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    【連載】山本拓矢が島村楽器ドラムショー2024で見つけた逸品たちを試打&レポート〜特別編〜

    • Text:Takuya Yamamoto
    • illustration:Yu Shiozaki

    TAMA Lars Ulrich Singnature LU1465N

    今年ブランド発足50周年を迎えたTAMA Drums。ウッド、メタル共に豊富なスネア・ドラムのラインナップの中から、今回博士がセレクトしたのは、TAMAとのエンドース契約40年の節目を迎えたメタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッヒのシグネチャー・モデル、LU1465N。

    Diamond Plate”と呼ばれる特徴的なルックスがお馴染みで、シェルは3mm厚のスティールを採用。10テンション仕様で、フープはダイキャスト製。スナッピーはカーボンスティールの20本タイプで、サイズは14”×6.5”。長谷川浩二、むらたたむなどのロック系のドラマーはもちろん、幅広いドラマーが愛用しているロング・セラー・アイテム。

    決して大味にはならず
    繊細なプレイにも素直に応えてくれる

    3mm厚のヘヴィなメタル・スネア・ドラム。ラーズ・ウルリッヒと言えば、ヘヴィ・メタル・バンド、Metallicaでのプレイ・スタイルが印象的で、当然、そのような音楽性に特化した楽器としての要件を満たしていますが、意外と幅広い用途に使用できます。厚みがあることで、スティール特有のピーキーな高域や鳴きが強調されにくく、“Diamond Plate”と呼ばれる特徴的な表面の模様は、その形状によって、シェルに由来する倍音を複雑にしているとみられます。

    硬さ、鋭さ、冷たさといった質感もありながら、安定したロー・エンド、ロスの少なさによる反応の速さもあって、決して大味にはならず、繊細なプレイにも素直に応えてくれるので、タイトでクールな方向の表現にも適性があると感じます。

    SAKAE OSAKA HERITAGE JAPAN CUSTOM
    Phosphor Bronze SDM1455PBJ

    日本最古のドラム・メーカーであったSAKAEのレガシーを受け継ぎ、新たなブランドとして再生したSAKAE OSAKA HERITAGE。試奏したフォスファー・ブロンズ・スネアは、国内の職人が1台ずつ手作業で組み上げるJapan Custom Snareの1つで、神田リョウ、仄雲さんなどが愛用中。

    化学物質の“リン”が添加された合金のフォスファー・ブロンズは3mm厚で、上下に削り出しのレインフォースメントを備えている点が特徴。フープは外巻きのライティ・ヘイローが装備され、スナッピーは36本タイプ。6.5”のSDM1465PBJもあるが、今回は5.5”のSDM1455PBJチェック!

    質量に由来する圧倒的なパワーを活用する方向が
    この楽器を気持ち良く鳴らす1つのポイント

    スタジアム級の会場で特に重宝される6.5インチに比べると、もう少し身近で明るさも感じられるトーンです。細めのレインフォースメントによって、エッジ付近に硬さと重さを持たせてありますが、オープンなサウンドなりやすい外曲げのフランジ・フープを合わせており、エッジ・シェイプやパーツの配置、組み上げの具合いによるものもあってか、派手さや暴れる感触があります。

    シビアに追い込んで、クリアで澄み切ったトーンを狙うというよりは、ある程度ラフに構えて、豊富な倍音を引き出しつつ、質量に由来する圧倒的なパワーを活用する方向が、この楽器を気持ち良く鳴らす1つのポイントかもしれません。似たようなスペックの楽器群の中でも、この楽器ならではの個性があるので、パワー、ヌケの良さ、ラウドさといったキーワードにピンと来た場合、ぜひ試してみてください。

    DIXON Gregg Bissonette Big Bud Signature

    台湾の総合ドラム・メーカー、DIXONのスネア・ドラム。今回試奏したスネア・ドラムは、リンゴ・スター率いるオール・スター・バンドのメンバーであり、LAのトップ・セッション・ドラマーの1人であるグレッグ・ビソネットのシグネチャー・モデル=Gregg Big Bud Snare Drum。

    14”×8”の超深胴モデルで、インナーにメイプル、アウターにウォルナットを組み合わせた4mm厚のハイブリッド・シェルに、2.4mm厚のメイプル・レインフォースメントを装着構成。スナッピーは本数の多い42本タイプが標準装備で、打面ヘッドはREMOのCSコーテッドというこだわりを感じさせる組み合わせ。

    メインのスネアとして普通に使っても良いし
    フロア・タムの位置にセットするのも最適

    今回試した楽器の中で、唯一の深さ8″です。深胴の人気が高まって以来、このような深さの楽器もめずらしくはなくなってきていますが、それでもやはり特殊な部類に入ります。グレッグ・ビソネットは、ローピッチにしてハイハットの左側に置き、サイド・スネアとして使用しているようで、実際に低めのチューニングにしてみると、軽さや複合材ならではのキレが生きた、このサイズならではのサウンドが味わえます。

    ベッド形状やコイルの具合いもあってか、反応は良好なので、ミッドからハイまで上げて、メインのスネアとして普通に使っても良いですし、フロア・タムの位置にセットするのにも適していると思われます。流通量は決して多くないタイプの楽器なはずなので、琴線に触れるものがあった場合、機会を逃さず手に入れた方が良いでしょう。

    島村楽器主催「ドラムショー2024」はまだまだ続きます!

    https://info.shimamura.co.jp/drums/article/drumsshow2024


    Profile
    ヤマモトタクヤ●1987年生まれ。12歳でドラムに出会い、高校時代よりプレイヤーとして音楽活動を開始。卒業と同時に入学したヤマハ音楽院にて、さまざまなジャンルに触れ、演奏活動の中心をジャズとクラブ・ミュージックに据え、2013年、bohemianvoodooに加入。 音楽と楽器の知識・スキルを生かして、ドラム・チューナーとしてレコーディングをサポートしたり、インタビュー記事や論説などの執筆業を行うなど、音楽全般への貢献を使命として活動中。

    Twitter:https://twitter.com/takuya_yamamoto

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