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    Interview – 金子ノブアキ[RED ORCA]

    • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Junji Hirose

    90年代然とした佇まいは懐古ではなくある種の現代解釈
    体感で覚えているミクスチャー・ロックと
    今ならではのサウンドを組み合わせられると思った

    バンド、セッション・ワーク、時に俳優と、多様なフィールドで活躍するドラマー、金子ノブアキが、バンド・プロジェクト=RED ORCA(レッド・オルカ)を始動! ソロで共演を重ねてきたPABLO(g)と草間 敬(manipulator)、そして新たな顔ぶれとなる葛城京太郎(b)と来門(vo)をメンバーに迎え、1stアルバム『WILD TOKYO』を完成させた。本作で振り切った“攻め”のドラミングを聴かせる金子に話を聞くと共に、彼が追求する現代版ミクスチャー・ロックに迫った。

    90年代ミクスチャーの現代解釈
    新しい方法を1つ確立できた気がする

    ●今回の新しいバンド・プロジェクト=RED ORCAは、メンバーの人選がポイントだと思うのですが、どのように決まったのですか?

    金子 俺のソロで草間(敬/manipulator)さんとPABLOとずっと一緒にやってきたところに、来門(vo)と京ちゃん(葛城京太郎/b)の2人が合流してできていったようなイメージですね。きっかけになったのが、映画の主題歌として書き下ろしていた「MANRIKI」なんですけど、インストでデモを作ったときに、ラッパーが欲しいなと思って。それで思い浮かんだのが来門だったんです。彼とはROSとRIZEで一緒にツアーを回って、バンドに復帰した彼が賭けている思いにすごく感銘を受けていたんです。一緒にやったら何か学べるだろうと思って、1曲やってみたら、思っていた通り、すごくハマりが良くて。“もっと曲、作ってみようか”ということになって、あとは自然な流れで進んでいきました。

    ●先行でリリースされた「ORCA FORCE」を聴いたとき、初期の311を彷彿とさせるものを感じました。『WILD TOKYO』もそうですが、ミクスチャー・ロックというところも、金子さんがこだわったポイントなのでは?

    金子 「Octopus」にもあるようなハネたビートとかは、まさにそうですね。オレンジ・カウンティ(ドラム&パーカッション/OCDP)のドラム、ワーウィックのベース、PRSのギターが、“ミクスチャー三種の神器”と呼ばれていた当時の雰囲気というか。90年代然とした佇まいがそこかしこにあると思います。今までやってきた一番得意なジャンルですしね。でも懐古的なわけではなくて、ある種の現代解釈というか、体感で覚えている90年代のミクスチャー・ロックの感じと、今ならではのサウンドをうまく組み合わせられると思ったんです。ミックスには時間がかかりましたけど、着地がすごくうまくいって、新しい方法を1つ確立できた気がします。このメンバーが集まってくれたことが本当にラッキーでした。

    RED ORCA(L→R):草間 敬(manipulator)、来門(vo)、金子ノブアキ(d)、葛城京太郎(b)、PABLO(g)

    1st ALBUM『WILD TOKYO』
    配信限定 ORCA-0320

    ●RED ORCAのバンド・サウンドが個性的なのは、来門さんはもちろん、京太郎さんの存在が大きいのではないですか?

    金子 まさにその通りで、京ちゃんが入ったことで、想定していたよりもすごくアナログな感じになったんですよ。いわゆる“90年代感”がより強まったのは、彼の存在が大きいと思います……98年生まれなんですけどね(笑)。でもタテにもヨコにも合うから、すごくスムーズ。他の若い人みたいにクリアな感じというのではなく、ちょっとドロドロしたうまさというか、退廃的なカッコ良さがあって。このプロジェクトは、来門と京ちゃんの存在があってこそと言ってもいいかもしれない。ウチのツートップですね。RIZEもそうですけど、サッカーで言うストライカー・タイプが2人いてくれると、ライヴでも安心して叩けるんです。

    ●RIZEと比べて、ドラマーとしての金子さんの立ち位置にどのような違いがありますか?

