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【R.I.P.】メンフィス・サウンドの最重要ドラマー、ハワード・グライムス急逝

  • Photo:Joe Scarnici/Getty Images

テネシー州メンフィスの名門レーベル、Hi Recordsのハウス・バンド=ハイ・リズム・セクションの一員として、アル・グリーン、アン・ピーブルズらの傑作を彩った名ドラマー、ハワード・グライムス(Howard Grimes)が2月12日にこの世を去った。享年80歳。

ハワード・グライムスは1941年生まれ。テネシー州メンフィス出身。彼がドラムに興味を持ったのはテレビで流れていたジーン・クルーパやコージー・コールのドラム・ソロを見たことがきっかけとのこと。10代前半の頃に、メンフィス・ソウルの立役者となるルーファス・トーマスにその才能を見出され、スタジオ・レコーディングに参加。若くしてカーラ&ルーファス・トーマスの「Cause I Love You」などでプレイしている。

ハワード・グライムスの名が世界に知られるようになったのは、1957年にメンフィスで設立されたレーベル、ハイ・レコードの黄金期である60〜70年代に発表された作品の数々だろう。プロデューサーであったウィリー・ミッチェルに認められ、彼が所有するロイヤル・スタジオのハウス・ドラマーに抜擢。ホッジス兄弟と共に“ハイ・リズム・セクション”のメンバーとして、アル・グリーンの『Let’s Stay Together』、アン・ピーブルス『I Can’t Stand The Rain』などのレコーディングを担当。それらが大ヒットを記録すると、彼らにも注目が集まり、75年にはハイ・リズム・セクションとして『On The Loose』をリリースすることとなった。79年のウィリー移籍に伴い、衰退したハイ・レコードだが、ハワードはその後も同レーベルを支えたシル・ジョンソンやオーティス・クレイらのサポートとして共に活動していたという。

近年はスティーヴ・ジョーダンが21世紀の“HI-RHYTHM”を再建し、ボズ・スキャッグスやロバート・クレイの作品をロイヤル・スタジオでレコーディング。ハワードにも再びスポットが当たり、19年にはハーモニカ奏者&シンガー・ソングライターであるタッド・ロビンソンの『Real Street』、20年にはアン・ピーブルスの夫であるドン・ブライアントの『You Make Me Feel』のレコーディングに全面参加。リヴィング・レジェンドとして健在ぶりを発揮していただけに、今回の訃報は残念で仕方ない。

ハワードを敬愛する沼澤 尚氏のコメントは下記の通り。

またしても音楽 &ドラムの歴史を築き上げてきた重要すぎるオリジネイターを失ってしまった……メンフィス・サウンド/メンフィス・グルーヴ/メンフィス・ドラム・サウンドの創始者……この真の偉人が産み出した歴史的/驚異的名演の数々……そして流行り廃りなどとはまったく無縁の奇跡的な名演の数々……間違いなくこれから先、永遠に語り継がれていきます(沼澤 尚)。

心よりご冥福をお祈りいたします。