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    【Report】一糸乱れぬパフォーマンスと流麗なるダイナミズム! 鼓童「いのちもやして」2023.6.22 東京・浅草公演

    • 文:リズム&ドラム・マガジン編集部 写真:岡本隆史

    鼓童の女性奏者初となる
    大太鼓パフォーマンス!
    磨き上げられた太鼓の表現力

    新潟県・佐渡を拠点に、太鼓を主とした伝統的な和楽器を用いるパフォーマンスで国境を越え活躍する鼓童。彼らが6〜7月にかけて浅草を皮切りに行った舞台ツアー「いのちもやして」では、40年以上の歴史を持つ鼓童としては初の、女性による大太鼓演奏が目玉となった。ここではそのツアーから、6月22日に浅草公会堂で行われた公演の模様をレポートしよう。

    満席状態の会場が暗転すると、深く重い太鼓の音色が鳴り響いた。舞台の中心に構えた台座上に鎮座しているのは、すべての太鼓を統べるような存在感を放つ大太鼓。それを、2人の男性奏者が、雄々しいかけ声を交えながら力強く鳴らすパフォーマンスと共に、「いのちもやして」の幕が上がった。

    大太鼓ソロが終わり、入れ替わるようにして舞台上に集まったのは、桶太鼓や平胴大太鼓、宮太鼓、ボックスフォンをはじめとする楽器達。“翁”の姿でステージに現れた奏者による「人が音を運ぶのか 音が人を運ぶのか……」といった口上を、木琴や篠笛の音色が瑞々しく彩ったかと思うと、精緻な太鼓の音が、徐々に厚みを増して轟いてくる。

    ステージを俯瞰すると、一糸乱れぬ演奏とダイナミックなパフォーマンスに圧倒され、奏者1人1人、太鼓の1台1台にフォーカスすれば、それぞれの表現手法の違いや幅の広さに気づかされる。小ぶりながら存在感ある音色で楽曲にアクセントを加える金物=“チャッパ”を手に持ち、打ち鳴らしながら舞う翁。軽やかな篠笛に寄り添うような太鼓の音色。熟練の奏者達が織りなす、寄せては返すようなサウンドのダイナミズムの波も心地良い。会場全体を鼓舞する迫力の演奏はもちろんのこと、時に静けさを感じさせる神秘的な“引き”の演出からも、その技量の高さがうかがえる。

    両手で1本の太いバチを持ち、上半身全体で力強く振り上げ下ろして打ち鳴らされる、平胴大太鼓。担ぎ桶太鼓の両面を打つ、奏者の俊敏なストローク。横向きにセットされた太鼓を足で挟むような姿勢で座り、腹筋の力で上体を起こした状態で演奏する打法や、太鼓の脇に跪くようにして打面を叩く“横打ち”。片手でミュートをかけながらの手数を繰り出す演奏など、太鼓やバチの種類の違いによる多彩な音色と奏法が、聴覚と視覚の両方を満たしてくれる。

    前半のラストに演奏された「鼓童幻想」では、奏者達が代わる代わる舞台の前面に出て、各自の楽器を演奏。軽やかな桶太鼓の音が観客の手拍子を誘ったかと思えば、こちらに迫りくるような轟音を聴かせたり、繊細かつテクニカルなプレイで魅せたりと、飽きさせない展開が続く。演奏が終わってからの割れんばかりの拍手に、会場の熱量の高まりを感じた。

    続く後半は、コミカルな翁の動きと太鼓の音がシンクロし、観客の笑いを誘う「奇譚」に始まり、獅子のような被りものをつけた奏者達の演奏が印象的な「天鱗」といった演目を経て、いよいよ、この公演の目玉である、鼓童女性初の大太鼓演奏へ。

    その役目を担う奏者=米山水木は、観客席エリアの通路から登場。舞台のセンターに置かれた大太鼓のもとにゆっくりと歩を進めると羽織を脱いで、打痕の刻まれた大太鼓に向き合った。

    厳かな雰囲気の中で大きなバチを手に持ち、始めた演奏はしなやかかつパワフルで、時に1人での演奏とは思えないほどヘヴィな音量を聴かせる。会場中を釘づけにする研ぎ澄まされたソロ・パフォーマンスが10分ほど続き、大太鼓の演目が終わると、称賛の拍手が長く続いた。

    本編ラストの「兆」では再び集団での演奏に戻り、ステージに登場した打楽器陣が位置取りを変えながら、それぞれの見せ場を余すところなく披露していく。つい先ほどまで大太鼓を叩き続けていた米山が、桶太鼓と宮太鼓、締め太鼓で構成された太鼓セットへと流れるように移ったかと思うと、そのまま休むことなく演奏を続けているのも印象深く、その驚異的な集中力とスタミナに舌を巻いた。奏者達が陽気でダンサブルなリズムを刻み、観客の手拍子でステージと客席が一体となったところで演目は大団円を迎え、大きな拍手と歓声の中で、公演は締め括られたのだった。

    身体をフルに使い、太鼓を長時間叩き続けるスタミナと集中力。ストイックにすべてを出し尽くす圧巻の演奏を受け止めた客席からは、感嘆のため息が何度も漏れた。集団でありながら一体感を備えた鼓童のパフォーマンスの裏には、いったいどれほどの練習量が積み重ねられているのだろう。

    叩けば音が鳴る打楽器の中でも、より原始的な存在である太鼓。奏者達の魂がこもった演奏に終始心臓を揺さぶられ、自然と高揚する感覚をおぼえると共に、奏者達が受け継いできた伝統や、長い歴史の中で磨き上げてきた表現力、そして、観客をさまざまな形で楽しませる舞台芸術の深みを堪能できる、充実の時間であった。

    2023年10月 鼓童「いのちもやして」日本ツアー
    2023.10.15(日) 14:00 山口県下関市菊川町 下関市菊川ふれあい会館アブニール
    2023.10.16(月) 19:00 福岡県北九州市(八幡西区) 黒崎ひびしんホール 大ホール
    2023.10.17(火) 19:00 大分県佐伯市 さいき城山桜ホール 大ホール
    2023.10.19(木) 18:30 大阪府摂津市 摂津市民文化ホール(くすのきホール)
    2023.10.22(日) 14:00 新潟県新潟市 新潟県民会館 大ホール

    詳細はこちら→https://www.kodo.or.jp/performance/performance_kodo/41694