    金子 RIZEでは僕が一番後ろで支えるイメージなんですけど、RED ORCAには草間さんがいてくれていることもあって、僕もちょっと前に出て、フロントとのつなぎ目あたりの立ち位置にいられますね。サッカーに例えるならボランチですかね? バスケばっかりだったのに、例えがサッカーという(笑)。でもとにかく、ドラマー冥利に尽きるメンバーです。

    最後の4拍目ウラから
    次の1拍目までの距離感が大事

    ●RED ORCAでのドラミングは、RIZE、AA=よりも音数が多くて、グルーヴも前のめりで攻めている印象を受けました。金子さんのやりたいことが凝縮されていると言いますか……。

    金子 そうですね。今までやってきた中では、音数はかなり多い感じはしますね。グルーヴに関しても、勢い良く前に行きたくなるような曲では、最初に作った形から、BPMを1〜2くらい上げました。シーケンスがあまりグリッドに対してステディだと、自分のビートよりも遅れて、合わなくなってしまうので、ドラムはBPMを少し上げた方が勢いが出るんですよね。

    ●“いい感じ”のグルーヴって、必ずしもジャストの位置ではないですもんね。

    金子 そうなんですよ。例えば、スローンに浅く座って少し前傾になった姿勢で、上から振りかぶって叩きたいときには、グリッドよりもちょっと速いくらいにしておいた方が、バッと風が吹くような勢いが出るんです。ただアタマとケツだけは合わせたいので、最後の4拍ウラくらいから、次のアタマの1拍目までの距離は大事にしています。その“査定”は1人ではできないので、来門と京太郎の感じを見ながら“せーの”で叩いてみたものを全体で聴いて、不自然じゃない位置に調整していく感じですね。

    ●勢いという点では「ORCA FORCE」のオープン/クローズを絡めた4つ打ちのスピード感が強力ですね。転がっていくようなビート感は90〜00年代を駆け抜けてきた金子さんならではだと思います。

    金子 ああいう速い曲でウラを鳴らしながら4つ打ちにいくパターンは、RIZEの中〜後期にもやっていたアプローチで、今回それを久々にやったような感じですね。タムを絡めた複雑なビートのあとで、あの4つ打ちにいくとすっきりとした開放感が出るかなと思って。転がるニュアンスは、最初の想定よりも曲のBPMを1〜2上げて、下り坂みたいに不可抗力で転がっていってしまうようなビート感をイメージしました。

    ●いわゆる “楕円形”のフィールですよね?

    金子 まさに。楕円のビートっていうのは、中学生の頃からずっとやってきていますからね。ちなみに「ORCA FORCE」は来門を誘うときに聴かせた最初の曲なんです。“要するに、こういうことをやろうと思ってるんだ”っていうのを凝縮した初めての曲でもあるから、そういう意味では、RED ORCAでも象徴的なものなのかなって。

    ●3曲目の「Night hawk」は、アンビエントの中で美しく響くブラスト・ビートが斬新ですね。

    金子 このセクションのリズム・アプローチは全然考えてなくて、偶然なんです。過去に自分が叩いたドラム録音のデータを持っていて、その中からパターンをいろいろと組み合わせてデモを作っていたときに、たまたまブラストに近いものができて。試してみようと思ったときに、“俺、ブラストやったことないな”って(笑)。そこは通ってないんですよ。誰のブラストが好きかもわからないくらいで。

    ●(笑)。

    金子 練習はもちろん、AA=に参加しているZAXとかYOUTH-K君のセッティングも参考にしたりして、“ブラストもどき”に挑戦しました(笑)。レコーディングのときに、ブラストの後のAメロに戻った瞬間、京太郎と来門のテンションが嬉々としていたのが印象深くて。“このアプローチは大成功だったな。このときのためにある曲なんだ”と思いましたね。

    インタビューで語っている金子曰く”ブラストもどき”は、2:02から試聴できる!

    ●良い結果につながったんですね。その他に新しくチャレンジしたことは?

    金子 最近、ツイン・ペダルを導入して……。

    ●おおっ! 20年以上の長いキャリアで、ついにですね?

    金子 絶対に自分はやらないだろうと思っていたんですけど、数年前、久しぶりにAA=に戻ったときに、新曲がツイン・ペダルのフレーズまみれで……(苦笑)。でも、これまでZAXとYOUTH-K君がやっていたそのフレーズを、俺がシングル・ペダルという理由だけで、アレンジするのもどうかと思って。もうケツに火がついたような感じで、当時のRIZEのツアー中、こそこそ練習したんです(笑)。でもそのおかげで、今作の「Phantom Skate」の2ビートとかも、楽に踏めるようになりました。もともとペダルは裸足で踏んでいたんですけど、最近は、ボクシング・シューズを履くことも多いですね。