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    Studio GT ✖️ CANOPUS ✖️ アコースティックエンジニアリング feat.河村”カースケ”智康〜スペシャリスト達が語る良いスタジオ、良い楽器、良い音〜

    • Recording:Tomoyuki Shikama[EDo-mae Recordings]
    • Photo:Taichi Nishimaki/Movie:Shigeki Azuma
    • Interview & Text:Isao Nishimoto

    カノウプスのフラッグシップ・モデルとして高い人気を誇るゼルコバ・スネア・ドラム。近年はその技術を生かしてドラム・セットも製作し、世界的に大きな注目を集めている。そのゼルコバ・セットを、上質な音響環境で体験できる場所がある。埼玉県川口市のGTミュージックスクールスタジオGTだ。ドラマーの滝川 岳氏(タイトル画像右側)が校長を務める音楽スクールであり、リハーサル・スタジオでもあるこの場所で、スクール生はもちろん一般のリハスタ利用者もゼルコバ・セットを叩くことができるという。スタジオの設計/施工はアコースティックエンジニアリングが手がけており、音の良さは折り紙つき。そこで今回は、同スタジオのゼルコバ・セットを使ったデモンストレーションを河村“カースケ”智康に依頼。その無二なる魅力を余すところなく収録した動画を作成した。

    Special Talk Session

    プレイヤー/楽器/部屋の三者が高いクオリティでバランスすることで、“良い音”が生まれる。今回の動画はそのことを雄弁に伝えてくれる。以下にお届けするのは、動画の収録後に行ったアフター・トーク。カースケ&滝川氏の両名に加え、カノウプスで製品企画開発を担当する鈴木隆司氏と、アコースティックエンジニアリングの代表・入交研一郎氏も参加。それぞれの立場からの“良い音”に対するこだわりを読み取っていただけたら幸いだ。

    (L→R):入交研一郎[アコースティックエンジニアリング]、河村”カースケ”智康、滝川 岳[GTミュージックスクール/スタジオGT]、鈴木隆司[カノウプス]

    ゼルコバのセットは
    どんなシチュエーションでも“使える”

    カースケさんはゼルコバのスネア・ドラムを何台も愛用されていますが、それまでは金属スネアをメインに使っていて、木胴のスネアも使うようになったのはゼルコバがきっかけだったそうですね。

    カースケ もともと木胴のスネアがあまり得意じゃなくて、チューニングもなかなか自分でしっくりくる感じにできなかった。それで金属のスネアをわりと多く使ってきたんですけど、ある日、もっと大きな音の出るスネアがないかなと思ったとき、そう言えばカノウプスにはゼルコバがあったなと……ゼルコバは音がデカいと聞いていたので。

    それで使ってみたら感触が良くて、そこから他の木胴も自分なりにコツを覚えて、いろいろ使えるようになっていった。その大元がゼルコバだったんです。でも、まさかセットができるとは思ってなかったのでびっくりしました。

    鈴木 すべての始まりは、弊社代表の“ゼルコバでセットを作れ”という鶴の一声でした(笑)。最初は“エッ!?”って思いましたよ。実際に作るとなると、やはり口径を大きくすることが大きなネックでしたが、ようやく製品として販売できるところまで辿り着きました。と言っても、セットを作れるだけの木材を確保するのは簡単ではなく、製作時間も一般的なシェル以上にかかるので、納期はかなり長くなりますが。

    カースケ ゼルコバでドラム・セットを作るのはそのくらい大変なんだよね。だから値段も高いし、本当にスペシャルなものなんだろうなと思う。

    ●今回のデモ演奏にあたって、セッティングとチューニングもカースケさん自身が行っていましたが、第一印象はどうでしたか?

    カースケ やっぱり、カノウプスのドラム・セットっていう感じ。自分がいろんなセットを使って慣れているっていうのもあるけど、カノウプスらしいチューニングのしやすさがありました。

    Studio GTのGスタジオに設置されているカノウプスのゼルコバ・セット。欅材を完全くり抜き胴で仕上げた希少なモデルで、サイズは18″×14″BD、12″×8″TT、14″×14″FTという構成。スネア・ドラムはカースケ所有のゼルコバ・スネア(14″×6.5″)で、ブラック塗装を施した特別仕様。
    シンバルはカースケが持参したもので、左からジルジャン14″ Kカスタム・ダーク・ハイハット、ユーヒップ 20″エクスペリエンス・シリーズ・チャイナ、ジルジャン20″ Kカスタム・ダーク・クラッシュ、18″ Kカスタム・ダーク・クラッシュと並ぶ。

    叩いた感想は動画で話していますが、こういうシチュエーションで使ってみたいというようなイメージは湧きましたか?

