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    【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯9 〜DW-9000 Series Foot Pedal〜

    • Photo & Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    今月の逸品 【DW-9000

    肝心のアクションとサウンドは、セッティングで大きく変化します。DW-9000に関する検索のサジェストで“踏みにくい”という候補が出てきてしまうのは、このセッティングの自由度のせいだと思われます。調整機構があるペダル全般に言えますが、そのペダルの基本がどこにあるかを掴むことが重要です。参考までに、アタックとボディのバランスに優れた、太い音色が得やすいセッティングの例を挙げてみます。

    ビーターのアングルは調整幅の真ん中にします。45度よりやや手前に傾斜するかもしれませんが、ボードの自重などで、結果的に扱いやすい振り幅に収まる傾向があります。

    ビーターの長さは、エンド側がカムの直径を超えない程度に、気持ち短めに固定します。DWの純正ビーターは比較的重量があるため、重さを感じる主な要因になりがちです。たとえ短くしても、ヘッド自体に質量があるため、音色に対しての効果は十分得られる印象です。

    スプリングは好みのテンションで構いません。個人的には、滑らかさの恩恵を利用して、足の動きにフィットする程度に張り気味にしたセッティングが好みですが、奏者自身の足自体の重さによっても大きく印象が異なるはずなので、ここは自分の体格にあったテンションを見つけるのが良いと思います。

    カムの形状は直径を最も小さくした、ターボ系の側に振り切った状態にします。無段階が売りではありますが、この状態でも純粋なターボとは一味違ったアクションと音色なので、まずはこれを試してみてください。無段階であることを利用して、音色とアクションの微調整の幅として利用するのも良いかもしれません。

    主にフット・ボード・アングルを決めるチェーンの長さは、最も短い状態から、調整幅の中央あたりまでの範囲で、フィーリングを確認しながら決めます。ここが調整の肝で、前項のカムの調整機構と深く関係しています。カムの直径を大きい方向に変化させると、自ずとチェーンが引っ張られて、フットボードの傾斜は急になります。DW-9000は、カムの調整幅に対して、それをカヴァーできるだけのチェーンの長さの調整幅が設けられているので、カムの状態に応じてその中心が変動します。それを踏まえて、前述の範囲でポジションを探すと、適切な結果が得やすいように感じます。

    そして“フィーリングを確認しながら”という漠然とした部分について、一つの視点を示します。

    みなさんそれぞれに踏みやすさなど、いろいろな基準があると思いますが、クローズで踏み切ったときのビーターの振る舞いと、音色に着目いただくのがオススメです。一番短い状態でもクイックな反応で意外と踏みやすいのですが、少しだけ長くすると、体重のかかり方が変化するのか、低域の出方がガラッと変わります。

    音色と感触の落ち着く場所を見つけたら、最後にフープ・クランプの締めつけ具合いを調整します。DW-9000はアンダープレートの面積がとても大きく、各所の遊びがまったくと言っていいほどないため、力が逃げる部分が足とヘッドの柔軟性の幅くらいしかありません。そのため、チューニングと奏法によっては、クランプを強く締めすぎた状態だと、アタックが強調されて、低域が出にくくなります。とはいえ、緩めすぎて過度にブーミーな低域が出ている状態は、キレの悪さとも感じられる場合もあります。楽器、会場、編成、楽曲などを考慮しながら、仕上げのプロセスとして意識しておくと良いと思います。

    少し長くなりましたが、DW-9000は扱い方さえわかれば、優れた要素のあるキック・ペダルです。筆者も2022年現在、Tiを愛用しており、今回の執筆中にデジマート上で見つけたデッドストックのPBや、為替の影響で割安感の強いRetro Limitedも気になっています。

    DW-9000に限らず、調整機能の関係性を理解すれば、自在に扱えるペダルも増えます。DW社50周年のこのタイミングで、ぜひチェックしてみてください。


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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