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ドラム初心者必見! “初めてのMyスネア”におすすめの1台【連載|博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯32】

  • Text:Takuya Yamamoto
  • illustration:Yu Shiozaki

第32回ドラム初心者必見! “初めてのMyスネア”におすすめの1台

ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は、初めてのスネアとして購入するのにおすすめのモデルをピックアップ!

いつもお読みいただき、ありがとうございます! 新年度が始まって、新たに楽器を始めた方も多いのではないでしょうか。

ドラムは、他の楽器と比べて少し特殊な側面を持っています。音量や運搬の都合、学校などの備品としての存在、レンタル・スタジオやライヴ・ハウスの機材事情など、さまざまな理由により“楽器そのものを持たずに始められる”ことが多い、めずらしい楽器です。そんなわけで、まずはスティックと練習台を買って、状況によってはペダル、そしてようやく楽器本体へ……という流れを辿った方も少なくないと思います。

“楽器を始めるからには、楽器を買おう”という方や、“そろそろスネアくらいは自分の楽器を持ってみようか……”といった方に向けて、はじめの1台!という切り口でピックアップした楽器を紹介してみたいと思います。

今月の逸品 【TAMA そうる透プロデュース・モデル=NSS1455】

TAMAから販売されている、そうる透氏の“プロデュース・モデル”です。

アーティストの名前が冠されている場合、多くは“シグネチャー・モデル”という位置づけで製品化され、本人が使用するものとまったく同じか、それに準ずる仕様で販売されますが、TAMAではSignature Snare Drumsとは別枠で、Artist Model Snare Drumsとしてこの楽器を取り扱っています。

このモデルの最大の特徴は、内側にシリコンが充填されたエッジ部です。金属製のシェルには特有のオーバー・トーンが存在しますが、それをコントロールしようとすると、ある程度のスキルが求められます。

しかし、この特殊な仕様により、その耳につきやすい成分が適度に抑制されており、結果としてヘッドやスナッピーの音にフォーカスしやすく、チューニングの基礎を学ぶ上でも優れた性質になっています。

もちろん、このような加工を施さない、スティールらしい音色を求める方もいらっしゃることでしょう。そのような方には、同じく価格と品質のバランスが優れたモデルとして、PearlのStandard Steel(SS1455N)や、YamahaのStage Custom Steel Snare Drums(SSS1455)なども検討していただくと良いかもしれません。

▲Pearl Standard Steel(SS1455N)

Yamaha Stage Custom Steel Snare Drums(SSS1455)

スティールは、リーズナブルながら高い剛性を誇り、加工性も良好なため、ヘッドの張力やショットの衝撃を支える必要があるドラムにとって優れた要素があります。

金属シェルにおいて、音色の観点では、古くから親しまれてきたブラスやアルミ、近年ではブロンズやコパーなどにも高い人気がありますが、スティールもその独特な高域の成分、音抜けの良さなどで、根強い人気があります。

この記事を読んでくださっている皆さまの中には、ある程度の経験を積んできて、自分の好みの素材がはっきりしている方もいらっしゃるかと思います。気持ち良く演奏するためには、好みも重要です。しかし、材質や厚みなどのスペックによって生じるキャラクターの違いは、うまく使いこなしさえすれば、演奏そのものに集中するための助けになる場合もあります。

このモデルは、スティールらしさが残されつつ、かといってスティール過ぎない、絶妙な仕上がりになっています。苦手意識があった方でも試していただく価値があると思うので、この機会にぜひチェックしてみてください。

初めての1台選びは、演奏へのモチベーションや今後の成長にも大きく影響する大切な機会です。自分に合った1台に出会う参考になれば幸いです。

■博士がまだまだ紹介したい関連モデル!

”初めてのスネア”をテーマに、今回紹介したスネア・ドラムを取り上げた理由や、そのエピソードを掘り下げる過程で、“ぜひこのタイミングで紹介したい!”という楽器が出てきてしまいました。予定文字数をオーバーしてしまうので、カットしようとも思いましたが、せっかくなので載せてもらうことにしました。

プロデュース・モデルという独特なポジションのNSS1455ですが、似た位置づけの楽器としては、GretschUSA Brooklyn Standard Snare Drum Collaboration with Mike Johnston(GAS5514-ST)や、Noble & CooleyUlysses Owens Jr. Signature ‘U’ Drum(FGHOS145.5C-USS)などがあります。前者は、私が昨年、リットーミュージックにて『That Great GRETSCH DRUMS』を上梓したタイミングで、1つの記念として入手しました。

▲山本拓矢 著
『That Great GRETSCH DRUMS』

また、本文中で触れた“金属特有のオーバー・トーン”に対して、例外的な振る舞いをする楽器達が存在します。

パティーナ加工やカバリングなどの手段、チタンのようなやや特殊な素材、いろいろと思いつきはしますが、TAMAMASTERCRAFT “THE BELL BRASS” SNARE DRUM(BB-156)や、SONORArtist Series “BRONZE”(AS-1406BRB)のような、3mm厚のキャスト・ブロンズを用いたものが、その筆頭でしょうか。

▲TAMA MASTERCRAFT “THE BELL BRASS” SNARE DRUM
(BB-156)

SONOR Artist Series “BRONZE”
(AS-1406BRB)

今回の厚すぎないスティールを通じて、金属シェルの典型的な振る舞いを知ることで、さまざまな素材の類似性や相違点が察知できるようになります。マイ・スネアを手に入れて、音や感触を覚えたら、いろいろな楽器に触れてみてください。ステージに応じて、さまざまな発見があるはずです。

以上、最後までお付き合いありがとうございました。

Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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