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ニール・パートが残した名演を振り返る〜1周忌追悼特集 ♯1〜

  • Photo:Mat Hayward/Getty Images
  • Text:Satoshi Kishida

プログレッシヴ・ロック・シーンを長年に渡ってリードし続けてきた、カナダが誇るスーパー・トリオ=RUSH。1974年に二代目ドラマーとして加入したニール・パートは、巨大セットを自由自在に操り、テクニカル&メロディアスなプレイを繰り広げ、世界中の演奏家に多大な影響を与えた真のドラム・ヒーロー。そんな彼が昨年1月に天国へと旅立ってから、早くも1年が経とうとしている。ここではニール・パートが残した名演を振り返ることで、あらためてその功績に焦点を当てていく。その第一弾として彼が残した全オリジナル・アルバムを紹介!

Discography〜オリジナル・アルバムから探るニール・パートの軌跡

2nd Album『Fly By Night』/1975年発表

前任ドラマーのジョン・ラトジーが健康上の理由で脱退し、本作(第2作)からニールが加入。前作までツェッペリン・タイプのハード・ロック・バンドだった彼らは、ニールの書く歌詞世界を音で表現するべく、重層的なプログレッシヴ・ロックへ舵を切る。M1「Anthem」、M4「By-Tor & the Snow Dog」は彼らの新たな自己像を告げる。


3rd Album『Caress of Steel』/1975年発表

ハード・ロックの香りとめまぐるしい曲展開の中、さまざなまドラム・フレーズを連打していくニールの若き才気が眩しい。10分超の大曲2曲を収録し、M4「The Necromancer」ではダークなブルースとトールキンの「指輪物語」の幻想性をミックス。M5「The Fountain of Lamneth」には短いドラム・ソロを含み、ニールが不可欠の存在となったことを示す。


4th Album『2112』/1976年発表

初の商業的成功(全米チャート61位)を手にした初期代表作。ハード・ロックの香りを残しつつ、表題曲の20分の大作「2112:〜」では、ニールがロシアの女流SF作家アイン・ランドに触発された歌詞を紡ぎファンタジックなスペース・オペラを展開。時代的にもハイピッチ・タムのメロディアスなフィルが斬新で先駆的。


5th Album『A FAREWELL TO KINGS』/1977年発表

初海外のイギリス、ウェールズ録音。プログレ/テクニカル・ハード黄金期の幕開け。表題作や「Xanadu」、「Cygnus X-1 Book Ⅰ:The Voyage」など名曲が揃い、複雑な曲構成の中、変幻自在にフィルを繰り出すニールのドラミングも本格開花。M3はライブで大合唱が起こる彼らの聖歌。シンセ使用など新機軸も。


6th Album『HEMISPHERES』/1978年発表

再びイギリス、ウェールズにて録音。前作の世界観を引きつぐ「Cygnus X-1 Book II: Hemispheres」は、ダイナミックなユニゾンと、個別のポリリズミックな展開のコントラストが爽快。3人だけとは到底思えぬオーケストレーションに磨きがかかった。初インスト曲のM4「La Villa Strangiato」はソロ・パートも含み、演奏力の集大成と讃えられた。


7th Album『PERMANENT WAVES』/1980年発表

大作主義から一転、ラジオでエア・プレイ可能な曲作りが効を奏し、全米チャート4位を記録。その名を一気にメジャーにした出世作。とはいえシングルのM1「The Spirit of Radio」も“らしさ”は健在で、8ビートとパワフルな変拍子が織りなすリズムは目眩くよう。レゲエやトラッド、エレポップの要素も加わり、音はより多様に。


8th Album『MOVING PICTURES』/1981年発表

全米チャート3位、400万枚のセールスを記録した名実共にバンドを代表する傑作。わずか数分間に圧倒的密度のドラム・フレーズが詰め込まれた「Tom Sawyer」や「Red Barchetta」が圧巻。モールス信号を模した5分の4拍子が強烈な「YYZ」はカルト的人気があり、ライヴではドラム・ソロ曲でもあった。


9th Album『SIGNALS』/1982年発表

前々作からの大成功に安住せず、シンセやシーケンサーなど電子楽器を大幅に導入し、新たな探求に出た80年代ラッシュ。ポリスやU2、シンプル・マインズなど英ニューウェイブ勢の流れにも呼応する。シンセがメロディをリードする「サブディヴィジョンズ」がヒット。レゲエやファンク・ビートも目立つ。


10th Album『GRACE UNDER PRESSURE』/1984年発表

音楽的方向性の違いから、第2作以来の盟友プロデューサー、テリー・ブラウンと離別。シンセ使用とエレクトロニクス化はニールにも及び、M3「Red Sector A」、M7「Red Lenses」でシモンズ(エレドラ)を本格導入した。M4「The Enemy Within」、M6「Kid Gloves」でスカ、M5「The Body Electric」などではアフリカン・リズムも。冷戦やホロコーストを扱った歌詞も一筋縄では行かない。


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