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【連載】博士 山本拓矢がデジマートで見つけた今月の逸品 ♯15 〜Ludwig Vistalite〜
- Photo & Text:Takuya Yamamoto
- illustration:Yu Shiozaki
第15回:Ludwig Vistalite
ドラム博士=山本拓矢が、定番商品や埋もれた名器/名品など、今あらためて注目すべき楽器たちを、楽器ECサイトであるデジマート(https://www.digimart.net/)で見つけ、独断と偏見を交えて紹介する連載コラム。今回はジョン・ボーナムやカレン・カーペンターらが愛用し、昨年50周年を迎えたアクリル・シェルの代名詞にフォーカスします!
いつもお読みいただき、ありがとうございます! おかげさまで、楽しく連載を続けさせていただいているのですが、ここのところ、スタンドやミュート、ヘッドなど、読み手を選ぶテーマが多くなってしまっている自覚はありました。
そこで、スネアやキットを取り上げようかなと思いながら、いろいろと検討していたところ、ここ数年見かける機会が増えていた、ある楽器のリクエストをいただいたので、今回はそれにお応えして紹介して参ります。
今月の逸品はLudwigのVistaliteです。
今月の逸品 【Ludwig Vistalite】
Vistalite(ヴィスタライト)は昨年誕生から50周年を迎えましたが、歴史的な観点で言えば、Zickos Drumsの楽器や、FibesのCrystaliteの存在は欠かせませんし、TAMAのArtstar系のあのキットや、SONORのX-Rayなど、紹介すべき楽器はいろいろあります。しかしVistaliteこそが、おそらく最も普及したアクリル・ドラムです。
アクリルの特徴は何といってもその硬さです。硬さを数値化しようとした場合の定義の話はややこしいので、打楽器の素材としての立ち位置の観点で少し整理してみます。
アクリルが用いられる他の分野としては、腕時計の風防、水槽、レンズなどがありますが、それらの競合はサファイア・クリスタルやガラスなど、さらに硬いものと比較されることが多いため、素材としては柔らかい性質のものとされることも少なくありません。実際、傷もつきやすい素材であるとも感じます。
しかし、ドラム・シェルに通常用いられる素材は、木材や金属などです。木材も金属も、ある程度の弾性があり、ぶつけるとへこみます。一方アクリルは、あまり変形せず、強い衝撃を受けると割れてしまいます。
この話を持ち出すと、硬さと脆さの話にもなってしまうのですが、極端な例としてガラスとゴムを比較した場合、ガラスは硬くて脆い、ゴムは柔らかくて粘りがある、というのはイメージしやすいと思います。そういった意味で、アクリルシェルは硬いと位置づけています。この硬さの違いが、音色の違いに影響することは、この記事の読者の皆様であれば容易に想像できると思います。
厚みやエッジの仕上げで、キャラクターは大きく変化しますが、ビスタライトはアタックに優れ、ドライな性質があります。硬さゆえの超高域の成分と、比較的均一な素材ゆえのシンプルな倍音構成から生まれるソリッドさは、音ヌケの良さ、パンチのあるサウンドと呼ばれる表現にも、齟齬なくフィットします。
厚みに関しては、公称6mmということで、薄めのウッド・シェルと同じくらいです。硬さに応じた必要な厚みがあるので、異素材との単純比較はできませんが、この手の比較をする際は、比重を踏まえて照らし合わせてみると、収まるべきところに収まっていることが多い印象です。
例として、近代のハイエンド・モデルに用いられるメイプル、バーチ、オークなどの木材は、比重0.7前後に集中しています。クロスラミネートで合板化することで薄くできるという理由もありますが、5mmから10mm程度が主流でしょうか。アクリルと同じように1枚の板を曲げて作られているソリッド・シェルは、厚めの傾向があります。
金属の中でも比較的木材に近いサウンドの素材としては、軽い部類に入るアルミが代表的かと思います。これは合金の種類にもよりますが、2.7前後であり、厚みは1mmから1.7mmくらいまでが中心で、削り出し系では3mmといった厚みもポピュラーです。0.7だと10mm必要、2.7なら1.7mmで充分。Vistaliteで6mmが採用されているアクリルの比重はというと、一般的には1.19程度のようです。割と納得感のある数字ですが、いかがでしょうか。
ヴィンテージはエッジのばらつきが大きく、チューニング・レンジの部分でやや難しさを感じる傾向もありますが、現行品はLudwig製品の中では最も鋭いシェイプで、品質も安定しています。
アクリルは湿度や温度など、環境への耐性の面でも優れた要素があります。一味違ったキャラクターや、安定性に興味がある方は、まずはスネアから試してみてはいかがでしょうか。
Profile
ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。
Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto
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