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【Interview】KO-HEY[Skoop On Somebody]〜バンド脱退とREJOIN その先に求めるドラミング像〜

  • 取材/文:村田誠二 撮影:八島 崇、関川真佐夫(スネア)

みんなそれぞれ奮闘して、向き合って
何とかやってるという中で
お前は何なの?って突きつけられた

基礎からやらないと
バンドに戻っても追いつけない
そういう気持ちが正直あった

●今回、本誌ではTAKE(vo)さんとの″歌とドラム″対談となりましたが、ここではKO-HEYさんのソロ・インタビューということで、09年にSkoopを離れることになった理由や、離れている12年半の思い、そして昨年REJOINすることになった経緯などをお話しいただけますか?

KO-HEY やっぱり……3人で向き合うことがなくなってたんですよね。みんなそれぞれが自分のやるべきことを背負って、それに″翻弄される″というか、それを一生懸命やることで終了、みたいな。

ただ目の前のことに食らいついて、何やっても誰も良いとも悪いとも言わない、でも100点獲らないといけない、みたいな気分になっちゃって、何しろ演奏したり曲作ったりすることが……もっと言えば音楽自体が大嫌いになっちゃったんですよ。それでもう辞めようと。

そのとき、スタッフに「またやりたくなるかもしれないから、活動休止にしたらどうか」って言われたんですけど、本当に僕はもう一生やらないつもりで抜けたんです。だから辞めてから4年くらいはスティックも持ってないですよ。近寄りもしませんでした。

●グループを辞めるという以上に、ドラムを辞める、音楽を辞めるというくらいの気持ちだったんですね。

KO-HEY そうですね。それが39歳のときだったんで、まだ他のこと目指して頑張ればイケるかなと思ったこともあって。それで、自分で店をやった時期もあったんですけど、離れようと思えば思うほど離れられなくて、店を畳んだ頃に、僕の師匠が大阪芸術大学でドラムを教えてて、「お前みたいなヤツが(他人に)教えるって大事やと思うんやけど、お前来ぇへんか?」って。師匠に言われたら断れないでしょ(笑)。

でも「教えるどころか、ドラム叩いてないですよ」って言ったら、「そういうことやないねん。もっとあるやろ、″マインド″とか、お前にしかわからんヤツが」って。で、そういうことならって、結局3年行かせてもらいました。基本、こちらが教わることの方が多かったですけどね。

で、その後、今度はライヴ・ハウスを手伝ってくれって話をもらったんです。「そうか……裏方に回って若い子を育てるのもいいな」と思って、本誌でもお話しした若いバンドを、実際にマネジメントから手掛けることになったんです。本当に、そのバンドと出会ったときに「これはヤバい!」と思いましたから。結果的にはCDを3枚リリースするところまでいきました。

●そういう裏方の活動をしながら、ご自身の音楽へのモチベーションも上がっていったんですか?

KO-HEY もともと人前に出るのが好きとか得意とは思ってないんですけど、若いバンドの活動を見ていて、何か表現することで誰かが笑顔になるってやっぱりええもんやなって、どこかで思ってたんでしょうね。

だからコロナが広がって、世の中どうしようもなくなって、突きつけられたんですよ──みんなそれぞれ奮闘して、向き合って、何とかやってるという中で、お前は何なの?って。いろんなことやってますけど、何者なんですか、あなたは?って……そう突きつけられたタイミングで「Skoopに戻らないか?」っていう話をもらったんですよね。

●バンドを離れている間に、外からあらためてSkoopを見たわけですが、そこで何を思いましたか?

KO-HEY 途中で勝手に辞めた人間ですし、もちろん2人がバンドの中で必死にやってることなんで、何か言う資格はまったくないんですけど、僕がいちリスナーとして「TAKEにこんな感じで歌ってほしいな」とか「こんな内容のことを歌ってほしい」とか、勝手な願望はありましたよ。聴くたびに。

まぁでも、当時は、そんなこと知らんがな!って話ですから(笑)。それが今は、2人と直接話をして、「もっとこうなった方がええと思う」って、それを踏まえて曲作りができてるわけですから、そんなありがたいことってないですよね。 

●それが新作『1997』に注入されているんですね。

KO-HEY 第一弾としては落とし込めたんじゃないかなと思ってます。ただ、こういうものって″代謝物″という部分もあって、1回出してしまうと「じゃあ次はもっとあんなことを」って話が出てくるので、今はもう第二弾に移行してますね。

だから、いつも″足跡″って言ってるんですけど、ここ(KO-HEYのREJOINで3人体制になったこと)で盛り上がりすぎるよりも、それはあくまで途中経過で、新たなる出発の第一歩っていうイメージの方が大きかったりします。

●でも第一歩のわりには、2021年末にREJOINされてから、今年2022年は、ものすごい数のライヴでしたね。

KO-HEY 去年の今頃(2021年11月)まではフツーのおっさんで(笑)、ドラムも盆暮れ正月くらいしか叩いていなかったのがね……。だから、対談でも「今、基礎練習が楽しい」って話をしましたけど、やっぱりちゃんともう1回基礎からやらないと、バンドに戻っても追いつけないなっていう気持ちが、正直あったんですよ。

既存の曲をなんとか叩けたとして、「ああ、お帰り。帰ってきてくれてありがとう」だけで終わったら、これ、一番サブいパターンだなと(笑)。戻ってきたからには「やっぱり良いよね」って言ってもらえるところまでは戻さないとは思ってました。

練習は正直なので、してなければしてない分だけ錆びつきますからね。そこを必死になって戻す時期は、かなりいろんな練習をしてはいました。今、何割戻ってきたのか、自分ではわからないので、まだまだ道半ば、これからも頑張らないといけないなと思ってます。

●昔の曲に合わせて叩いたり、本当に基礎からやり直したり?

