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    【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯23〜シンバル・ケース〜

    • Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    第23回シンバル・ケース

    ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。2023年ラストとなる今回は、ドラマー必携のアイテムであるシンバル・ケースにフォーカスします!

    いつもお読みいただき、ありがとうございます! 早速ですが、今回はシンバル・ケースをご紹介してまいります。スネア・ドラムは、ケースが付属することも少なくありませんが、シンバルはいくつかの例外もありますが、基本的には何らかのケースが必要になります。楽器ケースは選ぶのも勧めるのも、大変難しいジャンルの製品だと思います。私自身も数えきれないケースを購入して、時に失敗しながら、たくさんの学びを得てきました。

    まず結論を申し上げると、完璧なケースは存在しません。

    単純な話ですが、例えば、国際線で荷物として預ける際に妥当なハード・ケースを、電車と徒歩で一時間の距離にあるスタジオまで手に持って電車で移動するのは、合理的とは言えません。また、同じような耐久性を備えた、リュック・タイプのソフト・ケース同士で比較するような場合でも、出し入れがしやすく、使い勝手が良いものと、多少不便でも、保護が重視されていて、保管にも適したものなど、それぞれに強みがあります。目的に合わせての使い分けを含め、自分が何を求めるかを理解して、選択することが大切です。

    以上を踏まえて、1つは持っておいて損は無い、あらゆるドラマーにお勧めできる要素があるケースがこちらです。

    今月の逸品 ① 【Protection Racket 6020R

    筆者は旧モデルの24インチ用=6021(内寸62cm)を所有していますが、近年サイズ変更があり、内寸で約5cm(≒2インチ)大型化。チャイナ・シンバルなどがさらに収納しやすくなったそうで、新たに登場した22インチ用の6020(内寸62cm)が直系の後継であると判断して、こちらをピックアップしました。だいぶ前のことですが、たまたま集まった4人のドラマーが、全員これを背負っていた、ということすらあったほどで、一時期は大変高い人気を誇っていたように思います。

    Protection Racketのソフト・ケースはシンプルな作りで耐久性に優れており、価格と汎用性の観点から、今でも十分おすすめできます。保護用のフリース・パッドが取り外せるため、そのままでの使用はもちろん、取り去ってしまい、ひと回り小さいケースを中に仕込んで二枚重ねとすれば、国内線であれば、預け入れも十分検討の余地が生まれます(注:自己責任でお願いします)。

    シンバルは、その重さと形状から、ケースにかかる負荷が大きい部類に入ります。たとえきちんとした有名ブランドの製品でも、数回の使用で壊れてしまったケースもありました。その点、Protection Racketの生地と縫製は非常に頑丈で、これまでに十数年使用してきた中でも、中身を入れすぎたハードウェア・ケース以外は壊れたことがありません。

    基本的に壊れないので、買い替え時がわからず、いつから持っているかわからない物も多数あるほどです。収納と運搬に特化しているので、決して使い勝手が良いとは思いませんが、迷ったときはこれだと思います。

    次点で、筆者が最も数多く所有しているケースも紹介しておきます。

    今月の逸品 ② 【MONO M80シンバルケース/22″ブラック

    これと同じものを4つ、M80としては24インチ用を含めると合計で5つ、所有して運用しています。頑丈さと、出し入れのしやすさから、多数のシンバルを持ち込んで、頻繁に交換する必要が生じる、レコーディングの現場を中心に活躍しています。

    絶妙な位置にハイハット・クラッチの収納ポケットがついていたり、仕切りの構造や、ハンドルの取りつけ方法など、使い勝手の点では完璧に近いケースですが、内張に用いられている素材の都合上、楽器の入れっぱなしには注意が必要であったり、タイトな作りゆえに、ケース側と楽器側、それぞれの個体差の影響で22”が入れにくい場合があるため、筆頭でのお勧めには至りませんでした。

    以上2品が、幅広くおすすめできる要素のあるケースです。

    なお、デジマート上では、シンバルのケースはドラムのカテゴリーではなく、ケースのカテゴリーの中に存在しています(こちら)。

    さまざまなデザインのものが登場してきているので、自身のファッション・スタイルを含めて選択することもできるでしょう。筆者も、ケースへのこだわりが高じて、カバン作家の方に特注してしまいました。音楽の道は果てしなく「楽器を磨いてないで、腕を磨け」といったような乱暴な言葉にも含蓄がある業界なので、見てくればかりを気にするのは、決して褒められたことではないと思いますが、人前で演奏する以上、人と共有してこそ、とも思います。無頓着なのも、割り切るのも、人それぞれではありますが、演奏に集中できるツールであれば、比較的多くの演奏者の琴線に触れるのではないでしょうか。

    良いものが売れれば、より良いものが開発される可能性が高まります。楽器ケースというと、音楽そのものには直結しないように感じられるかもしれませんが、自分にあった道具は、演奏前後の様々なストレスを低減させるはずです。ここまでお読みいただけたのであれば、ぜひこの機会に、さまざまなケースをチェックしてみてください。


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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