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    【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯18〜Pearl Joey Jordison Signature Snare Drums〜

    • Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    第18回Pearl Joey Jordison Signature Snare Drums

    ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回は13インチ・スネアのロング・セラー・アイテムを掘り下げていきます!

    いつもお読みいただき、ありがとうございます! 先月は急遽お休みをいただきましたが、この連載とは別枠で、UFiPのシンバル2シリーズをレビューした記事(こちら)が公開されておりますので、ぜひチェックしてみてください!

    さて、今月は13インチの深胴スネアに注目していきます。

    スネア・ドラムと言えば、現代では14インチがデファクト・スタンダードになっていますが、100年ほど前には15インチが14インチと並んでカタログに掲載されていた時期もあり、かならず14インチでなくてはならないものではありません。

    これは、研究未満の体感の話ですが、2000年前後から一時期、13インチの深胴スネアのブームがありました。その頃からバリエーションが大幅に増加して、2023年現在ではスタンダードの仲間入りを果たした感があります。そんな中で、明確な個性をもち、ロング・セラーになっている代表格として、PearlのJJ1365Nにスポットをあててみたいと思います。

    今月の逸品 【Pearl JJ1365N

    JJ1365N/13″×6.5″

    まず目をひくのは、フープやラグといった、クローム・メッキ仕上げが定石となっているパーツ類が、すべて真っ黒に塗り尽くされている、独特な外観。かつてSlipKnoTに在籍したJoey Jordisonのシグネチャー・モデルということで、バンドと本人のイメージを反映させた仕様です。発売当初はバンドのロゴ入りでしたが、Joeyがバンドを離れたことで、現在の漆黒の仕様になりました。見逃されがちなポイントですが、この仕様は音にも少なからず影響しています。

    シェル材はスティールということで、いわゆるピーキーな高域が生じがちな材ではありますが、シェルの塗装に加え、このパーツ類の塗装の効果により、高域がマスキングされることで、相対的に中低域が前面に押し出され、音色の太さにつながっています。

    13インチに対する8つのロング・ラグと、シェル材による剛性由来の輪郭、深さ由来の低域と相まって、スチールでありながら、単なるスチールではない、扱いやすい方向の個性を獲得しています。このパーツ塗装による音色の変化は、このスネアに限ったものではなく、クロームやニッケルといったメッキの差以上に明快です。

    楽器にはシーンやジャンルなどいろいろな使い方があると思いますが、この傾向は、音色のピークとPA環境をふまえたセッティングやチューニングを意識して使いこなすことが重要です。一見ハードな外観ながら、意図せずまろやかなトーンになってしまうことも考えられるので、客席に届いている音をイメージしながら、楽器に向き合うと良い結果が得られるでしょう。

    13インチ・スネアの特徴を考察

    ここで13インチという口径について、少しだけ特徴を説明してみます。まず顕著な変化はピッチです。口径が小さくなったぶん、自ずとピッチが上がるので、無理なテンションをかけずとも、14インチにおけるハイピッチ帯まで容易に上げられます。人数や構成などバンドの編成や、全体の音量にもよりますが、スネアはある程度ピッチを上げた方が分離してヌケてくるので、高めのピッチで運用しやすい点はメリットになり得ます。

    音量はわずかに小さくなる傾向があります。ただし、多くの13インチ・モデルは、8ないし16ラグが採用されており、剛性と質量を稼ぐことで、この差を小さくする方向で設計されています。例外としてLudwigの名器であるjazz comboのように、6ラグ&深さ3インチというライト&クイックな傾向の楽器もありますが、13×3のBlack BeautyやBronze Piccoloは8ラグであり、14の延長で使えるように意識されている楽器が多い印象です。

    現行には少ないタイプなので、ここでは例外としましたが、軽めの楽器に関しては、ピッチがあがり、音量が小さくなるということで、ある程度テンションをかけてピッチを上げても音量が大きくなりすぎない、という点もメリットの1つでしょう。また、打面が狭くなるので、ブラシワークに関しては多少難易度が上がりますが、慣れの問題の範疇だと考えています。

    リム・クリック(クロス・リム、サイド・スティック、クローズド・リムショット)も多少難しくなりますが、12インチほどではありません。状況によっては、Groove-Wedgeや、X-CLICKなどのアクセサリーを試してみても良いかもしれません。

    スネア・ワイヤーや専用ヘッド、ケースなど、14インチに比べると選択肢が少ない部分もありますが、口径の差による音色の変化は、それを補って余りある魅力です。すでに数台の14インチを持っている場合、口径違いのスネアが1台あると対応できる幅が広がります。

    JJ1365Nは、価格の面でも大きなアドバンテージがありますので、この機会に小口径スネアの面白さに触れてみてはいかがでしょうか。


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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