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    縁深いアーティスト陣が集結した屋敷豪太還暦公演〜Happy 60〜

    • Text:Yuichi Yamamoto(RCC Drum School)/Photo:Mariko Miura

    “ドラマーにとって本当に大切なことは何か?”も学べた
    豪華構成のアニバーサリー・ライヴ

    東京国際フォーラム・ホールA。ビッグ・アーティスト達が名演を繰り広げる国内最高峰のホールで、8月9日、1人のミュージシャンの還暦を祝うコンサートが繰り広げられた。タイトルは“屋敷豪太〜Happy 60〜”。そう、この日の主役はドラマー、コンポーザー、アレンジャーとして世界の音楽シーンに名を轟かせた“GOTA=屋敷豪太”氏(以下敬称略)。ゲストには豪太と縁があり、このホールAを満員にできる豪華アーティスト達も集結。ノンストップで3時間におよぶ超ゴージャスな内容ゆえ、ピックアップしつつの駆け足となるが順に紹介していこう。 

    ステージの司会進行はクリス・ペプラー。開演を告げる彼の登場だけで特別感がグンと高まる。そしてオープニングは今回のホスト・バンドのメンバーでもある田中義人(g)、大神田智彦(b)と豪太が結成した“The Osmanthus”。ごくごく普通のドラム・フィルが最高の音で鳴り響いた瞬間から至福のステージがスタート。“ドラマー屋敷豪太”の魅力を体感するには開演から数秒も要さなかった。続いてゲストのトップは奥田民生。ベースには奥田のバンド・メンバーでもある小原 礼が加わり、貫禄のサウンドで代表曲の「愛のために」を披露。会場は一気にスタンディングとなって盛り上がりを見せる。その流れのまま屋敷豪太&小原 礼によるユニット“The Renaissance”のコーナーへ。ここで豪太はギターを携えてフロントに立ち、ドラマーの座には“名手”奥田民生。ウクライナの人々に向けて作られた「NOT YOUR SLAVE」が優しくも力強く奏でられた。

    続いてスクリーンが下り、豪太の少年時代から渡英前までのさまざまなヒストリーが映し出される。その中でも20歳で東京に出て来たときに訪ねた、村上“ポンタ”秀一氏の助言により多くの出会いを重ね、それが“MUTE BEAT”へと繋がったという話は印象深かった。

    続いてのステージはUA&大沢伸一。UAのパワフルで深遠な歌声と大沢のツボを押さえたベースが豪太のビートと融合し、UAの代表曲「情熱」を含めてステージの景色をガラッと変えてゆく。

    さらに情景が変わるのは次のゲスト、葉加瀬太郎のセクション。葉加瀬の奏でる表情豊かな旋律と、それを支える豪太のハートフルなドラムは歌モノと何ら変わらぬ感動。特に2曲目に披露されたヘンリー・マンシーニの名曲「ひまわり」の豪太ver.は素晴らしいアレンジで、今の困難な世界情勢と映画“ひまわり”のラストシーンとが重なり合うような名演であった。

    続いてはスガシカオを筆頭に豪太もメンバーである“プロフェッショナル”な集団、“KŌKUA”のステージ。生演奏&大音量で聴けた「Progress」、そしてスガの代表曲「午後のパレード」をオリジナルの“豪太ドラミング”で聴けたのには胸がグッと熱くなった。その後再びスクリーンが降りJUJU、斉藤和義、Charaからのお祝いメッセージが届く。

    後半のゲストには槇原敬之が登場し、代表曲の「遠く遠く」からスタート(サックスには藤井尚之)。当時ロンドンで活動していた豪太が「この曲は大きな支えになった」と振り返れば、槇原は豪太との初共演(TV番組)でこの曲を歌ったときに「この人と一緒にツアーがしたい!」と思ったという互いのエピソードを披露。そこから紡がれてきた2人の絆を感じさせる温かいコーナーが繰り広げられた。そのメンバーのまま、最後のゲストとなる藤井フミヤがステージ上に呼びこまれ、フミヤのナンバー、「着メロ」(詞・曲/槇原敬之)を共演。どちらのファンにとっても喜ばしい貴重なシーンとなる。そこから藤井兄弟のコーナーへと続き「挨拶代わりの曲を……」と言って始まった「TRUE LOVE」、さらにチェッカーズの「星屑のステージ」の2曲をほぼ原曲アレンジのまま披露。尚之のソロも含めての“本物感”には彼らのファンのみならず圧倒されたであろう。

    そして終盤。藤井フミヤ&奥田民生による「嵐の海」、葉加瀬太郎&UAによる「Nothing Compares 2 U」の演奏があり、いよいよ本編の最後に盟友、ミック・ハックネルとの共演。残念ながら来日こそ叶わなかったが、シンプリー・レッドのコンサート中に「GOTAのお祝いのために」と収録されたライヴの映像&歌声が届けられ、名曲「Stars」がリモート&生演奏された。ミック&豪太の黄金コンビは言わずもがな、サイドを固めたKŌKUAメンバーの職人技、さらにスガシカオと槇原敬之がコーラス参加という特別編成のシンプリー・レッドは完璧! あたかも“ミックwith日本代表”のような今宵限りの「Stars」が輝いた。

    鳴り止まぬ拍手の中、全出演者が舞台に揃って始まったアンコールは“藤井兄弟=F-BLOOD”の代表作「白い雲のように」、そして最後の最後はGOTA & THE LOW DOGの1stアルバムに収められていた「Mother Earth Calling」を豪太の“叩き語り”で演奏。時に熱く、時にクールで、何よりも温かさに満ち溢れたコンサートが幕を閉じた。

    ……と、長々と書いてみたが、これでも内容の半分くらいしか紹介できていない。この模様は10月29日にWOWOW(詳細はこちら)で放映予定とのことで、会場に行けなかった方もぜひチェックしていただきたい。

    さて、筆者がこのコンサートの中で深く心に残ったのは、charaからのビデオ・メッセージにあった「屋敷豪太さんのドラムで歌うのが私は大好きだぜー!」という一言。そう、“ウマい”、“カッコいい”、“グルーヴ云々”を越えた次元で、シンプルに「豪太さんのドラムで歌いたい」というのが今回集まったシンガー達に共通する思いだろう。ドラマーにとってこんなに名誉な言葉はない。とてつもなく豪華な構成で楽しめた中、“伴奏者”であるドラマーにとって本当に大切なことは何か?もあらためて学べたコンサートであった。

    ●出演者
    屋敷豪太/kōkua(スガシカオ・武部聡志・小倉博和・根岸孝旨・屋敷豪太)/葉加瀬太郎/UA/大沢伸一/奥田民生/藤井フミヤ/藤井尚之/槇原敬之/ミック・ハックネル(シンプリー・レッド:リモート出演)※順不同
    MC:クリス・ペプラー

    ●演奏参加メンバー
    小倉博和/田中義人(g)、小原 礼/大神田智彦/根岸孝旨(b)、武部聡志/斎藤有太/トオミヨウ(key)、スパム春日井(per & manipulator)