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リハスタ激戦区=下北沢で独自のスタイルを貫き続ける、ドラマーも注目のスタジオを拝見!〜スタジオベイド下北沢〜

  • 取材:編集部 文:西本勲 撮影:八島 崇 

ユーザー目線で取り入れた仕組みが
スタジオ運営にもプラスに働いて

独自のスタイルに

ここからは、スタジオベイド下北沢の店長=中田周一郎氏と、自身もドラムを叩き、ジェフ・ポーカロが好きだというスタジオ・オーナーの松村裕一氏に話を聞いてみよう。

スタジオベイドは最初高輪店からスタートし、次の出店地として選んだのが下北沢だった。

松村「下北沢にはスタジオもライヴ・ハウスもたくさんあるので、ただ出店しても勝ち目はありません。さてどうしようと考えたとき、この物件を見て“ライヴができるスタジオを作ろう”とひらめいたんです。それならスタジオともライヴ・ハウスとも喧嘩することなく、他と違う色を出せるだろうと。

ここでライヴができるとなったら、練習で他の部屋も使ってもらえるし、Fスタジオで練習してステージの感覚をつかんでからライヴに臨んでもらうこともできます。それに、あくまでもスタジオとして貸しているだけなので、ライヴ・ハウスと違って集客のハードルもありません」

スタジオベイド下北沢店のエントランス。スタジオがあるのはビルの地下だが、写真のようなオープン・スペースもあって開放的な雰囲気だ。このスペースは、ライヴやイベントと組み合わせた使い方も考えられる。

“ライヴができるリハスタ”というのは大きなセールス・ポイントだが、それ以外にも時代を先取りするアイディアが盛り込まれた。オープン当時、リハスタではまだあまり普及していなかったネット回線への対応もその1つ。

松村「2010年にオープンした高輪店から、全部屋にLANを引いていました。リハスタとしては最先端を行っていたと思います……ちょっと早すぎたくらい(笑)。その後Wi-Fiも取り入れたり、時代と共に配信が一般化する中で、今ではいろいろな形で使っていただけるようになりました」

今ではWi-Fiを使えるリハスタはめずらしくないが、有線のLAN回線もあることで、安定した環境下でのネット配信を行えるのは大きなメリットだ。そして、同じく先見の明と言えるのがオンライン予約システムである。

松村「これも高輪店からスタートしていたシステムです。当時、リハスタでオンライン予約できるところはほとんどありませんでしたが、利用者にとっては絶対に楽だろうだと思って導入しました」

たっぷりと外光が射し込む明るいロビー。スタジオは24時間営業だが、スタッフのいない時間帯もある。その運用方法は本文を参照。

こうした同店の特徴が、2020年に訪れたコロナ禍と共にスタジオの在り方を左右することになる。当時、東京都では緊急事態宣言の発令に伴いライヴ・ハウスに営業休止要請が出たが、リハーサル・スタジオはその対象ではなかった。しかし……。

松村「ここはライヴができる店なので閉めてくれと。最終的に2ヵ月間閉めましたが、助成金は出たものの、それだけでは再開できても経営が成り立たない。そこで、スタッフみんなで話し合って、24時間営業&半無人化という現在のスタイルを作ることにしたのです」

そして導入されたのがリモート・ロック。予約時に発行された認証番号を使って、受付スタッフを介さずにスタジオを利用できるシステムで、これによって営業時間の拡大と、非接触スタイルの運用を実現した。

松村「コロナ前は午前10時から夜中1時までの営業で、ワンオペでも1日にスタッフが交代制で二人必要でした。今の仕組みを入れてからは、1日一人だけ、時間帯を決めて受付にいるという形になりました。夜中は無人で稼働させて、料金も下げています。このノウハウを使って、2022年2月にオープンした新百合ヶ丘のピアノ用スタジオは完全無人にしました」

一般的なリハスタでは受付で貸し出されることが多いマイクやシールドなどが、ここでは各部屋にあらかじめ用意されている。スティックやチューニング・キー、ガムテープもあるほか、用途によっては非常に役立つホワイト・ボード、五線紙も常備。

それでも、営業を再開してすぐに利用者が戻ることはなかった。店長の中田周一郎氏は「しばらく時間がかかりました」と振り返る。

中田 「でも新しいシステムになったことで、最初はやはり驚かれましたが、借りたいものも全部セットしてあるので、“確かにこれでいいよね”と好評価をいただけるようになりました」

松村 「人によっては、自分でパッと来てパッと練習して帰りたいというお客さんもいらっしゃいますからね。そういう層も取り込めるようになったのかなと思います。もちろん完全に無人化したわけではなく、店員とコミュニケーションを取りたいという方にも対応できます」

中田「実際、昔からのお客様で、スタッフがいる時間帯に来てくださる方もいらっしゃいます」

店長の中田周一郎氏。下北沢店を作る際に防音&ワイアリングの工事を担当していたところ、松村氏にスカウトされて店長の座に就いたそうだ。「もともと趣味でギターを弾いていて、そこから打ち込みやレコーディングにハマりました。FスタジオのライヴではPAも照明も担当します」

リハスタ激戦区での後発のスタート、そしてコロナ禍といった向かい風を創意工夫で乗り切ってきた同店。「目論見が外れたことも、失敗もありましたが、とにかく一度やってみようという精神でここまで来ました」という松村氏は、最後にドラマーの視点からこんな話もしてくれた。

松村「ドラムって、なかなか家で練習できないじゃないですか。でも、家に防音室を作るのもお金がかかる。だったら、リハスタを自分のスタジオのような感覚で使ってもらえたらいいなと思うんです。それで、個人練習を対象にサブスクを始めました。これがうまく運べば、もっとドラマーに喜んでもらえそうなアイディアもありますので、それを実現できたらと思っています」

Information】
STUDIO BAYD下北沢店
URL(https://www.studio-bayd.com/shimokitazawa/
TEL:03-5432-0040

〒155-0032 東京都世田谷区代沢5-8-14 岩城ビル地下1階
小田急線・京王井の頭線 下北沢駅 南西口 徒歩7分
京王井の頭線 池ノ上駅 徒歩10分
田園都市線 世田谷線 三軒茶屋駅 徒歩15分


★スタジオベイド高輪店(https://www.studio-bayd.com/takanawa/)では、2023年1月末までの期間、Cスタジオ(17帖)でパールの電子ドラムe/MERGEの試奏が可能なキャンペーンを実施中。興味のある人はお早めに!