PLAYER
UP
Interview – ユセフ・デイズ[Tom Misch & Yussef Dayes]
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
- Interpretation & Translation:Akira Sakamoto
それぞれのリズムには
独自の要素や感情があるけれど
それらすべてに“つながり”があるんだ
●M4「Tidal Wave」でのジャム・ブロックや、M7「Lift Off」の冒頭で聴こえるセミラのサウンドも印象的でした。さまざまな打楽器の音を取り入れることは意識していますか?
Yussef 僕が好きなサウンドはパーカッシヴなものが多くて、そういうものを自分がいつも使っている普通のドラム・キットに取り入れることが大切だと思っているよ。
●ドラム・セット全体で演奏しているときでさえも、パーカッシヴなアプローチを感じます。そういったサウンドはどのように出そうとしていますか?
Yussef 従来のドラム・キットでやることに限定されないことだよ。自分が求めているサウンドを得られる機材を提供してきてくれた、いくつかの素晴らしいドラム・メーカーと協力することができて、僕は恵まれているよ。ヤマハのドラムを3年間使い続けているけど、そのドラムがもたらす温かみと音色は、僕の演奏や音の出し方を補ってくれるようなものなんだ。それと、トルコのシンバル・メーカーであるイスタンブール・アゴップという会社ともエンドースしている。彼らは素晴らしいファミリーで、僕がいつも試しているクレイジーな手作りのシンバルをくれたりもしたんだ。
僕はセネガルに旅行して、グリオ・サバールのプレイヤーたちと寝食を共にして勉強したし、ブラジルのサルバドールで過ごした時には素晴らしいカンドンブレ(アフロ・ブラジル信仰の儀式)のミュージシャンから教えを受けた。僕の父はジャマイカ人だから、自分のルーツに触れたり、ドラムというものの核心を確かめることは僕にとって重要だったんだ。
今のスタイルを形作ってくれたのは
まさに“音楽”そのものだよ
●あなたのドラミングは、ジャズだけでなく、ファンクやヒップホップなどのさまざまな音楽的アプローチが混ざっているように思います。現在のプレイ・スタイルはどのように構築していきましたか?
Yussef まさに“音楽”そのものだよ。それは僕が一緒に音楽を作っている人や、ふと思いついたさまざまなインスピレーションによるものなんだ。僕はいつも進化しようとしているし、ドラムの技術を学んで、高めて、身につけていくことが大事だと思うよ。
実際にそれぞれが絡み合って、大体同じルーツに由来するさまざまなリズムの間にある“共通のつながり”を理解しようとしているよ。多くのリズムは関係し合っていて、ファンクやヒップホップ、ジャズ、ロック……呼び方が何であろうと、それらすべてが同じところに由来して、密接に関係しているんだ。
もちろん、すべてのリズムにはそれ独自の“ボキャブラリー”や専門的な要素、感情がある。だけど、自分のスタイルや考えを吹き込むそれらすべてにつながりがあるんだ。
●プログラミングされたドラムが流行している時代において、演奏テクニックやアコースティック・ドラムのサウンドの魅力はどのようなものだと思いますか?
Yussef 無敵だよ。わずかなゴースト・ノートや生ドラムの複雑な部分を無視してプログラミングしたり手を加えたりすることはないんだからね。
●日本のドラマー志望の若者達にメッセージをお願いします。
Yussef 自分らしく、自分の意思を見つけて、ノリを感じてみて。エネルギーやグルーヴはドラムのスキルと同じくらい重要だからね。それを併せ持っているなら、歴史に残るものになると思うよ。
Talk Session – Tom × Yussef
ここでは、トム・ミッシュとユセフ・デイズのオフィシャル・インタビューにおける対談の一部を公開。お互いへの印象や制作エピソードのほか、ユセフが影響を受けた何人かのドラマーについても語られている。
僕はユセフのプレイの大ファンだったから
一緒にスタジオに入ることになってワクワクしたよ
●お二人はどのようにして出会ったのですか?
Tom 僕とユセフは子供の頃からなんとなく知っていたんだ。正式に会ったのは2年前だったんだけど、それまでにユセフがどんなアーティストかは知っていたよ。僕は彼のプレイの大ファンだから、一緒にスタジオに入ることになってとてもワクワクしたんだ。良いヴァイブスだったから、「どんどんやろう」という雰囲気だったね。
Yussef 全くその通りだよ。僕もトムの音楽を以前から聴いていたから、一緒にスタジオに入って楽曲制作するのはとても興奮したよ。良いヴァイヴスのおかげで、良い音楽がスムーズに出来上がったんだ。
●楽曲はどのように制作したのですか? お互いにコラボレーションしてみて良かったことは?
