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    Cornelius &くるりもキャリアを祝う 幸福感に満ち溢れたあらきゆうこ生誕50周年ライヴ【Report】

    • レポート:木暮栄一[the band apart]
    • 撮影:福政良治

    存在感/温度感は常にちょうどよく
    フィル1つとっても必然性を感じないものがない

    レイ・ハラカミやAphex Twinが流れる転換を挟んで、1曲目「ブレーメン」からくるりのライヴがスタート。合奏者とサウンド・エンジニアが変わるとここまで出音が違うのか、という驚きをもって観させてもらったが、そういった変化を抜きにしても、そもそもあらき氏自身のプレイがより有機的になっているように感じる。平熱から微熱に上がったようなシフト・チェンジ。一気にひらけていく「コンチネンタル」のコーラス・パートや、「チアノーゼ」などのロック・ナンバーの演奏も、バンド全体で呼吸をしているような心地良い緩急がある。

    メンバーによるあらき氏の生誕を祝うMCを挟み、続いて披露されたのは「春風」。チャーリー・ワッツと同じくバック・ビートのタイミングでハイハットを抜いた、歌に寄り添う8ビートの抑揚が素晴らしい。かと思えば、くるりの近作の中でも最もブラック・ミュージックのエキスが濃い「琥珀色の街、上海蟹の朝」では絶妙なスネアの置き位置で、レイドバックしつつタイトなリズムを刻む。このあたりの曲調に対する微妙なアプローチの違いは経験則に従った感覚的なものかもしれないが、そういった演奏のディテールにこそキャリアがもたらす財産が宿っているのだと思う。 

    この日のくるりのセットリストはあらき氏が録音に携わった楽曲を多めに組まれており、それが結果的にバンドの音楽性の変遷と奥深さを再確認させてくれるようなものになっていた。

    淡々と進む物語の中に静かな情感を浮かび上がらせていく「California Coconuts」や「In Your Life」、拍子の変わり目をドラムがスムーズに先導する「飴色の部屋」などにおいても、あらき氏の演奏の存在感/温度感は常にちょうどよく、またフィルイン1つとっても必然性を感じさせないものがない。ヴォーカルの岸田氏があらき氏の人柄を評した「こういう人はいそうでなかなかいない」という言葉は、そのままドラミングにも当てはまると感じた。

    岸田氏による「Birthday」の弾き語りから、「Remember me」(冒頭のシンプルなフィルインが完璧すぎて鳥肌が立ちました)でくるりのライヴは終了。

    アンコールでは、小山田氏とくるりの2人からあらき氏へ花束が渡され、お祝いムードの中、両バンドのメンバーをバックに従えたあらき氏がソロ・プロジェクト、MI-GUの楽曲「Fate」を披露。このときのドラムは岸田氏だったのだが、ヴォーカリストらしい抑揚に富んだプレイで、ポジティヴなメッセージが乗った楽曲の雰囲気をより味わい深いものにしていた。

    アンコールでステージにメンバーを呼び込む前に、あらき氏からの挨拶があった。飾らない雰囲気の中に不思議な芯の強さを感じさせる語り口/言葉選びからは、氏のドラミングに共通するものを大いに感じた。逆を返せば、それだけ自身の感性を演奏表現に反映できているということなのだろうと思う。

    あらきゆうこというドラマーの短くないキャリアの蓄積を、音楽性の異なるアクトを通してさまざまな角度で感じることができた、幸福感に溢れた夜だった。

    あらきゆうこ生誕50年ライブ セットリスト
    小山田圭吾&くるりがセレクトしたBGMのプレイリスト

    Cornelius / くるり ~ あらきゆうこ生誕50年ライブ ~ @LIQUID ROOM 2024.02.21

    Cornelius / くるり ~ あらきゆうこ生誕50年ライブ ~ BGM Selected by 小山田圭吾
    Cornelius / くるり ~ あらきゆうこ生誕50年ライブ ~ BGM Selected by 岸田 繁
    Cornelius / くるり ~ あらきゆうこ生誕50年ライブ ~ BGM Selected by 佐藤征史