SPECIAL

UP

TOSHI NAGAIが惚れ込んだIEMメーカー=qdc! 新たなカスタム・モデル製作に密着!!【前編】

  • Photo:Taichi Nishimaki
  • Text:Shinichi Takeuchi(About Products)

②Introduction〜TOSHI NAGAIが求めるカスタムIEM〜

まずはTOSHI NAGAIがqdcでカスタム・モデルを製作したいと思った経緯について話を聞いていこう。GLAY、T-BOLANを筆頭に豪華ミュージシャンを支え、大規模会場で演奏するTOSHIを唸らせたユニバーサル・モデルのSUPERIORの実力、同モデルを通して感じたqdcの特徴/魅力とは?


qdcは密閉度が程良く
音質も申し分なかった
自分にとって初めての経験だった

●TOSHIさんは常々、“ドラマーにとってイヤモニは命”というお話をされていますが、あらためて説明いただけますか?
○ミュージシャンはやっぱり耳が命なので、それを守るイヤモニもドラマーにとっては命ですよね。大きな音が耳の中に入ってこないよう密閉した上で、コンプをかけて極力小さな音でモニターしたら、エアー(ウェッジ・モニター)で聴くよりも耳が悪くならないんじゃないかなというのが僕の持論です。

加えて“イヤモニは命”と言うにはもう1つ理由があって……これも以前お話ししたんですけど、ライヴで使う場合、ギターのコード感がきちんとわからないと、次の展開にいけないような曲もあったりして、イヤモニのチューニングが偏っていると、いくら音量を調整してもクリックが大きすぎたり、ドラムが大きすぎたりして、そのコード感がマスキングされてうまく認識できなくなってしまうんです。基本的に同じビートを繰り返すことの多いドラマーにとって、そういう変化がわからないことは致命的なんです。

音質に関しては、解像度の高さが必要だと思います。画質の悪い写真を拡大してもずっと画質が悪いのと同じように、画質=音が良ければ、そんなに拡大しなくてもすべてが精細に見えるので、そんなに音量を上げなくても良くなりますよね。

密閉性に関しては、メンバーとアイコンタクトしたときに笑ったりすると、耳の骨格が動いてイヤモニがズレたり、ライヴの後半で汗が耳に入ったりすると、外の音がその隙間から入ってきて、それまで聴いていた何倍もの音が一気に耳に入ってくるんです。ヴォーカルは歌を歌うのに口を動かすから尚更ですよね。そういう点に関しては、密閉性、特にどんな状況下でも安定して密着してくれるものがいいですね。

●理想としては、外音は完全にシャットアウトしたいということですね?
○できればそうであってほしいと思っていましたし、今、GLAYのライヴ現場で使っているイヤモニも耳型を採って作った完全密閉型なんですが、昨年qdcのSUPERIORを試したときに、耳に入ってくる生音の良い部分も、多少であれば残しておくのもありかなと思ったんです。すべてをシャットアウトしてしまうと、イヤモニのチューニングによってはシンバルのハイの成分がカットされてしまって、よく聴こえなくなってしまって不必要に力んで叩いてしまう、ということもあったんです。でもSUPERIORは程良い密閉度で、生音がとても自然に聴こえてきたので驚きました。

イヤモニに返ってくる音っていうのは、厳密に言うと自分が出している音からほんの少し遅れているわけで、生音はすぐ目の前で鳴ってるから、それは失われない方がいいのかなと思うようになりました。自然とアンビエントも混ざっているような感覚になるというか。僕にとって初めての経験だったと思います。

TOSHI NAGAIによるSUPERIORのレビュー記事はこちら!

●SUPERIORは今、個人練習のときに使われているんですよね?
○そうなんです。個人練習ではクリックを聴きながら叩くんですけど、SUPERIORは密閉度がちょうど良いんです。ユニバーサル・モデルだからこそかもしれないですけど、ドラムの音を良い感じでマスキングしながら、クリックの音量を上げすぎることなく練習できるので、それがすごく良かったですね。そのときのレビューでも詳しく話していますが、SUPERIORはエントリー・モデルとは思えないほどのレンジのバランスの良さとクリアさで、音質に関しても申し分なかった。そうやって個人練習で使っているうちに、qdcで自分のカスタムIEMを作ってみたいなと思うようになったんです。

Next→ベース・モデルを決めるべく4機種レビュー!