パールが自社の歴史を紐解いてイチから図面を起こし、往年の人気シリーズを現代の技術で蘇らせたプレジデント・シリーズ。樹脂製シェルの“フェノリック”は、66年発表の元祖プレジデント・シリーズのサウンドを再現した、正真正銘のクローンと言えるでしょう。

当時のキットを横に並べて試奏した結果、まったく同じ音でした。当時、樹脂製のシェルは言わずもがな高級品で、パールは元祖プレジデント以降、FX、PXなど数々の人気シリーズを生み出してきましたが、“木ではない”特徴を生かしたシェルの、低域から高域までたっぷり余裕のある鳴り方。濁りのないキレイな音。超弱音でも広い音域で安定して鳴ってくれます。

強く叩くとバチッと強い意思がちゃんと音に乗っかるし、マルチ・マイクに対応していった時代に必要とされた画期的なサウンドであったこともうなずけます。また、どんなタッチでも簡単に鳴らせるので、高級材ではあるけどビギナーにとっても間違いなく扱いやすいですね。サウンド面のみならずルックスの良さもヴィンテージ・パール・ファン納得の完成度だと思います。

木製シェルの“デラックス”。創業以来、メイプル、バーチ、マホガニーといった材のモデルが登場するまでは、すべてこのラワン材を用いたシリーズがパールの歴史を牽引してきました。まさにヴィンテージ・パールを代表する音と思っています。フェノリックとは真逆な“木の音丸出し”の、これぞアコースティック・ドラム・サウンドと言えるでしょう。

さらに、当時と同じ材が持つ、素朴で優しい音の中に圧倒的な芯があります。当時のモノより音量があって、低音が出るのは今回あらためて図面起こしから復刻したというパーツ類と現代の技術で成型したシェルとのマッチングに他なりません。当時のパール開発者がこの音を聴いたら、同じものを使ってここまで来たか！と感心するに違いないのでは。この明確な芯があることで、マイク乗りも保証されますし、現代の楽器やサウンド・システムの中でも、ヴィンテージ・テイストがありながら、今のドラムとしてばっちり機能する、そんなねらいに確実に応えてくれる楽器と言えます。これはヴィンテージ・ドラム・ファンにとっても快挙では！