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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯9 〜DW-9000 Series Food Pedal〜

  • Photo & Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第9回DW-9000 Series Food Pedal

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。第9回目にして初めてフット・ペダルにフォーカス。ロング・セラー・アイテムをセッティング方法を含めて深堀りします!

いつもご覧いただき、ありがとうございます! 今回は、キック・ペダルにフォーカスして参ります。スティックと同等にドラマーに最も近い機材ということもあって、最終的には各々好みの問題という面が強く、なかなか紹介するきっかけがなかったのですが、機種指名でリクエストをいただいことと、そのモデルが節目としてちょうど良いタイミングを迎えたので、満を持しての登板です。

今月の逸品は、DW-9000です。

今月の逸品 【DW-9000

製品バリエーションの整理をしてから、やや複雑なセッティング出しのヒントを書いてみますので、すでに所有されている方も、ぜひご自身のペダルを確認しながらお読みいただければと存じます。

まず、簡単に歴史を辿っていきます。2002年に原型となるDW-9000 Titaniumが500台の数量限定で販売され、翌2003年にフット・ボード素材の変更とカムの調整機能が追加されたDW-9000 PBが登場。2013年に5000シリーズのDelta4相当のアップデートが施されたDW-9000 2012が発売され、現在の現行機種として販売されています。実質20周年ということで、読者の皆様の中には、ドラムを始めた頃にはすでに存在していたロングセラー・モデル、という認識の方も少なくないのではないでしょうか。

著者所有のDW-9000 Titanium

それなりに歴史があるので、中古品の流通量も多いのですが、上記の分類の中でもさらに細かなマイナーチェンジを繰り返しており、名称の呼び分けも曖昧な状態のようです。

そこで、新品と中古の価格を比較できるデジマートという媒体の特性を踏まえて、大きく三期に分けて整理してみます。個人研究の延長レベルで、公式な呼び名ではありませんが、経緯に明るい方であればある程度話が通じることを確認しています。興味がある方は詳しく調べてみるのも良いかもしれませんね。

最初期のチタン・モデル、ここでは“Ti”としますが、これは簡単に見分けられます。ビーター以外が銀一色でまとめられており、フットボードが板状のチタン製で、Titanium/USAの刻印があります。目に見えて“しなる”フットボードに由来して、低域の充実した独特な音色ですが、流通量はごく限られているので、今回は詳細な解説を割愛します。

続いて、9000ペダルとしての機能が揃った、二期目に相当するモデルがPBです。Tiにはなかった機構として、無段階に調整が可能なInfinite Adjustable Camを搭載し、新しいデザインの硬質なダイキャスト・フット・ボードが採用されました。フープ・クランプは金属が直接触れる伝統的なスタイルで、音色や信頼性の観点で、現行品よりこちらを好む方もいるかもしれません。カムの調整機構については、雌ネジが現行品に比べてややデリケートなので、コンディションと取り扱いには注意したほうが良いでしょう。

最後に、2013年にメジャー・アップデートが行われた第三期、現行品です。PB時代にもビーター・ホルダーのボルトなど、細かな改修は続けられていましたが、この現行品になってさらに完成度が高まりました。Tri-Pivot Toe Clampはセッティングの位置出しが簡単で、締めつけ具合いの調整もしやすいので、個人的には好みの仕様です。ただし、部品が取れてしまったという報告がないわけではないので、多少の注意は必要かもしれません。カムの調整機構はしっかりと対策が施され、ほぼノントラブルになりましたが、後発MFGMCDとは異なり、無段階ゆえに再現性に乏しいので、中間位置を用いる場合はカムに位置を記入しておくなどの対策が必要かもしれません。

なお、このモデルをベースとした、Tiの外観にそっくりなDW-9000 Retro Limitedが日本企画で100台ほど存在しています。

DW-9000 RETRO LIMITED

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