    カースケ 湧きました。というか、どこでも使えますよ。向き不向きみたいなことは何もないです。

    滝川 これは本当にそうで、もちろん良いものだということは最初からわかっていましたが、そうは言ってもバス・ドラムは18″だし、使いどころを選ぶんじゃないかと少しは思っていたんです。でも全然、何でもいけますよね。

    カースケ そもそも、僕は小さいセットも持ってますけど普通に使ってますから、サイズに対する先入観みたいなものは全然ないんです。カノウプスに関しては特に。それで、今回実際に叩いてみたら、音量も含めたすべてにおいて、“使える”ドラムだと思いました。

    滝川 僕もまったく同感で、動画では“普通の最上級”とコメントしました。そう言える楽器はとても少ないと思います。

    “Made in Japan”の良いイメージに応えるために

    滝川さんも、以前からゼルコバのスネアを所有されているそうですね。

    滝川 不思議な感覚なんですけど、音は大きいのにうるさくないんですよ。ものすごく心地良い。他のドラムでは出せないアタック感があって、それでいてミュートがまったく必要ない。セットに関しても、バス・ドラムも含めてノー・ミュートでも音がまとまるんです。これはどういうことなんでしょうか。

    鈴木 シェルの形状が関係していると思います。くり抜き胴を普通のシェルのような筒状の形にすると、1点からの力にすごく弱くなるんです。それでスネアの開発時にトライ&エラーを何回も繰り返した結果、シェルを球体の一部のようなに形にすると、1点からかかった力が分散され、壊れにくくすることができました。

    内面もそれに沿って厚みを均等にとっていき、樽のような形にしたのが当社のゼルコバ・シェルです。この樽状の形が、サウンド面でも役に立っています。レインフォースメントの有無が音に影響するのと同じように、中心というかコアの部分に、ポンとしたものが残るんです。

    滝川 シェルの形と言えば、エッジもカッコいいですよね。刀みたいで。

    カースケ そう、シュッと鋭くてね。

    鈴木 一般的な筒状のシェルは、強度や響きなども考慮して内角を30~45度くらいにするのが普通なんですけど、ゼルコバの場合、ヘッドからの振動を胴に効率良く伝えるには常識はずれの鋭角が必要だったんです。

    滝川 すごくカッコ良いですよね。ヘッドを外したときはいつも感動しますよ。木の色味もすごく綺麗ですね。ちょっと赤みがかっていて。

    鈴木 樹齢が若いときにはそれほど赤みはないんですけど、100年を超えると少しずつ赤褐色が強くなってくるんです。ゼルコバには樹齢200年の”赤木”と呼ばれる希少材を使っています。

    カースケ そういう“和”の感じもいいよね。まさに和太鼓みたいな感じ。日本人としてはグッとくる。

    そんなゼルコバで作られたドラム・セットを、ここで叩けるというのはスタジオの大きなセールス・ポイントですね。

    滝川 ありがたいご縁があって、ゼルコバのセットを所有することになったのですが、これは自分だけが独り占めしてはいけない、広めなければという気持ちになって、スタジオに置くことにしました。GTミュージックスクールの生徒さんと、スタジオGTの利用者でこの部屋を使ってくださる方は、世界的にも貴重なこのドラム・セットを叩いていただくことができます。

    鈴木 たくさん作ってたくさん売るという性質の楽器ではないので、我々としてもありがたいです。

    滝川 でもそういう楽器って、情熱がないと作れないですよね。

    鈴木 フラッグシップとしての可能性も含めて、楽器としてどこまで作れるのかというのが一番にありました。ゼルコバは海外からの注目度もすごく高いので、こういうものを日本の職人の技術で作って出していくことには大きな意味があると思っています。海外の人が持っている“Made in Japan”の良いイメージに応えることが、我々に課せられた使命なのかなと。

    実際に利用された人の反応はいかがですか。

    滝川 めちゃくちゃ感動していただいてます。“気持ち良かった”って。それだけの価値があるということを提示する意味も込めて、リハスタとしての料金は他の部屋より高く設定しているのですが、今後は叩いていただける機会をさらに増やすために、いろいろ考えているところです。

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