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Archive Interview – ピエール中野[凛として時雨]2015年10月号
- Interview & Text: Shinichi Takeuchi Photo:Taichi Nishimaki
ピエール中野[凛として時雨]のアーティスト・ブック発売を記念し、ドラマガWebでは本書の特設サイトを公開中! ここでは試し読みコンテンツとして、書籍に再収録している本誌掲載インタビューの一部をご紹介。ラストとなる第7弾は、リズム&ドラム・マガジン本誌2015年10月号でお届けした、ミニ・アルバム『es or s』リリース時のインタビュー。デヴィッド・ボウイをはじめ、錚々たるアーティスト達の名盤を多数生み出した、ドイツのハンザ・スタジオでのレコーディングについて語っている。
リズム&ドラム・マガジン2015年10月号掲載インタビュー
日本とドイツの違いはやはり音
ドラムの鳴り方も録れ音も全然違った
●事前にツイッターで本誌のインタビューで話してほしいことを募集されていましたが、どんな質問がありましたか?
ピエール 機材についての質問が多かったですね。
●なるほど。新作『es or s』のレコーディングでは、新しいSilver Star Mirageは使ったんですか?
ピエール 今回はドイツでレコーディングしたので、現地で借りました。海外だと持っていけるものは限られてきますからね。日本から持っていったものは、シンバルー式にペダルと第一弾のシグネチャー・スネアですね。
●何をレンタルしたのですか?
ピエール TAMAのブビンガ・バーチのセット(Starclassic Performer B/B)です。サイズは日本で使っているものと一緒ですね。僕も持っていて一時期はメインで使っていました。最初は音作りがなかなか難しかったんです。でもよく言われることですけど、1〜2年使うと急に化けるんですよ。サウンドに広がりが出てきて、すごく鳴るようになる。それがブビンガ・バーチの特徴だと、個人的には思っています。
今回、借りたドラムもすごく“育っている”状態でした。保管状態がとても良かった。聴いてもらえばわかると思いますが、音がめちゃめちゃ太くて、鳴り狂っているんです(笑)。“何だ、このドラム! 永遠にずっと叩いていられる!”というくらいびっくりしました。感動的でしたよ。
●それは単なる個体差ではなく、ドイツという環境の中で“育った”からこそですね?
ピエール それもあると思います。ドイツの湿度や天候といった環境に馴染んでいたからでしょうね。あとは、管理が良いことで有名な楽器レンタル会社だったので、それも大きいかと。
●そもそも、なぜドイツで録音を?
ピエール 海外でレコーディングしてみたいとずっと思っていたんですよ。それがついに実現しました。予算的にウチはメンバーがエンジニアもできるんで、メンバーだけで行っても何とかなるんです。それでスタジオの機材がどうなっているのかを調べました。一番、バンドに適した機材が揃っていたのがベルリンのハンザ・スタジオでした。それとTKが以前、個人的な旅行でベルリンに行ったことがあって、そのときもしコーディング・スタジオを探して録音して帰ってきたことがあって……今回とは別のスタジオだったんですけど、その感じがすごく良かったので、“いつか時雨で行ってみたい”って言っていたんです。それもあってベルリンになりました。
●ハンザ・スタジオというと、デヴィッド・ボウイやデペッシュ・モードなどニューウェイヴの名作が生まれたスタジオですよね。
ピエール そうなんです。個人的にはベルリンはテクノの街というイメージもありますね。海外で録音してみたら、どうなるんだろうってミュージシャンなら誰でも興味があると思うんですよ。最近は海外レコーディングやライヴをやっているバンドも多くて、みんな“やっぱり違う”ってインタビューなどで発言していて、そういう発言を聞くと、どれくらい違うんだろうと思いますよね。逆に“日本と変わらない。機材もスタジオ設備も整ってるし、日本の方が家に帰れるから良い”って言う人もいて、果たして、どれが本当なんだろうと。だったら、体験してみるしかないですよ。で、実際行ってみたら、海外は良かった……いや、ハンザ・スタジオが良かったんでしょうね。
●どんなところが良かったですか?
ピエール 先ほども言った通り、まずは音です! これは楽器をやっている人なら誰が聴いても感じると思いますよ。ドラムの鳴り方も全然違いましたし、何ならイヤモニから聴こえてくる音すら違いました。それは気持ちの問題ではなく、冷静に判断して明らかに違うんです。
●日本と音が違うのは電圧が違うからとか、湿度が違うからなど諸説ありますけど、要因は何だと思いますか?
ピエール 何でしょうね。でも、気分だけではない何かがちゃんとあって、明らかに違います。ベルリンには世界一と言われているクラブがあって、そこに遊びに行ったんですけど、音がめちゃくちゃ良かったんです。“こんな気持ち良い音があるのか!?”というくらいの音を浴び続けることができる。そんな体験ができたという部分も含めて、行って良かったと思いますね。また、ベルリンで録りたいです。
Review 〜当時のインタビューを振り返って〜
ピエール中野「ドイツでのレコーディングは滞在生活も含めて楽しかったはずなんだけど、実は帰国後に円形脱毛症になってしまって、Perfumeフェス出演したときも実は2箇所ほどハゲていたという。ミュージシャンとかバンドマンは意外ともろくて危ういというのを身を持って経験してます。現地でのRECはインタビュー通り、とても刺激的で貴重なモノでした。ドイツという国自体、もともと好きで行ってみたかったので、実現したのは本当にうれしかったです。ご飯もビールもおいしくて、クラブも楽しかったし、何のストレスが原因だったのかいまだに謎です。初期大森靖子バンドで鍛えられまくった話も出てきますね。この出会いも大切で、ドラムの役割をもっと多角的に捉えられるようになったし、表現に対するアプローチを最速で表現するための方法を確立した時期でもあります。振り返ると大きく成長する時期でもあったから、あんまり無理するなって身体がサインを出してくれていたんだろうなー」。
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【イベント内容】
YouTubeトーク生配信
配信日時
2020年12月25日(金) 19:30 ~(約60分の配信を予定)
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ピエール中野[凛として時雨]
今年CDデビュー15周年を迎えた凛として時雨のドラマー、ピエール中野。ドラマーとしてはもちろん、プロデューサー、DJ、MC、ヘッドホン/イヤホンの監修など、その才能を多方面で発揮している。本書ではそんなピエールのマルチな魅力をさまざまな角度から掘り下げていきます。録り下ろしによる最新の超ロング・インタビューでは、そのルーツやドラマーの軌跡はもちろん、求められる自分になる方法や、セルフ・プロデュース術などにもフォーカス。ドラム・セット5台、スネア・ドラム24台を核とした膨大な機材コレクションや、愛用のイヤモニや監修したイヤホンも30ページ以上に渡って掲載! さらにリズム&ドラム・マガジンでこれまでに行ってきたインタビューを再収録する他、関係者によるコメントや撮り下ろし写真を駆使したプレイ・スタイル分析なども掲載。ドラマーとしての魅力を凝縮したアーティスト・ブックでありながら、“人生の歩き方”もわかる世界的にも類を見ない1冊です。
-掲載予定コンテンツ-
Special Interview
Biography
Gear
Drumming Style
Archive Interview
Discography、etc.