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“王道×革新”で生まれ変わるパール・ドラムスの最高峰! Pearl HIGH-END REIMAGINED ♯1
- Photo:Taichi Nishimaki
- Text:Yusuke Nagano
Ⅲ.Spec Analysis ②
L-RODアーム方式 vs パイプ・マウント方式
タム・ホルダー比較検証
ドラム・メーカーの個性は、ドラム・セット本体のサウンドやヴィジュアルだけではなく、ハードウェアにも大きく表れます。その中でもタム・ホルダーは、セッティングの機能面はもちろん、見た目の印象においても重要な役割を果たします。
筆者はバス・ドラムのフロント・ヘッドのメーカー・ロゴが確認できない写真や、ドラムが描写されている音楽アニメなどでメーカー名を推測する際に、タム・ホルダーの形状を手がかりにすることもあります。そういう意味でもタム・ホルダーのデザインは、ドラム・セットの“顔”の一部と言っても過言ではないでしょう。
パールでは、長年に渡って直径22.2mm(7/8″)のパイプ・マウント方式のタム・ホルダーを一貫して採用。その堅固で安定感に優れた構造は、パワー・ヒッターをはじめ、タフなツアー環境などで使用する多くのプロ・ドラマー達に、大きな信頼感で受け入れられてきました。そこに今回、新たにLロッド・アームのタム・ホルダー、GyroLock-Lが加わったわけですが、これはパールの歴史の中でも、とても大きな出来事と言えるでしょう。
ここでは“セッティング性”、“使い勝手の良さ”、“サウンド&ルックス”を3点絞って2つのタム・ホルダーを比較検証してみました。
【Check 1.セッティング性】
まずは最も重要な“セッティング性”から比較してみたいと思います。新たに発表されたLロッド・アームのタム・ホルダーでは、12.7mm(1/2インチ)とやや太めな直径のロッドが採用されています。これは汎用性が高いサイズということですが、実際にタムをセッティングして叩いてみると、その太さ故の剛性の高さが安定感につながっていると感じます。
調整部分には、縦横フレキシブルに回転するジャイロ・ロック機能が搭載されており、キーボルト1本で調整が可能。さらにLロッド・アームでは前後の調整と横回転の調整が行えるため、細かいアングルが設定しやすいのも好印象です。
従来のパイプ・マウント方式のタム・ホルダーも上級機種には、角度の調整部分にジャイロ・ロック機能が採用されているため、操作感に大きな違いはありませんが、高さの微調整に関しては、Lロッド・アームは垂直方向に伸びたロッドの余剰部分を生かして、タムのみを独立して上下移動できるため、取り回しが簡単だと感じました。
また全体的な高さの調整範囲は双方とも変わらず、低いアングルでのタムのセッテイングに関しても、Lロッド・アームはまったく問題ありません。ちなみにパールのジャイロ・ロック機能はパーツがすべて金属であるため耐久性に優れているということですが、これは先に述べた剛性の高さにも貢献しているでしょう。
もちろん伝統的なパイプ・マウント方式のタム・ホルダーも継続して発売されるので、ユーザにとっては、好みによる選択肢が増えたということになります
【Check 2.使い勝手の良さ】
続いてチェックするのは“使い勝手”の良さについて。これはセッティングのしやすさにもつながる部分で、試奏時に細かい差として感じたのは、タムを水平方向に抜くか、垂直方向に抜くかという部分。垂直方向に抜くLロッド・アームは、タム類を脱着するときに、スネアやフロア・タムと接触する可能性が少ないため、セッテイングの変更を素早く行える利点があります。
一方の水平に抜くパイプ・マウント方式は、大型のタムなどを脱着の際に上に持ち上げる必要がないので、小さな子供でも負担が少ないでしょう。またタム・ホルダーに装着した状態のままでタムを反転できる点も特徴で、ボトム・ヘッドの調整を簡単に行えるというメリットもあります。
【Check 3.ルックス&サウンド】
最後はドラム・セットの“顔”としての、タム・ホルダーの見た目=ルックスのイメージですが、筆者の主観としては、良い意味で伝統的なパールのルックスが大きく変わった印象は受けませんでした。その要因としてパールのトレードマークの1つでもある、バス・ドラムのベース部分から2本のポールが伸びる方式が貫かれていること。そして角度調整のティルター部分の円形のデザインが踏襲されていることの2点が挙げられると思います。メーカーとしてのアイデンティティがしっかりと引き継がれていることが感じられ、長年のパール・ファンにも安心材料と言えるでしょう。
もう1つ、最も気になるサウンド面についてですが、新しいLロッド・アームも従来のパイプ・マウント方式も、基本的には音色が変わらないということです。Lロッド・アームのタム・ホルダー・ブラケットは、新型サスペンションシステムR2 AIRのみに搭載。R2 AIRは前ぺージでも解説した通り、タムの振動をマウント部分に逃さない設計となっているため、タム・ホルダーの形状の影響をほとんど受けないそうです。
タム・ホルダーの選択は、ハイエンド・クラスに関しては、オーダーする際に選択することが可能。それ以下のモデルでは、オプションとしてLロッド・アームのタム・ホルダーを別途購入することができますが、その際にはLロッド・アームに対応するR2 AIRタム・サスペンションシステムも併せて入手する必要があります。
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