PLAYER
UP
Interview – 比田井 修
- Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Yoshika Horita(page 3)
「他人にできないことができるのもいいけど、
誰もができることをカッコ良くやれるのって良くない?」
その言葉が今でもすごく心に残っている
●比田井さんのエネルギッシュなサウンドを生み出す1つの要素としてスネアへのこだわりもあると思うのですが、普段はどういうものを使っていますか?
比田井 よく使うのは、DWコレクターズのコパー・シェルで、フープも上下共コパーにしています。そのスネアはLiSAちゃんの楽曲で使ったこともあって、別のセッションで持ってきてくださいと言われたこともあったりと、けっこう活躍している印象ですね。あとは、SONORのシグネチャー・シリーズのブロンズ・スネアや、Qドラムのジェントルマンズ・シリーズのコパー・シェルなど……。個人的な感覚なんですが、数年前くらいからコパーのスネアがすごく流行っている気がするんです。それよりちょっと前はブラスやベルブロンズの方が多かった感じがしていて。コパーは少し色気があるっていうか、いろいろ倍音の良いところも聴こえる感触があって。だからと言ってブラスよりも素直じゃなくて、音として絶妙に妖艶な感じがします。それが人気あったのかわからないですけど、けっこういろんなセッションでハマることが多くて、緑黄色社会でもよく使うことも多いですね。
●そのとき流行っている音楽によって、そういった傾向が出てくるのでしょうか?
比田井 それもあると思います。やっぱりデジタル音が増えてきたときに、生音が負けないために、とにかくいろんな音が入ってきても、芯が残るベルブロンズが人気だったと思いますし。今は個人的には、アレンジャーさんのデモで作られたサウンドに向けて楽器を用意していった結果、扱いやすいのがコパーが多かったりもしますね。僕自身もすごく好きで、重宝しています。
●今の時代に、アコースティックで叩くドラマーに求められるものってどんなことだと思いますか?
比田井 やっぱりドラムは“ドラムらしく”ってことだと思いますけどね。ここまで同期や打ち込み、コンピュータを使ったドラムのサウンドが当たり前になっている今、それをわざわざドラマーがやらなくてもいいのかなっていうか。打ち込みの音色にはそれ自体にもすごく良さがあって、それはもちろん追求したりとか、それっぽくやるんだったらうまく同期して、“こっちは生でドラムらしく叩くから”ってスタイルで、そこはレイヤーした方がいいんだと思います。機械っぽいドラムとかを生でやっていた時期って、“機械に負けない”とか“絶対生ドラムの方がいい”っていう考えでしたけど、共存がありとなれば、ドラムはアコースティックならではの良さを探求して、ドラムがよりドラムらしいのが一番いいんじゃないかなって思います。
●ドラムらしいというのは、感情や身体的な要素のことでしょうか?
比田井 そういうことももちろん、それをどこまでレコーディングで出したり、ライヴでパッケージできるか突き詰めるのも大切だとは思うんですけど、プレイ自体もシンプルにというか……僕、専門学校時代の先生が言ってくれた言葉で、「他人にできないことができるのもいいけど、誰もができることをカッコ良くやれるのって良くない?」っていうのが今でもすごく心に残っていて。ありきたりで全然いいと思うんですよ。最近はドラムがちょっと複雑になりすぎているんじゃないかと思う節もあって……。
●今のお話を聞いて、先に名前の出たスチュワート・コープランドやジェフ・ポーカロのプレイにも通ずるものがありますよね。
比田井 彼らの演奏って複雑なことをやっているわけではまったくなくて、実はシンプルなものが多かったりして、聴き心地の良いフレーズや、芯から気持ちのこもった演奏に魅力がある思うんですよ。みんなが同じことやっていても、その人らしさって経験を積んで自然と出てくるような気がしています。僕自身もそういうプレイができて、楽曲の魅力が引き立てられたらいいなと思いますね。
比田井 修 の 関連記事