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    【Report】スガ シカオ 25th Anniversary Shikao & the Family Sugar Special Live at Billboard Live@Billboard Live東京(d:沼澤 尚)

    • Text:Yusuke Nagano

    今年デビュー25周年を迎えたスガ シカオの伝説的なバンド・プロジェクト、“Shikao & The Family Sugar”が15年ぶりに復活! 沼澤 尚(d)をはじめ、森 俊之(key)、松原秀樹(b)、間宮 工(g)、大滝裕子(cho)、斉藤久美(cho)という日本の音楽シーンを支える名手達が顔を揃えて、東京と大阪の4会場でライヴを行った。そのファイナルとなる3月22日のビルボードライブ東京公演は、貴重な機会を至近距離で体感できるプラチナ・チケットを射止めたオーディエンスで満員御礼。開演前からただならぬ熱気に包まれていた。

    ステージの中央に設置された沼澤のドラムは、ストラタ・ブルーのカバリングが映える2003年製のPearl Masters Retrospec MSXの3点セットで、キックとタムは24″と13″という大きめのサイズをチョイス(フロア・タムは16″)。低めの位置に揃えてセッティングされた、19″~22″の大口径のシンバル類も特徴的だ。ちなみにキット自体は、バンドが活動休止する前に使用していたものとまったく同じであるが、カバリングは当時のレッド・オニックス(赤)から張り替えられている。バンドのロゴ入りフロント・ヘッドも15年前のもので、沼澤が大切に倉庫に保管していたそうだ。その他にも、キックに関してはライドのマウントや、チューニング・ボルトをT字ハンドル・タイプに変更するなど、細部にまでこだわりが反映されている。

    スガ fシカオ

    予定時刻になると客席の照明が落ちてメンバーがステージへ。所定の位置にスタンバイすると、一瞬の静寂が訪れた後に、入魂のスネアのピック・アップから沼澤の図太いリズム・ソロがスタートする。ほどなく他のメンバーがインして、あっという間に濃密でファンキーなアンサンブルが構築されると、大声援を受けてスガ シカオ登場。短い挨拶に続いてオープニング・チューン「夜明けまえ」でショウが幕を開ける。

    全身をバネのように使って躍動的にプレイする沼澤を核とする、突出したリズム・センスを持つメンバー達が織なす極上のグルーヴに包まれ、スガも実に心地良さそうな表情で歌を紡いでいく。ショウはまだ始まったばかりであるが、百戦錬磨の強者達が思いっきり演奏を楽しむステージ上は、特別なオーラをまとうような輝きを放ち、これからすごいことが起こることを予感させてくれる。2曲目へのつなぎでは「ファンキーにどんどん行くぜ……みんなも自然にグルーヴに身を任せてくれ」と語り、タイト系から揺らぎ系まで、多彩なフィールのダンサブルな曲を次々と披露。

    特に中盤の手前で演奏された「夕立ち」や「AFFAIR」における、片手16ビートのしっとりとした大人の香りが漂うミドル・テンポのグルーヴはまさに芸術的。よどみなく糸を引くような、柔らかいスティックの軌道から生まれる、深い表現はタメ息ものであった。また間奏などで展開される森 俊之とのスリリングなインタープレイも、このバンドの聴きどころの1つであるが、パターンとフィルの境界線を感じさせない、滑らかで抑揚豊かなドラミングにも心酔した。

    沼澤のキットは中低域を強調したふくよかな音色であるが、芯が太くてツブ立ちは鮮明。このあたりはドラムを鳴らし切る技術も大いに関係していると思われるが、アンサンブルにバランス良く溶け込みつつ、要所では歌と呼応するようにフレーズを際立たせて楽曲を引き立てていく。また曲調に合わせてハイハットやスネアをこまめに交換し、イメージするサウンドを具現化するセンスも素晴らしいが、スネアのチューニングやミュート加減に合わせて、タッチや奏法を細かく変化させながら狙った音色を引き出すテクニックも見逃せない部分であった。

    ちなみにこの日のスネアは、Pearlのスティーヴ・フェローン・シグネチャー・モデルを筆頭に、スティール・シェル、MSX(メイプル6ply)、カスタム・クラシック(ワンピース・メイプル)といった布陣で、サイズはすべて14″× 6.5″。サイド・スネアにはSoprano SFX 12″×7″を用いて、歯切れの良いハイピッチ・サウンドでコントラストを加えていた。

    やがてプログラムが後半に近づくと、演奏のボルテージはさらに増し、まるでバンド全体がゾーンに入ったかのような、研ぎ澄まされた集中力がステージの上からほとばしる。スガも「後ろから抱きかかえられるようなバンドのグルーヴに対して、負けないようにバトルする」と語り、魂がぶつかり合う真剣勝負を楽しむ一流達の、超ハイ・レベルなパフォーマンスが連鎖的に繰り広げられた。そして本編ラストの「午後のパレード」では、ステージと客席が一体となる振りつけで大いに盛り上がり、スタンディングや声援が制限される残念なご時世ではあるが、それを補う観客の大きな身振りや手拍子で至福の時を迎える。その後のアンコールのMCでは、スガが「やばい……俺はもうこれ以上のライヴはできないよ」と達成感を口にすると、沼澤が「またやろう」と声を発し、会場全体が同調して拍手喝采が起こるシーンにも胸が熱くなった。今回のライヴは、スガの25周年を記念した特別企画だったが、この奇跡的なメンバーが再集結した“Shikao & The Family Sugar”……この日が新たな伝説の始まりとなることを、その場にいる誰もが願いつつスペシャルなライヴは幕を閉じた。

    なお本公演の模様は3月22日に生中継されたが、アンコール放送も決定。4月23日(土)16時よりCSテレ朝チャンネル1にて放送される。詳しくはこちら→HP

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