KO-HEY 基礎の方が多いんじゃないですかね。でも、この間(2022年10月20〜21日/東京国際フォーラムA)、″SOUL POWER″というイベントでゴスペラーズさんのバックを5~6曲やらせてもらったんですけど、自分達の曲でちょっとしくじったとしても、ごめんごめんで済みますけど、人様の曲ですからね。もう1回言いますけど、去年の今頃まではフツーのおっさんですからね(笑)。

でも、本当に光栄なことで、そんなことなかなかやらせてもらえないですし、そういう人様の曲をやらせていただくことで、自分がまた広がるというか、上げてもらえるというかね。テンポ163の曲があったんですけど、最初は「うわ……そんな速い曲」って、ついていけなかったんですよ。で、これはヤバいと思って、そこから2時間も3時間も、そのテンポでずっとエイトを叩き続けるとか(笑)、そういう練習もやってなんとかここまで食らいついております。

今はスネアのピッチが
低ければ低いほど気持ちいい
年齢なんですかね(笑)

●最後に、楽器について伺いますが、以前はずっと3タムでしたが、それは今も変わらずですか?

KO-HEY はい。これは2つ理由がありまして、1つは、ずっとコーラスをしながら叩いていると、どうしても手癖で行きがちで、3点セットだとフレーズが似かよってしまうから、3タムくらい並べておいた方が取り回しが効くんですね。ただ、歌いながら、周りの状況を見ながらなので、手を伸ばしたところに常にこのタムがあるというくらい、セッティングはシビアです。

あともう1つは、Skoopは大きなバラードが比重としてとても大きいので、やっぱりフィルでタムを流したい。1回、男らしく減らしたこともあるんですけど、やっぱり物足りなく感じたし、「あった方がいいでしょ」というみなさんのご意見もあり、「そうやんね」ってことで戻しました(笑)。

●以前は8″から10″、12″という並びでの3点でしたね。

KO-HEY 今もそうです。以前から使っているラディックのビスタライトに合わせて、ファイブスで8″、10″、12″を作ってもらって、あとはフロア・タムが16″ですね。で、シンバルは、最近、地元・大阪の小出シンバルを使わせていただいてて、609シリーズのミディアム・シン・クラッシュ2枚に、20″ライド(ミディアム)がメインで、カホン・セット用にも503シリーズの8″と10″スプラッシュを使ってます。感情にぴったりくる音で、すごく頼もしい相棒ですね。

●一方スネアは、新作『1997』では全体的に以前よりピッチが下がりましたね。

KO-HEY そうですね。ラディック(70年代)#402のロー・ピッチが多いですね。なんだかんだで、結果このスネアになることが多かったです。

新作『1997』で使用されたスネアたち

70s LUDWIG 402(14″×6.5″)
M1「LOVIN’ YOU」
M2「SUPER SHINING」
M4「恋の炎」
M5「Good Night Babe」
M7「青空」
M8「Don’t worry it doesn’t matter」
M10「Hooray Hooray」
M11「1997」
DW Collector’s Copper(14″×4″)
M3「GOOD TIME」
M9「SUMMER ESCAPE〜夏の思い出〜」
M12「Save Our Smiles」(ハイ・ピッチで使用)
70s LUDWIG Acrolite(14″×5″)
M6「ORGEL」

●ピッチを下げめにした理由は?

KO-HEY 自分の手数とか、歌との兼ね合いで、どうしても(スネアは)音像の中にドッシリといた方がいいんですよね。昔は僕もパツンパツン(ハイ・ピッチ)の人間だったんですけど、今は低ければ低いほど気持ちいい。これは……年齢なんですかね(笑)。ただ、青純さんみたいな、ああいうバシッとした、抜けるギリギリぐらいの低い音の方が気持ち良いと思い始めたんですよ、急に。で、ガラッと変えたんです。

●新作では、このスネアの音像が新生Skoopを感じますね。

KO-HEY アレンジしていて思うのは、例えば「こんな(ピッチの)高いスネアじゃ話にならへんな」と思うことが増えてきましたね。叩きやすさで言うと、ピッチが高い方が100%叩きやすいんですけどね(笑)。だからほどほどにしとかなきゃいけないなと思う今日この頃です(笑)。今、ライヴではTAMAの古いStarclassicをほぼメインで使ってますけど、低くしてもネバるし、高くしても良いところが残るし、音量も十分だし、本当によくできてますよね。

『1997』
ソニー SECL-2814

KO-HEYとヴォーカルTAKEとの貴重な「歌とドラム」対談は2023年1月号に掲載!!

リズム&ドラム・マガジン2023年1月号