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AKANE[BAND-MAID]がモーション・アクトへの初挑戦とEP「SCOOOOOP」で感じた手ごたえを語る!【Interview】

  • Interview & Text:Drums Magazine WEB Photo:Misaki Ito

黒鉄音羽というキャラクターは私の親友でありライバル
自分がなりたいドラマー像にあらためて気づかせてもらえた

メイド風衣装を身にまとい、確かなテクニックで放つ痛快なハード・ロック・サウンドが国境を越えて支持を集めるBAND-MAID。「ロックは淑女の嗜みでして」をはじめとするTVアニメのタイアップやモーション・アクトへの挑戦など、活躍のフィールドを広げる彼女達が、新作EP「SCOOOOOP」をリリース。ツイン・ペダルを駆使した高速フット・ワークにさらなる磨きをかけたAKANEに話をうかがい、成長の手ごたえに迫った。

“BAND-MAIDでもこんなにないぞ?”と思うくらい
ツイン・ペダルを踏みました

AKANE アニメオタクとしてはタイアップも感激ですし、 “いつか自分もドラムでモーション・キャプチャーをやりたいな”という夢を密かに抱いていて、「ロックは淑女の嗜みでして」(以下“ロックレディ”)で、その夢をメンバーと一緒に叶えられたのは本当にありがたい経験でした。

私はドラムの黒鉄音羽(くろがねおとは)役として、劇中曲のレコーディングまで幅広く関わらせていただきました。ストーリーやキャラクターもBAND-MAIDにリンクする部分がとても多くて、運命を感じる作品でしたね。

AKANE モーション・キャプチャーの撮影は朝からスタジオに入って夕方に終わるというサイクルで、1日1〜2曲ずつを半年かけて進めていきました。同じ曲でもショート・バージョン、ギターとドラムのセッション、4人バージョン……といろいろなパターンを撮りました。

レコーディングに関しては、月に1曲のペースで音源が届いてそこからレコーディングに取り組みました。ほぼ並行して撮影とレコーディングしていました。

AKANE 原作の音羽は1バス、2タム、1フロア・タムのオーソドックスなセッティングで、フット・ペダルはシングルなんですけど、私の演奏スタイルを踏まえて、アニメではツイン・ペダルの設定になったんです。アレンジャーさんから届いた楽曲にも両足のフレーズがたくさん盛り込まれていて、“BAND-MAIDでもこんなにないぞ?”と思うくらいツイン・ペダルを踏みました(笑)。

モーション撮影用のスーツのつま先からカカト、スティックやドラム・セット、シンバル、タムまでそれぞれにたくさんのセンサーがついているので、自分の手癖も客観的に確認できたのが面白かったですね。モーション・キャプチャーの技術や再現力の高さを感じました。

AKANE モーション撮影では、“大げさに見えすぎないように、あくまでもリアリティ重視で”とのことだったので、叩いてみて、映像を確認しながら調整していきました。いつものように綺麗なフォームを意識して丁寧に叩こうとすると、原作の音羽の演奏と比べて動きが地味に見えがちだったので、わざと振りを大きくしたりしましたね。監督や原作者の先生には「AKANEさん自身が音羽みたいだから、そのままで大丈夫」と言っていただけたので、その言葉にすごく救われました。

音羽は超絶技巧キャラということで、 アニメの1話で、音楽室でドラム・ソロを叩くシーンがあるんですけど、そこは急遽リクエストをいただいて録ったものなんです。2年前の横浜アリーナ公演で私が叩いたソロを、監督が音羽のイメージにぴったりだと思ってくださったのがきっかけということもあって、自分の好きなソロを叩かせていただきました。私の味をしっかり出せたのも新鮮でしたね。

AKANE インスト・バンドは私があまり経験してこなかったスタイルで、勢いではいけない繊細なアプローチだな、というのが第一印象でした。自分の得意ジャンルはロックやハード・ロックなので、普段はBPM=180くらいの曲を叩くことが多いのですが、劇中で演奏した楽曲はそれよりゆっくりのテンポなので、よりシビアな音価のコントロールが必要になりました。

