー(vo)
発売元:ビクター 品番:VICP-65616 発売日:2023.09.08
d:江島啓一
ミニマムかつ客観性を感じさせる世界観
最低限で構成されたリズム・アレンジも秀逸
2015年にリリースされたカップリング&リミックス集の第二弾。CD1は山口一郎以外の4名によるセルフ・リアレンジ集で『Rearrange Package』収録曲に新たに楽曲を加えた全16曲。原曲の持つイメージから逸脱し過ぎることのないミニマムかつ客観性を感じさせるアレンジは、山口の創る世界観を4名がどのように解釈しているかが垣間見えて興味深い。ドラムは全編通して打ち込みが中心だがM7、M11、M12などで生ドラム的アプローチを聴くことができ、必要最低限の音数で構成された江島のリズム・アレンジも秀逸。CD2は国内外のアーティスト達によるリミックス集となっている。慣れ親しんだ楽曲にも一味違ったアレンジが加わり、サカナクションというバンドの縁の部分に触れられるような作品となっている。(東 祥太郎/リズム&ドラム・マガジン編集部)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】江島啓一(d)、草刈愛美(b)、岩寺基晴(g)、岡崎英美(key)、山口一郎(vo、g)
発売元:ビクター 品番:VICL-65865〜6 発売日:2023.09.06
d:高浦“suzzy”充孝
歌心に富んだドラミングから
高浦のポテンシャルの高さがうかがえる
“エモい”歌詞とメロディで、現代を象徴するバンドの1つとも言えるマカロニえんぴつ。レギュラー・サポートを務める高浦のドラミングは、緻密に練られたビート、オリジナリティ溢れるも違和感のない合いの手、楽曲の世界観を印象づけるドラム・サウンドなど、今作でも歌心に富んだアプローチばかり。メロコア、ムード歌謡、EDMなど、幅広い曲調への対応力はもちろん、ビート・プログラミングやパーカッションにも挑戦したそうで、高浦のポテンシャルの高さがうかがえる。M1はそれが顕著に表れており、打ち込みと生ドラムが同居し、練習パッドを叩く音をそのまま録音したようなギミックも一興。音源での面白さもさることながら、代表曲「なんでもないよ、」のように、ライヴで化けそうな期待感も詰まった1曲。(笹 京佑/リズム&ドラム・マガジン編集部)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】高浦“suzzy”充孝(d)、高野賢也(b)、田辺由明(g)、長谷川大喜(key)、はっとり(vo、g)
発売元:トイズファクトリー 品番:TFCC-81042 発売日:2023.08.30