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【Interview】かみじょうちひろ[9mm Parabellum Bullet]が最新作『YOU NEED FREEDOM TO BE YOU』と共に語る結成20周年の歩み
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
独学でデビューまで持っていった“根性論”と
鬼のような課題で培ったアカデミックな素養
その2つを9mmの音楽にも生かせている
2024年にバンド結成20周年のアニバーサリー・イヤーを迎えた9mm Parabellum Bullet。10月にリリースした10thアルバム『YOU NEED FREEDOM TO BE YOU』は、持ち前の痛快なロック・チューンを軸に、歌謡曲やジャズ風のアプローチなど、新たな面とバンドの進化が窺える多彩な楽曲が揃っている。そのサウンドの核を担うドラマー=かみじょうちひろに、今作のプレイと共に、師匠からの教えを伴う20年での自身の成長や変化について語ってもらった。
師匠がつくたびに
プレイ・スタイルも変わっていった
●まずは、バンド結成20周年おめでとうございます! ご自身にとって、この年数はあっという間でしたか?
かみじょうちひろ 体感としては義務教育と同じくらいの年数なんですけど、やらなきゃいけないことをひたすらやっているうちに、実際は倍の時間が経ってたんだなって思いますね。
●活動を続ける中で、かみじょうさんのプレイ・スタイルや意識が変化したのはどういったタイミングでしたか?
かみじょう 俺は、ドラムは完全な独学でインディーズ/メジャー・デビューまで漕ぎ着けてしまっていたので、基礎のキの字も知らずにきていたんですね。ジャンル的にも、当時はメロコアとかロック、パンク、メタルみたいな土壌のアビリティのみでやっていたのもあって、そこから師匠がつくたびにプレイ・スタイルも変わっていったと思います。それで言うと、大きく変わったタイミングは3回ぐらいありましたね。
●師匠の方々にはどんなことを教わってきましたか?
かみじょう まず、インディーズ・デビューした頃に教わるようになったのが、te’のドラマーのtachibanaさんなんですけど、めちゃくちゃドラムがうまくて、某音楽大学の打楽器科を首席で卒業しているんですよ。「お前、何で脇開けてんの?」とかすごく雑な感じで(笑)、基本的なフォームとかを教わりました。
その2〜3年後に、ドラム・チューナーとしてついてくれた三原重夫さんが2人目の師匠で、チューニングのことはもちろん目の前で見て学びましたし、当時は知らなかった16(分音符)のノリとかも教えてもらいました。3人目は2016年から道場に通って教わっている、村石雅行さんですね。レッスンの中で、ソルフェージュに気が狂うほど取り組んだので(笑)、村石さんに、「お前、今はそこら辺の音大生より譜面読めるぞ」と言ってもらっているくらい鍛えられました。この9年でいろいろな課題をやってきたおかげで、今ではフュージョンやファンク、ブルースだろうとジャズだろうと、どんなジャンルでもそこそこに対応できるようになりましたね。
●さまざまな分野のノウハウが今に生きているわけですね。
かみじょう 本当に感謝ですね。今の俺の強みは、独学でデビューできるくらいまで持っていったっていう“根性論”と、鬼のような課題で培ったアカデミックな素養とを両立させて、何とか現場に立っていることだと思います。その2つをいい感じに9mmの音楽にも生かせているので、自信にもなってますね。
●以前のインタビューで「個人練習の時間がミュージシャン活動の中で一番楽しい」とおっしゃっていましたが、かみじょうさんのそういった気質も多彩なスタイルの習得をスムーズにしているように思います。
かみじょう 多分、職人気質なんだと思います。 小学生の頃もガンプラにハマったりとか、ずっと1人で細かい作業をやってるタイプだったので。だから機械工学を選んで大学院まで行ったっていうのもありますし。ドラムも、YouTubeを見たり、師匠が叩いているのを動画で撮ったりして、“この手順で、ここで32分音符の6つ割りをやってるんだな”とか解析して習得するのが好きなんですよ。その上で、“これ、昔からできたよ”って感じで、さも自分のオリジナルかのようにライヴでやって見せるのが一番楽しいですね(笑)。そういう技を増やしていくのは今も大事だと思ってます。
●最新作『YOU NEED FREEDOM TO BE YOU』は、9mmらしい激しさのあるロック、パンク・チューンだけでなく、ジャズや歌謡曲風の楽曲もあったりと、バラエティ豊かな曲が揃っています。前作『TIGHTROPE』では全曲のチューニングをご自身でされていましたが、今作ではいかがですか?
かみじょう 今回も自分でチューニングしました。滝(善充/g)から“この曲はニューウェイヴだから、低めでバシッとした音”とか、“音で暴れてください”というリクエストがあるので、イメージしながら帯域の見当をつけて、エンジニアさんとも話しながら進めました。
●機材は曲によって替えたりもしましたか?
かみじょう 基本的には自分の叩き方とかで対応することが多いんですけど、出したいサウンドとか、アプローチ的にどうしてもその機材じゃないと無理っていう場合はある程度替えますね。スネアはブラスとかコパーとか、基本的にはメタル・シェルが多いです。ヘッドはほとんど替えないですね。
●どちらかというとテクニックの方で対応されているんですね。
かみじょう そうですね。ちなみに村石道場のレッスンでは、90分の中で、村石さんも含めて7人が同じドラム・セットで全員同じ課題曲を叩くんですけど、同じ楽器なのに、出している音が全員違うんですよね。そこから、ドラムの音色っていうのは、個人の技術とか力量の関係の方が大きいんだと思うようになりました。俺は“昭和肌”なところがあるので(笑)、まず自分が最低限のプレイをできていないうちは楽器にいちゃもんなんかつけられないし、同じ理由で、チューニング云々も奏法ありきなのかなと思ってます。
●なるほど。メンバーのみなさんとは、バンド・サウンドのバランスなどをディスカッションする場面はありましたか?
かみじょう 昔はミックスやマスタリングの最中にも死ぬほどディスカッションは行われてましたけど、6、7枚目のアルバムからは阿吽の呼吸みたいなものが出来上がってきましたね。その感覚は全員外すことがないので、(漫画の)「ONE PIECE」っぽく言えば、背中を預けられるみたいな関係性でしょうか。今回も録り終わったものに対して“これ、こうしといて”というオーダーが入ることはなかったですね。
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