Tom コラボレーションすることによって、自分自身のいろいろな面が出せると思う。相手が出してくるエネルギーに合わせて自分のチャンネルを合わせるような……。僕とユセフは似たような(音楽的な)影響を受けてきているところもあったり、異なるところもあったりするから、コラボレーションするときは歩み寄りが必要だよね。とにかく、2人で協力し合うと、新しいものが創り出せることが素晴らしいと思うよ。
Yussef そうだね。あとは、ジャンルなどの決まった形のプレッシャーが無かったのが良かったと思うね。いろいろと試すことができて……それで今までやったことのないものを創り出せたんだと思う。
アフロ・ビートこそ、僕がもっと若い頃に
大きな影響を受けたということは間違いないね
●どんなアーティストの音楽を聴いて育って、どのようにドラムを始めたのですか?
Yussef クエストラヴやトニー・アレンは素晴らしいドラマーだよね。クエストラヴはヒップホップのドラム、トニー・アレンはフェラ・クティと活動したアフロ・ビートの創始者であって……そのアフロ・ビートこそ、僕がもっと若い頃に大きな影響を受けたのは間違いないね。兄弟と一緒にUnited Vibrationsとしてプレイしていたんだけど、あるときトニー・アレンのサポート・アクトをする機会があって、トニーに会えたんだ。本当に素晴らしいドラマーで、ミュージシャンとは機材をプレイするのではなく、音楽を創ることだった教えてくれたんだ。事実、独自のプレイとプロデュースをしているワケだし。ドラムを始めたのが何歳だったか覚えていないくらいだよ。4歳のときにお父さんが最初のドラム・キットを買ってくれて、ミュージシャンであるお父さんと兄弟と、ずっとプレイしていたんだ。それが結果的に僕の中で一番興味のあることで、今に至るワケ。
●ロッコ・パラディーノ(b)とは、どのように出会ったのですか?
Tom ロッコとはユセフを通じて出会ったんだ。ユセフ、君はどう?
Yussef そうだね。ロッコとは、もう知り合ってから10年になるかな? 一緒にセッションしてはリズム隊としての音楽を創り出してるよ。ロッコのお父さんも、もちろん知っているよ。良い人達だよね。素晴らしい音楽を創る、まさに“パラディーノ家”だよね。
●このアルバムのコンセプトや、この作品を通じて伝えたいメッセージなどありましたか?
Tom このアルバムを制作するにあたり、明確なイメージや、音のパレットみたいなものはなかったね。スタジオに入ってからも、何が起こるか分からなかったし、プレッシャーがない中、色々試していったんだ。アルバムらしくなってきてから、ようやくいろいろとテクニカルなレコーディング作業に入っていって、自分のヴォーカルを調整したり、アルバムとしてつなげる作業とか……あまり専門的な話をするつもりはないけど、プラグインチェインなどを使ってサイケデリックなエフェクトをヴォーカルに入れてみたり、ディレイとかコーラスとかもね。とにかく最初から計画していたのではなく、レコーディングしていくにつれて展開していったサウンドに仕上がったんだ。
●世界中がこのコロナウイルス感染拡大の状況で自粛していますが、どう過ごしていますか?
Tom 残念ながら5月のツアーが9月に延期せざるを得なくなってしまったよ。でも、世界中が同じ様にキャンセルしないといけない状況にあるよね。だから、この機会に身体を引き締めて、たくさん音楽を聴いて、ギターを弾いたりして、スケジュールを埋めるようにしているよ。あとは、YouTubeに“Quarantine Session”というシリーズのギターをプレイしている動画をアップしているんだ。君はどうだい、ユセフ?
Yussef 同じだよ。2月に産まれたばかりの娘がいるから、一緒に時間を過ごしているよ。音楽をプレイしたり、たくさん食べて、運動して……ある意味、恵まれた時間を与えられていると思うようにしているよ。もちろん、アルバムのリリース周りの予定やツアーなどがあったけど、大丈夫、いずれは改めてショーができるようになるからね。みんな同じ状況下で、悲観的に思わず、前向きにならなきゃ。いずれ元に戻ったときには、準備が整っているようにしないといけないよね。