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レジェンド・ドラマー=ハーヴィー・メイソンが語る今後の展望【Interview】
- Interepretation & Translation:Akira Sakamoto Photo:Great the Kabukicho Special Thanks:Blue Note Tokyo
70年代から現在に至るまで、半世紀に渡って第一線で活動を続けるレジェンド・ドラマー、ハーヴィー・メイソン。去る5月の来日時に約20年ぶりとなる彼の取材が実現! ドラマガ2025年7月号の特集「究極のテクニック&至高のグルーヴ」で、その両方を備えた最高峰であるハーヴィーに話を聞いたが、ここでは現在の活動について語った未掲載インタビューを独占公開!
新しいカメレオン・プロジェクトの
作品は来年発表の予定だよ
●2006年にリリースされた『Changing Partners / Trios 2』は、これまでアメリカで発売されていなかったそうですが、今回アメリカも含めたワールドワイドで発売されるようになったそうですね。
ハーヴィー・メイソン そうなんだ。ワールドワイドで発売される『Changing Partners』には、ラーシュ・ヤンソンと共演した未発表のトラックを2曲分追加してあるよ。

●それは楽しみですね。これまでに発表された2枚の『Changing Partners』では、ベースはすべてアップライトでしたが、今回の来日公演では、フェリックス・パストリアスがエレクトリック・ベースを弾いています。それによって何か変わったことはありますか?
ハーヴィー フェリックスはすでにカメレオン・バンドでダリル・ジョーンズに代わって演奏していて、ダリルとはアプローチも違うし、若いというだけでなく、エネルギーもサウンドも違うから、彼との演奏も楽しんでいた。今回はピアノがゴンサロということで、最初はアコースティックのロン・カーターか誰かに声をかけようとしたけれど、フェリックスとはトリオでもやったこともあったし、彼も乗り気になるだろうと思ったんだ。
彼は素晴らしいミュージシャンで、周りの音を聴いてそれに対応しながら、次第に自分の立ち位置を見出している。アコースティック・ベースだと背景に溶け込んだままになることもあるけれど、エレクトリック・ベースだとあらゆる音がヌケて聴こえるから、ピアノやドラムと同じ立場でアイディアを出し合う場面もあるから、僕はそういう意味でもエレクトリックのサウンドも気に入っている。フェリックスはアコースティック・ベースのサウンドを真似たりもするしね。エレクトリックのプレイヤーでは、リチャード・ボナのアルバムをいくつか聴いているけれど、彼も素晴らしいよね。あとはエイブラハム・ラボリエルやニール・ステューベンハウスも好きだな。

●新しいプロジェクトとして何か計画していることはありますか?
ハーヴィー 新しいカメレオン・プロジェクトを2018年に始めたんだ。今のところ10曲書いて、ほとんど完成しているけれど、録音の作業はまだ続いている。曲が変化しているからね。クインシー・ジョーンズと長年一緒に仕事をして彼のやり方の影響を受けて、あちこちに自分の好きな音楽の要素を盛り込みたいんだ。この部分をビ・バップっぽくしようとか、あそこにあれを入れようとか……。だから、より楽しく聴ける作品になるはずさ。
●ちなみにヴァイブラフォンは演奏しようとは思いませんか?
ハーヴィー 実を言うと、アルバムではヴァイブも演奏しているんだ。マネージャーは、ステージにヴァイブも用意しなきゃならないから大変だと言っているけれどね(笑)。ステージではサンプラーを使うという手もあるけれど、ヴァイブも演奏したいね。ヴァイブのパートを消したマイナス・ワンの音源を鳴らして、自分がソロで演奏するのも良いかもしれな。小さなレストランに入ったら、僕がカラオケに合わせてヴァイブで「Chameleon」を演奏していた、なんてね(笑)。そのためにはまたヴァイブを引っぱり出して毎日練習する必要があるけれど、どちらかと言うとピアノの方を練習したいな。ピアノも大好きだからね。
●作曲するときにはピアノを使いますか。
ハーヴィー ピアノだね。昔はピアノでしか作曲していなかったけれど、今はコンピューターを使うことも多いから、アレンジまで全部仕上げられるんだ。フォープレイでも、僕が持ち込んだアレンジの多くの部分をそのまま使うこともあるしね。その代わり、作曲には昔よりも時間がかかる。ワイフにはよく、「何回聴かせれば気が済むの? 曲はもう完成しているでしょ?」って言われるんだ(笑)。「君にはわかっていない。まだ足りないものがあるんだ」と言っても、「もう十分じゃない!」ってね(笑)。そんなふうにして、1曲作るのに何週間もかかるんだよ。毎日それにかかりっきりというわけじゃないけれど、後から考え直してさらに手を加えたりするからね。そんなわけで、ピアノは好きだけれど、人前で演奏するのは気が引ける。教会でピアノ・トリオで演奏したときの写真はあるけれど、大きな場で演奏するには、それなりの腕がないとね。
●ちなみに、カメレオン・プロジェクトの新作はいつ頃発表の予定ですか。
ハーヴィー 来年発表の予定だよ。あと、去年の8月にはハービー・ハンコックのアルバム『Headhunters』の発売50周年を記念するコンサートを、ハリウッド・ボウルに2万人の観客を集めてやったんだけれど、そのときにイギリス人のアーティストの友達が僕のドラム・セットをペイントしてくれて、『Changing Partners』のアルバム・カヴァーは、そのペイントにインスパイアされたデザインになっているんだ。
●カノウプスのドラムですね。カノウプスを使うようになった理由は何ですか。
ハーヴィー 以前に使っていたメーカーとのエンドース契約が終わって、しばらくいろいろなドラムを使っていたんだ。でも、日本へ来るたびにカノウプスがいろいろな楽器を持ってきて意見を求めていたから、あるとき、ライヴで彼らのドラム・セットを使わせてもらったら、信じられないほど素晴らしいサウンドでね。それで1年ぐらい考えて、カノウプスを使うことにしたんだ。たぶん、僕にとっては自分が使う最後のドラム・メーカーになるんじゃないかな。スネアも素晴らしいし、クオリティも最高だ。ブライアン・ブレイドとか、何人かの最高のドラマーも使っているしね。
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