UP

Studio Great〜Vol.2 上原“ユカリ”裕〜

  • Photo:Takashi Yashima
  • Interview & Text:Seiji Murata

リニューアルしたドラム・マガジンでスタートした新企画=“Studio Great”。世代を超えて多くのリスナーの記憶に刻まれる数々の楽曲に名演を残してきた演奏家に迫るという連載だ。その第二弾としてご登場いただいたのが、大滝詠一、山下達郎、シュガーベイブなど、70〜80年代の“シティ・ポップ・サウンド”を支えた上原“ユカリ”裕。彼が参加した日本音楽シーンの金字塔、大滝詠一『A LONG VACATION』の40周年記念盤が本日3月21日にリリースされるこのタイミングで、2020年10月号に掲載した超ロング・インタビューの中から、大滝詠一について語ったエピソードを抜粋して公開!

何から何まで指定で、大滝さんが
パターンを考えてくるんです
僕はそれを叩けるだけじゃなくて
グルーヴも出していかなきゃいけない
それが大変でもあり、面白かったです

●72年にごまのはえ(※上原が伊藤銀次らと組んでいたバンド)で初めてレコーディングがありました。

上原 そう、大滝さんが呼んでくれて「留子ちゃんたら」と「のぞきからくり」というシングルのレコーディングでモウリスタジオに行ったんです。このときは、普段ゴーゴーホールでやってた曲をレコーディングしたというだけで、ほとんど記憶にないんですけどね。

●その後、上原さんがたくさんの演奏で、ソロからCM音楽、変名ユニットなどまで、あの世界観のビートを支えることになりますね。

上原 俺は詳しいことはわからないんですけど、大滝さんと銀次が仲良くなって、マネージャーの(福岡)風太がいきなり「東京行くぞ!」って(笑)。僕は地元に彼女がいたので「いやいや、行きたくない」ってゴネたんだけど、結局説得されて。

●70年代初期は、大滝さんはすでにはっぴいえんどで知る人ぞ知る存在だったと思いますが、大滝さんやはっぴいえんどのことはどう思っていましたか?

上原 僕はあまりはっぴいえんどに興味がなかったんですよ。でも銀次がオリジナルを作ろうと思ったきっかけはやっぱりはっぴいえんどだし、大阪でメンバー5人が一部屋で共同生活を始めた頃も、銀次はよく“ゆでめん”(はっぴいえんどの1st)を聴いてましたね。僕はキング・クリムゾンとかでしたけど(笑)。5人いるんで、誰が何のレコードをかけるかが大問題なんですよ。

●(笑)。上京後、共同生活は大滝さんの本拠地、福生でしたね。

上原 73年3月ですね。めっちゃ寒くて、しかも、どこに住むのかまったく知らされてなかったんですけど、着いたら「え? ここ東京じゃないじゃん!」って(笑)。次の日にすぐストーブとこたつを買いに行ったもんね。

●(笑)。米軍の払い下げの家屋だったそうですね。

上原 もうベトナム戦争が終わることもわかってるから残っていたのは将校と傷病兵だけで、みんなどんちゃん騒ぎしてましたね(笑)。僕らは最初は米軍基地の敷地に入ることはなかったけど、僕らが音出してると連中が車で遊びに来るんですよ。ベレットGTに、車検がないから怪物みたいなタイヤはいて、後ろに6パックのビールとウィスキー入れて。それはそれで面白かったですね。

●福生では共同生活しながら、みんなで練習していたそうですね。

上原 風都市から月に1人4万か6万くらい給料をもらっていましたからね。壁に布団を貼りつけて防音して、ジャム・セッションしながら、そのまま曲になるかどうかみたいなことをよくやっていた気がします。個人的な練習も部屋にドラムを置いてやってましたね。

●レコードに合わせて?

上原 FENが聴けるんで、それがもううれしくて。京都にいるときは夜中に短波放送でFENが入ったら、みんなで「お! 入った!」って大喜びしていたくらいですから。それがいつでも聴けるんで、もうずぅっとFENかけっぱなしで、かかる曲を全部ドラムで叩くんですよ。周りはうるさかったろうなぁ(笑)。

2020年10月号の誌面がこちら。

●そこで、大滝さんプロデュースによるアルバム作りのリハーサルをしていたんですよね。大滝さんはもともとドラマーなので、ドラムに対しては注文がいろいろあったのかなと想像するんですが。

上原 いやぁ~それはもう、何から何まで指定で、大滝さんがパターンを考えてくるんですけど、そのアイディアが、とある曲のテープを逆回転させたものとかね(笑)。“シキシキドンドン”みたいなパターンを「これできるかな?」って持ってくるんです。で、やってみてできると「おお、できたできた! じゃあ次」ってどんどん出してきて(笑)。

●だから、どこがアタマなのかわからないようなリズム・パターンが多いんですね!

上原 大滝さんはそういうのが好きなんです(笑)。僕はそれを叩けるだけじゃなくてグルーヴも出していかなきゃいけないから、それが大変でもあり、面白かったですね。

●大滝さんのCM曲シリーズも、上原さんがかなりドラムを叩いていますよね。

上原 “サイダー”シリーズとか資生堂シリーズとかも全部指定のフレーズでした。ミッチ(林 立夫)とたまにスタジオで一緒になるんですけど、大滝さんにパターンを指定されると「できねぇーよ、そんなの!」って大声で言ったりしてましたね(笑)。逆に僕は何としてもやってやるっていう対抗心があって。

●クリムゾン好きに火がついたわけですね(笑)。当時、大滝さんの福生のスタジオは出来上がっていたんですか?

上原 “福生45”は、当時はまだ造ってる途中でした。スライ(&ザ・ファミリーストーン)の確か『フレッシュ』の中ジャケに、シンシア(ロビンソン)が(トランペット)を吹いてるプライヴェート・スタジオの写真があって、あるとき大滝さんが「あ! 壁はコレにしよう!」って、同じような木の壁にしてましたね。

●『フレッシュ』も当時、衝撃を受けたアルバムとしてよく挙がります。

上原 いやぁ、衝撃でしたね。リズム・ボックスも、エレクトーンについてたのと同じ音がしてびっくりしました。ヒット曲でしたから、FENで毎日のように、朝起きると「イン・タイム」がかかってました(笑)。

大滝詠一『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』特設サイト

◎作品情報
『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』
大滝詠一

発売元:ソニー SRCL-12010~12011 詳細はこちら●ソニー

著者作品