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芳垣安洋が語るトニー・アレン Part.2 トニーの足跡を辿る14選

活動初期から最新版まで
14枚で振り返るトニーの変遷

アフロ・ビートの偉大なる創始者、トニー・アレンの1周忌を悼み、ドラマガ2020年7月号にて掲載された追悼特集の一部をWEBで公開! ここでは彼を敬愛する芳垣安洋が厳選した14枚の名盤を、解説と共にお届けしていく。

◎解説:芳垣安洋[Orquesta Libre、On The Mountain、他]

Koola Lobitos『The‘ 69 Los Angeles Sessions』(1969年発表)

フェラ・クティが60年代にロンドンで立ち上げた、ハイライフ、R&B、ジャズを混合させたバンドが母体。トニー加入後、65年からクーラ・ロビトスと名を変え、活動を共にする。演奏は69年のアメリカ長期ツアーのもの。この時期にアメリカでファンクを身近に感じ、思想的にも黒人解放運動などに影響を受け、徐々に音楽の表現がシンプルにストレートに変化していく。リズムはハイハットのオープン/クローズを使った2ビート的な要素と細かいアップ・ビートで構成される。

Fela Kuti & Africa 70『Confusion』(1974年発表)

言わずと知れたアフロ・ビートを生み出したバンド。2人は多くの支持を得ようと、リズムをよりわかりやすく力強く変化させていく。70年代、トニーはアフリカ70のアルバムすべてに参加しているので、クーラ・ロビトスを含め15~6年間の基本のサウンドやリズムの変化を聴き比べてみるのも面白い。

『Confusion』は全1曲の壮大なアルバム。前半は即興的に、フェラのピアノとトニーのドラムによる自由な掛け合いから始まり、リズムが組み上がっていく様、特にハイハットなどのアクセントの移動やトニーのスネアに合わせて次々にメンバーが加わってくる様子に注目すべし。アフロ・ビートにおける進行の大まかな筋書きは、この時期に出来上がったのだ、ということがよくわかる作品です。

Fela Kuti & Africa 70『Zombie』(1977年発表)

政治的発言によりフェラのコミューンが軍隊の襲撃を受けたことに抗議する目的で作られたアルバム『Zombie』は、最も著名な作品の1つ。タイトル曲はハイライフ的なリズムと8ビートを折衷したようなハイ・スピードのリズムで、ジェームス・ブラウンなどのファンクの影響がかなり大きいと思われる。実際トニーは、JBに「一緒にやろうと誘ってもらいたかった」と語っている。スネアの一打でブレイク、そして歌と共にカットインを繰り返しながらどんどんとテンションを上げていく。

Fela Kuti & Africa 70『Unknown Soldier』(1979年発表)

『Unknown Soldier』はアフリカ70在籍最後の時期の作品。ファンク、レゲエ、ナイヤビンギなどの影響が強く感じられる。ゆったりめのずっしりしたリズムと隙間のあるベース・ラインが特徴的で、以前のサウンドと異なった印象もある。このあとに契約などの問題がこじれてトニーはバンドを去ってしまう。

Tony Allen & Afrika 70『Jealousy』(1975年発表)

70年代にフェラ・クティがプロデュースしてアフリカ70を母体としたトニーのリーダー・アルバムが作られている。基本は同じようなサウンドなのだが、トニーのソロ的なパートがあったり、トニーの曲であったりと趣が少し違うところもあるので聴き比べてほしい。

アフロ・ビート初期に当たるアルバム、『Jealousy』では、フェラ・クティもアレンジやサックス、オルガンなど、いつものバンドでの立ち位置で参加していて、いかに彼が全力で盟友トニーを売り出そうとしていたかがよくわかります。

Tony Allen & Afrika 70『Progress』(1976年発表)

『Progress』はアナログ・レコードの片面1曲がヴォーカル・フィーチャー曲。B面に当たるインスト曲、「Afro-Disco Beat」では、ハイハットやマラカスでアタマにアクセント、クラベスがウラになっている、という通常のアフロ・ビートと逆のリズムから始まり、徐々に変化していく様がよくわかる。スネアがアタマを打ち、2・4拍にバス・ドラムがアクセントをつけるリズムから、徐々に1・3拍に移動してゆく。トニーのソロ掛け合いパートもあり、のちにリミックスが作られる。

Tony Allen & Afrika 70『No Accommodation for Lagos』(1979年発表)

『No Accommodation for Lagos』は、バンド在籍後期の演奏で、バンド自体も熟し、熱く安定したアフロ・ビートが出来上がっている。このアルバムはトニーが作編曲を担当し、彼の色が現れ始めた作品としての評価が大きい。長い時間をかけてゆったりと盛り上がっていくバンド、ミニマルに刻み続けられるギター、ベース、パーカッション群の中で時折アクセントをつけたり、フィルインを入れながらホーン・セクションを煽っていくトニーのドラムが堪能できる。これらをコンパイルした3枚組の『Afro-Disco Beat』という作品も出ていて、さらには最近リミックス仕様のものもあるようです。

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