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“王道×革新”で生まれ変わるパール・ドラムスの最高峰! Pearl HIGH-END REIMAGINED ♯2
- Report:Yusuke Nagano
- Photo:Taichi Nishimaki/Keishi Sawahira(Report)
2021年に創業75周年の節目を迎えた日本を代表するトップ・ブランド=パール。アニバーサリー・イヤーを経て、進化を加速させてきた同社が今年、“ブランド再定義”を掲げて、国内外のトップ・ドラマーを魅了してきたハイエンド・モデルを再編。新構造に迫った♯1に続いて、この♯2ではLEVINによる4機種の試奏レポートと去る5月に行われたイベント・レポートをお届けする!
Ⅰ.Sound Check
生まれ変わったハイエンド・モデル
4機種をLEVINが叩く!
【Reference One】
硬過ぎず、丸過ぎず、守備範囲の広い
パールの基準になるドラム
Reference Oneは硬過ぎず、丸過ぎず、守備範囲の広いドラムですね。ヘッドやチューニング次第でどんなジャンルにでも使える包容力のあるパールらしいドラムだと思います。帯域としてはミディアム・ローが豊かなタイプで、まさに今の日本の音楽シーンのトレンドになっている音色だと思います。
最近感じるのは、また丸みのある中域に寄った音が若者を中心に好まれていて、Reference Oneはそのトレンドにも対応できると思いますし、最新スペックのドラムなのでチューニングがしやすく、安定するという点も魅力だと思いますね。レスポンスがダイレクトに感じられるので、速いフレーズを多用するドラマーにも合うと思います。叩き心地も素晴らしくてタムは目の前ではっきりと発音してくれるし、キックも打点が明確で、踏みにくさを感じる人はほぼいないと思います。
生音も良いんですけど、これはマイクを通したときもめっちゃ良い音がしそうです。レンジが広いし、鳴りもすごく豊かなんだけど、余計な成分が出てない。分離も良いので、レコーディングには理想的なドラムですね。
R2 AIRタム・サスペンションシステムの影響なのか、弱く叩いてもちゃんとそのニュアンスを表現してくれるのも素晴らしい。今回試奏した4台のセンターに位置するというか、パールの基準になるドラムで、これを買っておけば後悔することはないと思います。
【Masters Maple/Gum】
タム、フロア・タムのミディアム~ローの膨らみは
他のシリーズにはない魅力
Maple/GumはReference Oneとはかなり異なる印象を受けました。芯はあるけど、より丸みのあるとてもリッチな音色に感じましたね。ガム・ウッドを採用しているということで、もっと落ち着いた、地味な方向性のドラムなのかとイメージしていたのですが、想像以上に豊かな鳴りで驚きました。
Reference Oneはシャープに分離良く個々が鳴ってる印象に対して、Maple/Gumはドラムセット全体で一つになって鳴っている感じ。手数足数が多く硬質を好むロックやメタルよりも、アンサンブルの中でドラムが主張しすぎない歌モノ系のスタイルの方に合うと思いました。小口径をハイピッチにするジャズ・ドラマーにも合いそう。
タム、フロア・タムのミディアム〜ローの膨らみは他のシリーズにはない魅力で、ショット次第で歌心のあるダイナミクスも表現できます。ただキックの立ち上がりがやや緩やかな印象で、そこは好みが別れるかもしれません。ミュートしてしまえば立ち上がりは気にならなくなりますが、このシェルの個性を生かすならミュートは適量に抑えたいところ。
俺はキックの打感がとても重要なので、例えばキックはReference Oneとか、好みに合わせたシェルの組み合わせを見つけるのも良いかと思いました。
【Masters Maple】
ベーシックとして外せないパール・サウンドが進化
Masters Mapleはリハスタなんかでよく聴いてきた、昔からあるパールのサウンドで、ベーシックとして外せないドラムですね。鳴りが派手で、レスポンスも速く、叩いた反応がダイレクトに感じられるので、とにかく演奏しやすい。
レンジが広くてチューニングもしやすいですし、PAさんやエンジニアさんも録り慣れている音だろうから、現場でも重宝されるドラムだと思います……もうこのままの状態ですぐにでもレコーディングができますよ(笑)。
よく知っている音なんですけど、マウントが新しくなった影響か、ダイナミクスの解像度が上がった印象で、シェルが鳴っているのがよくわかります。初心者もある程度叩けるドラマーも、迷ったらこれを選べばまず間違いないと思います。
【Masters Maple Pure】
マウントの影響でランク・アップしたアメリカン・サウンド
Masters Maple Pureは個人的にずっと使ってきたシェル構成で、特徴としてはアタックと胴鳴りのタイム・ラグが少ないドラムなんです。音もドンシャリなので、すごく派手に聴こえるんですけど、これもマウントのおかげなのか、やはりダイナミクスの解像度が上がって、より明るさが増しているように思いました。俺が使っているものと同じシェルのはずなんですけど、何かワンランク上がったような気がしますね。
サウンドの方向性がアメリカンな感じなので、このセットだったら、ロッドも新しいLロッド・アームのホルダーが似合いそうですね。今日初めて触ったんですけど、違和感もなくて、すぐに慣れそうです。この派手な音によく似合う、カッコいいセッティングが浮かびそうです。
高い完成度のパールらしいドラム
この4台であればどれを選んでも間違いない
4台すべてパールらしいドラムだなと思いました。ドラムは環境に左右されるので、楽器屋さんで試奏して気に入っても、ステージで使ってみるとちょっと違うって感じることがたまにあるんですけど、この4台であればどれを選んでも間違いないと思います。そのくらい完成度が高いです。
その中でもReference Oneはセンターに位置するというか、一番守備範囲が広い気がしますね。硬い方にも、柔らかい方にもどちらにも振れるので、まずこれから試してみるのが良いと思います。もう少し硬質な方が好みだったらMasters Maple、もっと丸い音が好みだったらMaple/Gum、もっと明るい方向に振りたかったらMaple Pureという感じです。今回はヘッドが標準装備のコーテッド・アンバサダーだったので、そういう感想になりますけど、ヘッドを変えることでまた違ってくるだろうし、より好みの方向に近づけることもできると思います。とにかく叩ける機会があったら、全部試してみてほしいですね。
R2 AIRタム・サスペンションシステムに関しては、それぞれの試奏の中でも触れたように、ダイナミクスの解像度が上がっていて、小さい音でもしっかりと鳴ってくれる。あとは4点でしっかりと支えているという安心感がありました。従来のマウントと叩き比べてみると、揺れの差は思ったほどはなかったんですけど、見た目も含めて安心感は増していると思います。
個人的に楽器で一番重要なのはヴィジュアルだと思っているので、タム・ホルダーが選択できるようになったことはすごく良いと思います。性能が上がったと言えるくらいの違いで、より所有欲を満たすことができると思いますね。アレンジできる幅も広がったので、楽しみも増えるし、すでにこのLロッド・アームのタム・ホルダーを使って3タムをどうカッコ良くセッティングできるのか、想像しています(笑)。それはDaizyStripperの風弥がアイディアマンなので考えてくれるでしょう(笑)。
見た目で言うと、Reference Oneはカバリングだと思ったらラッカーということで、フィニッシュのクオリティの高さに驚きました。個人的にはフィニッシュもシェルの1つだと思っていて、硬質にしたかったらカバリング、ファットな感じにしたかったらラッカーという感じで考えていたんですけど、カバリングのヴィジュアルでラッカーの鳴りが選べるというのはすごく魅力的だと思います
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