インスト・バンドの皆さんは技術のある方ばかりですし、繰り返しじゃなく毎回新しいフレーズを叩くので、長尺の曲は覚えるのも苦戦しましたね。

最初に録ったのがLITEさんの「Ghost Dance」で、ドラムとギターだけのセッション・バージョンだったこともあって、ずっとソロを叩いているような感覚でした。全部の音が露わになってしまう上に、アレンジでツイン・ペダルのフレーズや自分の手癖ではできないアプローチも加わるので、レコーディングでは1音1音を大切に鳴らして聴かせることの難しさを痛感しました。

でも、すごくカッコいいと思う部分がたくさんあったので、しっかりと学ばせていただいて、自分の引き出しを増やそうという意識で取り組んでいました。

AKANE 私は中学〜高校の頃に吹奏楽部でトロンボーンを担当していたんですけど、いつかドラムで演奏したいなと思っていた「宝島」にも今回の劇中曲で挑戦できたんです。「ロックレディ」には、いろんな夢を叶えてもらった感じがしますし、原曲にはないドラム・ソロまでいただけてすごくうれしい経験でした。

音羽というキャラクターも、演奏を重ねる中で私の親友でありライバルのように思えていたので、あまり変に作りすぎず、そのままの私で音羽と共に演奏できた気がしています。自分がなりたいドラマー像にも、あらためて気づかせてもらえた感じがしましたね。

AKANE アニメでもギターとドラムが主要キャラクターなので、そこを再現した曲になっていると思います。ここでも音羽をライバルに見立てて“負けてられるか、かかってこい!”という意識で、ツイン・ペダルのアプローチで威嚇するようなプレイになりました。

私が勢いを出せるところと言ったらやっぱりフット・ワークなのかなって。展開も多くて複雑な曲なので、コピーにトライしてくれるドラマーへの挑戦状みたいな気持ちも込めてレコーディングに臨みました。BAND-MAIDの曲の“叩いてみた”動画は私もたくさん観ているので、読者の方にも「Ready to Rock」のコピーに挑戦してもらえたらうれしいです!

スライド奏法かヒール&トゥ奏法で行くのか
こうして迷えるのは、引き出しを増やしてきたからこそ

AKANE 去年の春から秋ぐらいにかけてモーション・キャプチャーのことをやっていたので、アルバムと並行していた感じです。モーション・アクトでのプレッシャーを感じながら実戦でツイン・ペダルを相当踏んできたおかげもあったし、学びもたくさんあったので、EPのレコーディングでは “あれ、こんなに楽に踏めたっけ?”と思えるくらい成長を感じられました(笑)。本当に感謝しています!

AKANE 海外のフェスを経験して、2023年の全国ツアーで「みんなと盛り上がれるような曲がもっと欲しいね」という話が出たのをきっかけに生まれた曲なんです。完成までに時間をかけた曲で、ドラムは2年前(2023年)の10周年ツアー後半にレコーディングしました。そのタイミングで録れたことで、“ライヴ脳”になっていたときの、明るくて元気な自分の音や叩き方がわかりやすく表れている気がします。

AKANE そうですね。この曲では、初めてメンバー全員でコーラス・ワークをさせてもらったんですけど、いざメンバーと歌ってみると、それぞれの合わせ方やタイム感がかなり違うことに気づいたんです。例えば、「こ“の”〜」と歌うフレーズだったら、私の歌い方では「この“〜”」(音引き部分)に1拍目が合うのが特徴みたいで、「AKANEは、子音よりも母音の方を1拍目のアタマに当てに行くよね」とメンバーに言われたのが衝撃的でした。

