SPECIAL
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SABIAN HHX ANTHOLOGY feat.ジョジョ・メイヤー with MASUKE
- Contents:Rhythm & Drums Magazine/Interview:Akira Sakamoto(Jojo Mayer)
素晴らしい楽器とはどんなものなのかについて
考えるきっかけになることを期待している
●ハイハットはトップがミディアムでボトムがヘヴィという組み合わせで、ボトムのみRAW仕上げがある点が特徴だと思いますが、RAW仕上げを採用した理由は?
ジョジョ トップとボトムの組み合わせはもう、嫌と言うほどたくさん試して、良いサウンドになる組み合わせもけっこうあって選ぶのが大変だった。ハイハットは伝統的にボトムの方がヘヴィだけれど、トニー・ウィリアムスみたいに15″のボトム用を2枚組み合わせていた人もいた。それは24″のベース・ドラムに合わせて音量が上がっていったこととも関係していたわけだけれどね。で、僕は過去10年くらい、マークが作ってくれたFierceのハイ・ベルを使ってきて、スティックのアタック音が高い倍音に覆い隠されないところが気に入っていたから、ANTHOLOGYにもその要素を盛り込みたかった。それで旋盤加工やハンマリングをいろいろ試した結果、僕が使っていたFierceのプロトタイプを少しだけメインストリームのサウンドに振ったものに落ち着いたんだ。僕のFierceはものすごくドライで、ANTHOLOGYはもう少しシズル感というか、広がりのあるサウンドを狙っていたからね。それで、内側は旋盤加工を施したわけだけれど、ボトムの内側はRAWのままにしたら面白いんじゃないかということになった。ボトムも同じ加工にすると、他のシンバルと同じになっちゃうから、ここは1つ大胆な、何かの特徴になるようなことをやってみようってね。僕にはRAWの方が刺激的なサウンドに感じられたね。ペダルを踏んだときのサウンドが通常のハイハットよりも力強いし、余韻の切れ味も良くて、精密かつ過激な演奏ができるからね。
●Nerveでプレイする場合には、どのモデルを選びますか?
ジョジョ Nerveはエレクトロニックなサウンドのバンドだけれど、22″はロー・ベルで、18″と14″のハイハットにはハイ・ベルを選んでいる。でもスタジオの仕事では逆で、14″と18″はロー・ベル、22″にハイ・ベルを使ったこともある。22″では少し暴れた感じのウェットなサウンド、14″と18″はよりトラディショナルでメリハリの効いたサウンドをそれぞれ狙ってね。ハイ・ベルはほんとうに過激な鳴り方をするから万人向けじゃないかもしれないけど、ものすごくメリハリの効いたサウンドは、エレクトロニックなものに向いている。これはあくまでも好みの問題で、同じ好みをみんなに押しつけるつもりはないけれどね。僕らはただ、それぞれのドラマーがシンバルに関する知識を身につけて、目的に応じたものを選べるようになって欲しいんだ。
今回、ANTHOLOGYを製品化するにあたって、マークは素晴らしい仕事をしてくれたと思う。僕は今までにもいろんなプロトタイプを使ってきたけれど、試作して結果が良かったものを何百枚も安定して製造するのは生易しいことじゃない。シンバルは、時間をかけて鳴らし込むにつれて良い方に変化していかなきゃならない。シンバルは、新品の状態から鳴らし込むにつれて倍音の出方なんかが少しずつ変化する。出来上がって3ヵ月目ぐらいが最初の転換点で、9ヵ月目くらいが次の転換点になるから、製品としてはけっこう前に完成していたけれど、最低でも8~10か月は実際に使って変化の具合いを確かめる必要があったんだ。倍音成分にしても、例えば強く叩いたときにゴングみたいな音の成分が混じっていると、鼻にかかった耳障りなサウンドになるけれど、この成分を完全に取り去ると、オケ中で鳴らしたときに音ヌケが悪くなってしまうから、多少残しておく必要があるんだ。このあたりの匙加減は、それなりの経験がないと判断が難しい。楽器店でシンバルを試すときには、あえて耳に綿を詰めて余計な倍音をカットしてみたり、オープン・タイプのヘッドホンで音楽を聴きながらシンバルを叩いて、音ヌケを確認したりしてみるのも良いと思う。僕はいつも実際に自分で使うつもりで楽器の開発に携わってきた。それはつまり、とても高いレベルの製品を求めてきたということでもある。だからANTHOLOGYにも、みんなが素晴らしい楽器とはどんなものなのかということを考えるきっかけになることを期待しているんだ。
Nerve’s Gear
ジョジョが自身のバンド=NERVEで実際に使用している最新セッティング。左手側にセットされた14″ハイハットと18″シンバルにはハイ・ベルをチョイス。右手側のライドの位置には、22″はロー・ベルをセレクト。中央に並ぶ2枚は“刻み用”で、左側が10″ヴォールト・フィアス・ハッツで、右側はプロト・タイプと思われる穴空きシンバルを重ねたジョジョ流のスタック・シンバル。ドラムはソナーで、フロア・タムの右横に小口径タムを組み込む特殊な3点キット。左手側にはローランドのバー・トリガー、BT-1が2台配置されている。
HHX ANTHOLOGYに関する記事は絶賛発売発売のリズム&ドラム・マガジン2022年7月号にも掲載しております。誌面も併せてぜひチェックしてみてください!