それ以来、自然とヴォーカル2人の歌い方をより意識するようになったので、ドラマーとしてもすごくいい経験になったと思います。

New EP「SCOOOOOP」
ポニーキャニオン
(通常盤)PCCA-06427

AKANE 「Dilly-Dally」は私も大好きで、デモの段階からワクワクしていました。ベースもギターも遊び心のあるフレーズで暴れまくっているので、“支えるから暴れておいで”という役割を意識した曲ですね。他のパートとのバランス面を考えて、重心が低めのアプローチを組み込んだんですけど、ドラムはシンプルかというと全然そんなこともなくて……曲の尺は3分もないのに、カロリーが高いんです(笑)。

レコーディングはめちゃくちゃ楽しかったんですけど、ドラムはテンションを上げすぎず、冷静な気持ちでバランスを意識していないといけないので、“支えながら暴れる”という難しさもある曲ですね。

言葉数の多いツイン・ヴォーカル曲なので、お給仕では各々がしっかり自分のタイム感を持って合わせに行かないといけないんですよね。リハでも詰めがいがありますし、お給仕で育って完成していくんだろうなと思います。

AKANE 念頭にあるのは、“各パートが輝くポイントを作ること”ですね。それを踏まえて、緩急のわかりやすい展開作りを自然と意識していると思います。

インストでは、ヴォーカル代わりにギターがメロディの役割をしてくれていると思うので、それを支えるドラムとしては、小節のお尻の部分や、セクションのつながりのところで“次に行きますよ”という合図をわかりやすく入れるようにしています。例えば、次のセクションでテンション感を落としたいときのフィルインはフロア・タムで切り替えたり、盛り上げたいときにはスネアに行ったり、という感じですね。

この曲は、ヴォーカルのSAIKIが新たにキーボードを担当してくれたことで、メンバー全員が演奏に参加する初めてのインスト曲になりました。バンドの可能性も広がったと思いますし、BAND-MAIDのインストを全員で見せられるのは感慨深い気持ちでいっぱいです。

AKANE この曲のAメロではバスドラのダブルを使うフレーズが多いので、そこをスライド奏法で行くのか、ヒール&トゥ奏法で行くのかはけっこう悩んだポイントでしたね。私はいつもスライドを使いがちなんですけど、この奏法だとマイクに音が乗りにくくて。この曲はテンポも速いので、音を綺麗に聴かせるためにヒール&トゥを使い分けてレコーディングしました。

こうして迷えるのは、自分の引き出しを増やしてきたからこそなんですよね。基礎が役に立つときが垣間見えた瞬間というか。

▲BAND-MAID(L→R)
MISA(b)、AKANE(d)、小鳩ミク(vo、g)、SAIKI(vo、key)、KANAMI(g)

AKANE 私の場合は、アウェイになればなるほど燃える気持ちもありますね。BAND-MAIDの衣装やバンドのコンセプトもあって、まだ私達のことを知らない方からは先入観を持たれることもあると思うんですけど、いざ音を出したときに“え!?”と驚いたような反応を見たり、SNSで「BAND-MAID、初めて見たけどこんなにすごいんだ」というコメントを見つけたりするとうれしいですね。

アニメのタイアップやフェスを経て、自分自身の成長も感じていますし、新規のご主人様/お嬢様(ファンの呼称)も増えているのですごくありがたいです。これからも実力を磨き続けて、観てくれる方をどんどんびっくりさせていきたいですね。

AKANE  5月から始まった「BAND-MAID. TOUR 2025」のFIRST、SECOND ROUNDを回って、今(10月上旬)はFINAL ROUNDに向けて、「SCOOOOOP」の曲をお給仕で披露する準備を進めている最中です。すごく楽しく“修行”しているので、ぜひ期待してもらえたらと思います。「SCOOOOOP」のジャケットで飛行船からチラシをばら撒いているみたいに、たくさんの方にBAND-MAIDの音楽を届けたいですし、ご主人様やお嬢様に私達の進化を楽しんでもらえたらうれしいです。

◎Information
BAND-MAID. TOUR 2025

FINAL ROUND
11月1日(土)神奈川・CLUB CITTA’
12月7日(日)東京・TOKYO GARDEN THEATER

詳細はこちら→BAND-MAID Official Website

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